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第21話(累計 第68話) 学院の闇その一:日常から再び「戦場」へ!

「係長。当面はこんな感じなんですか?」


「ん? マモル? もう事務所じゃないから、いつも通りで良いぞ?」


 今は、第一強襲室第五係の事務所からの帰宅途中。

 父さんの運転する自動車で、僕、アーシャちゃんが一緒に帰ってる。

 同じ場所に帰るのだから、通勤手当の圧縮も兼ねて一緒に帰るのが効率的ではある。


 ……ユウマくんは、真雪先生の自動車で帰ってるんだ。リナさんは実家が事務所の横だから、歩いて帰ったけどね。


「お義父様、いきなり公安関係のお仕事大変ですね。ごめんなさい。わたしがマモルくんを巻き込まなければ、お義父様まで巻き込むような事にはならなかったのに……」


「アリサちゃん、そこは気にしなくて良いって。俺は、キミの事をアレクサンドルさんから頼まれている。それにマモルが大事に思ってる優しい子だもの。大人が子供を守るのは当たり前。今は、俺達に甘えていたらいいさ」


 夕闇が迫る中、僕たちが乗る自動車は家に向かう。


「ありがとうございます、お義父様。多分、わたしは別のミッションが色々あるかと思いますが、宜しくお願いしますね」


「アーシャちゃん、今度はミッション内容も教えてくれるよね? 僕も今は同じ公安仲間だもの」


「ええ。もしかしたら、マモルくん達に助けてもらう事もあるかもだしね」


 僕たちは笑いながら帰宅した。

 そして、早速僕たちに新たなるミッションが下された。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「すまない、アリサくん。本庁からマトリ、麻薬取締官絡みの仕事が来ているんだ。話だけでも聞いてくれないかい?」


 11月も中頃を過ぎ、紅葉が綺麗な奥多摩。

 格闘訓練中の僕らに父さん、いや警察庁警備局 公安課第一機動強襲室 第五係長が声を掛けてきた。


「すいません、係長。その話は僕らも聞いちゃっていいんでしょうか?」


「そうだな。今まではただの高校生だったから、アリサくんの任務については話せなかったが、今は同じ部署の同僚。それに、今回はマトリさんはマモルらも一緒に来て欲しいって話なのさ。俺は正直、反対だがね。まるで生贄だからな」


 父さんは、僕らを変な「仕事」には巻き込みたくないのだろう。

 しかし、態々僕らを指名、それも別の官庁からとは実に謎だ。


「マトリは厚生労働省管轄の司法警察官でござる。まるっきり管轄・官庁違いの者が、(それがし)らのような未成年に頼み込みに来るとは普通の事件でないでござるな、係長殿?」


「マトリってなんなん? お母ちゃん、知ってはる?」


「リナ、今は技術大尉って呼びなさい。えっとぉ、わたくしも詳しくは知らないですわ」


 皆、急な話に混乱をする。

 僕らの組織は、対パワードスーツテロ対策部隊。

 そんなところに舞い込む仕事では無いからだ。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「わたしは、(ひいらぎ)アリサと申します。皆さん、短期間ではありますが宜しくお願い致しますわ」


 僕たち四人は、天馬学園からの短期留学という形で別の私立学校「高天原(たかまがはら)月光学院」に来た。


 ……文武両道で政界にも卒業生が多い学校なんだよね。でも、最近良からぬ噂があったのと、退学した子が薬物犯罪しちゃったのが僕たちの派遣理由なんだ。


「はい。柊さん、自己紹介ありがとうございます。では、次は植杉君」


 担任の女性教師がアーシャちゃんの自己紹介を歓迎した後、僕に話を振ってきた。


「はい! 皆さん。僕は植杉マモルと申します。2学期一杯までと短い間ですが宜しくお願い致します!」


 僕とアーシャちゃんは同じクラス、ユウマくんとリナさんは別のクラスに配属されている。


 ……どうしても金髪美少女なリナさんは目立っちゃうからね。なので、ユウマくんがサポート役なんだ。


 今回の任務は厚生労働省のマトリ、麻薬取締官からの依頼。

 大人では潜入が難しい、高校の中に蔓延る違法薬物汚染について調査をしてほしいとの事だ。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「もう皆はん、一気に質問に()はるから、困ったんや」


「リナちゃん、大変だったわね。で、ユウマくんは情報を早速集められたの?」


「そこは某にお任せでござる。既に学園の裏サイトのアクセス権を入手、噂話を収集しているでござるよ」


 今は昼休み。

 学園食堂の端っこの方に僕らは集まって情報統合中。

 ネイビー濃紺セーラー服を着こなしたタイプ違い美少女二人が座る僕らのテーブルに視線が集まるのを感じる。


「流石はユウマくんだね。僕の方は、まだまだ友達作りの段階だよ。ただ、『例』の噂は聞けたよ」


「特別クラスの話だったわよね」


 今回のミッション、発端は高天原月光学院から退学した子が違法薬物使用で保護された事に始まる。


「昨今、大学構内でも大麻、MDMAや覚せい剤などが蔓延するという事件も多いでござるが、高校生が薬物使用とは尋常ではないでござるな」


「確か色付きの飴というかラムネ剤っぽいので、摂取するんだったっけ?」


 ニュースでも一時話題になったが、若者の間で錠剤型の違法薬物が使用された事例がある。

 まるでお菓子、カラフルな錠剤の形をしていて、夜の盛り場などで遊ぶ若者相手に無料で配布された事があった。

 また、大麻成分入りのグミやクッキーを幼児が食べて急性中毒になった事例も聞く。


 一度、違法薬物を摂取し強烈な『快楽』を知ってしまうと、後は人としての活動が出来なくなるか、過剰摂取での死亡かへの道まっしぐら。


 また、害が少ないと大麻などのライトなドラッグを進める者も居ると聞く。


「怖い話よね。わたしも幼少期は知らない間に妙な薬飲まされちゃったから、他人事じゃないわ」


「可愛いアーシャはんは、アニメでいうところの可哀そうな強化人間やからな。人の(ごう)は怖いやん」


 アーシャちゃんを抱擁し、慰める様にするリナさん。

 その「百合」な展開に、周囲の男どもから声にならない声が聞こえてきた。


 ……これだけ目立っちゃったら、潜入捜査の意味ないんじゃないかなぁ?


 僕は首を捻りながら、伸びそうになっているラーメンを食べた。

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