表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/133

第16話(累計 第63話) 帰ってきた日常、戦士の休息。

「ふぅふぅ。アーシャちゃん、やっぱり早いねぇ」


「マモルくんも中々よ。スタミナじゃわたし以上だもん」


 僕とアーシャちゃん、早朝のランニング中。

 11月初旬の涼しい早朝の空気を吸いながら、二人で走るランニング。


「マモル殿、アーシャ殿! 早すぎでござるぅ」

「ユウマくん。頑張るんやでぇ!」


 いや、正確には四人でのランニングだ。

 この後、公園で軽く筋肉トレーニングや柔軟体操が待っている。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「まだニュースとかじゃ、襲撃事件の事話しているのよね。そろそろ、落ち着いて欲しいわね。何処の国の仕業かって煩いわ」


 沖縄の米軍基地襲撃事件、あれから既に一週間が過ぎた。

 米軍北部訓練場、キャンプ・ゴンサルベスを襲った事件。

 それは大々的にニュースになったのだが、詳細は軍事機密という事で詳しくは語られていない。


 SNSに上げられていた動画により、基地へ侵攻するパワードスーツが居た事は知られてはいるが、それが何処の国の手の者なのかは、一般には知られていない。

 ただロシア製の機体とは分かったので、東側諸国へは問い合わせが多いらしい。


 ……今は色んなところにカメラ持ちの人がいるものね。


「しょうがないよ、アーシャちゃん。どっかの国じゃなくて『あの方』によるテログループの仕業ってのは、知られたらパニックになりかねないから、ニュースには流れないよ」


「そりゃそうね、マモル。アリサちゃん、リサちゃん。テレビ見ていないで、朝はちゃんとご飯食べるのよ?」


「はい、お義母様」

「うん、オバちゃん!」


 今日は通信制高校の登校日。

 冬休み前のスクリーニングが行われる。

 一緒に暮らしているアーシャちゃんはともかく、やや遠くの実家暮らしのリナさん。

 夕べからウチに泊って朝のランニングから一緒に行動中だ。


 ……妹のミワは、普段見れない『ヒマラヤの霊峰』を夕べのお風呂で見れたから興奮してたのは、まあヨタ話だね。


「お兄ちゃん。リナお姉さんにまた来てねってお願いしてよぉ」


「ミワ、自分から直接言ったらいいじゃん。リナさんは、可愛い女の子から言われて嫌っていう人じゃないよ?」


「え、えっとな。変なとこ、もう触らんのなら、何時でも来るで、ミワちゃん。ウチ、一人っ子やから可愛ええ妹が欲しかったんや!」


「それは、わたしも同意なの。ミワちゃんって、可愛いんだもん」


「ありがとー、お姉ちゃん達! アタシ、嬉しいの!」


 ミワ、二人のお姉さん美少女にハグされて嬉しそうだった。


「さあ、(かしま)し娘さん達。そろそろ学校に行く時間よ?」


 ……女三人そろえば姦しいって文字通りかもね。


「さあ、久しぶりの天馬学園に行くよ!」


 僕らは冬制服に身を包み、一路学校へ向かった。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「今日もありがと、マモルくん」

「いえいえ。アーシャちゃんの為ならお安い御用さ」


 毎度のごとく、アーシャちゃんの前で動作不良になる自動改札機を僕がフォロー。

 途中から合流したユウマくんも加えた四人で、学園へ向かう坂を昇る。


「また、ここに通えるなんて夢みたいなの! それも、マモルくんも一緒なんだもん」


「僕もそうだね。あの事件は学園にも酷い傷を残しちゃったからね」


「まだ校舎や体育館は、修復出来ていないでござるからな。体育館は立て壊してからの再建と聞いてるでござる」


 ……体育館には皆、良い思い出は無いからね。宗方(むなかた)先生が殺され、蒸し暑い中長時間閉じ込められ、そしてアーシャちゃんが敵を殺した場所だもの。


「ウチはココ始めてやけど、皆と友達になれるんかなぁ?」


「大丈夫と思うよ。だって、リナちゃんは美人さんでスタイル満点。その上に性格だって可愛いんだもん」


「アーシャはん! ウチ、嬉しいでぇ」


 登校中なんだけど、抱き合う美少女達。

 周囲の視線が、どうしても集まるのはしょうがあるまい。


 ……タイプ違いの美少女同士の百合シーンってのは、男女共に嫌いな人は少ないものね。リナさん相手なら僕も焼きもち焼く必要もないし。


「あれ、あの子って?」

「どうして、学園に来られるの?」

「また事件に巻き込まれるんじゃ?」


 ただ、アーシャちゃんを見る学生達の眼はどうしても厳しい。

 皆んなを救う為にとはいえ敵を殺した上に、敵はアーシャちゃんを狙ってきたことは公式には発表されてはいないものの、噂レベルでは学生の中で広まっている。


 ……学園からは、事件に関する事は緘口令(かんこうれい)は出ているんだけどね。マスコミに嗅ぎつけられたら大変だもの。その分、残った学生の授業料は安くなっているし。


「……やっぱり、わたしは」

「はい! アーシャちゃんは、何も悪くないから。このまま一緒に学園にいくよ!」


「アリサ殿、いくでござる!」

「アーシャはん、ウチ何処までも一緒に行くで!」


 周囲の声を気にするアーシャちゃんを僕たちは囲って、学園の門をくぐった。


「皆さん、今日は再生天馬学園の初日。悲しい事がありましたが、皆さんの人生において波風は絶えずあります。そんな妨害に負けず、強く生きて下さい。そして世界に羽ばたき、悪意の目を教育で洗い流しましょう!」


 仮説の講堂に集まった生徒を前に、挨拶をする校長先生。

久しぶりに見る校長先生は、すこし小さくなった感じもするが、それでも一生懸命に僕たちを導こうという思いが見える。


「校長先生殿、事件のボスであった松戸被疑者に頻繁に面会に行っているそうでござる。彼が悪意に走ったのは自業自得でござるが、止める事が出来なかったのかと後悔しているそうでござる」


 ぼそりと小声で校長先生の動向について説明してくれるユウマくん。

 彼女も事件で傷ついたけれども、再び立ち上がった。

 僕もアーシャちゃんを守り、二人、いや皆で幸せに過ごすため、世界をより良いものに変えていきたい。

 そう深く思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ