第15話(累計 第62話) 基地強襲 その六:決着! テロ部隊の目的とは?
「ははは! 地獄でアーシャちゃんを奪われた事を後悔しな」
ミハイルの機体は、僕が声を出した場所を銃撃し、燃え盛る残骸を見て勝利を確信した。
……ああ、お前がな!
しかし、そこにあったのはスピーカー。
アーシャちゃんとリナさんがあらかじめ仕掛けておいた罠であり、ユウマくんの操作で動いていた訳だ。
僕はミハイルの背後から飛び出して彼の機体腰部、バッテリー付近を狙う。
……バッテリーだけ壊せば、殺さずに無力化出来るからね。
「ん? ま、まさか?」
背後からのモーター音に気が付き、頭部を僕に向けたミハイル。
しかし、既に時遅し。
僕の銃撃はミハイル機を襲った。
「くぅぅ! このボクをペテンにかけるなんて」
「ちぃ、浅いか!」
確かに僕の銃撃はミハイル機に着弾した。
しかし、ミハイルが高速ホバーで左方向に逃げたために狙っていた腰部ではなく、動きが遅れた右機械腕部に着弾しただけだった。
「ボクを一撃で殺せなかったのを後悔しな!」
ミハイルは振り返り、右手ライフルを僕に向けた。
……いや、まだまだぁ!
僕はロックオン警報がうるさく鳴るコクピットの中、ミハイル機に目がけて突撃した。
「破れかぶれかよ? 馬鹿め!」
ミハイルの銃口が僕に迫る。
そして右機械腕の人差し指がパワードスーツ用ライフルの引き金をカチンと引いた。
「ん? 弾が出ない!?」
「キミの方が馬鹿だよ!」
僕の射撃は、右機械腕部以外にも持っていたライフル機関部に着弾していて、外見からも撃てない状態なのは分かっていた。
僕は自分のライフルを放り投げ、一気に接近戦の間合いに踏み込んだ。
そして右機械腕から平手抜き手をミハイル機腰部、パワードスーツ最大の弱点な股間部に撃ち込む。
……あそこには、電源と機体バランサーがある! それさえ壊せば、僕の勝ち!
「ちきしょー! ガキがぁ!」
ミハイル機はライフルを投げ捨てながら脚部ホバーを吹かし、後方にダッシュ。
僕から離れて間合いを取る。
僕の放った抜き手は狙いを外し腰部を浅く掠り、火花を散らした。
「まだまだぁ!」
僕はスラスターと脚部ローラーを全開にし、ぶつかる勢いでミハイル機に接近する。
……このチャンスを逃すかぁ!
「だったら、切り刻まれろ!」
ミハイル機は立ち止まり、両機械腕手甲部から高周波ナイフを飛び出させる。
そして僕に向かって切り付けてきた。
……その攻撃は想定内!
僕は視線を向けずに、左機械腕を壁に向ける。
そしてワイヤーアンカーを射出した。
僕の機体は壁に突き刺さったワイヤーに引っ張られて急停止。
「なにぃ!?」
そこを見誤り、ミハイル機は攻撃が空振りをした。
「はぁ!」
左腕部ワイヤーを強制切断した僕は、再び前ダッシュ。
前につんのめっていたミハイル機の頭部を蹴り上げた。
「なんだぁとぉ!?」
「このままトドメ!」
今度は仰け反ったミハイル機の腹部装甲に右機械腕の掌を付け、ドンと一気に衝撃を叩き込んだ。
「ぐぅ。機体が追従しないだとぉ。クソガキがぁ!」
腹部装甲をへこませながら、ふらつくミハイル機。
僕は背後に回り込み、持ち上げてからのブリッジ。
「おらぁぁ!」
バックドロップを仕掛け、ミハイル機の頭部を倉庫のコンクリート床にガツンと、のめり込ませた。
「はぁはぁ。流石にこれだけ衝撃叩き込んだら、気絶しなくても動けないはず……。え?」
普通なら確実に撃破、死んでいてもおかしくない程の打撃を叩き込んだはずのミハイル機。
しかし、まるで幽霊かのようにゆらりと立ち上がってきた。
頭部を失いオートバランサーも壊れたのか、各部から火花を散らしながらもフラフラと立つ姿は、まるで幽霊、幽鬼に見えた。
「どうして、まだ動ける!?」
「ははは、手品のネタバラシはしないんだったよね!」
そして、再び僕に向かって飛び掛かってくるミハイル機。
僕は機体を左側を前にする左半身にさせて、両足で地面をしっかりと踏みしめた。
「アーシャちゃんの為に死ねよぉ!」
「やだね!」
ミハイル機の勢いよく突き出してきた高周波ナイフ付な右機械腕の縦抜き手に対し、僕は左機械腕から捻り込んでいた裏拳を敵機械腕の手首にビシリと当てた。
既に銃撃を受けていて破損していたミハイル機右機械腕は、手首から先が吹き飛んだ。
そして、僕はそこを支点にして右足を前に踏み込んで回転運動を行う。
……今度は左手かぁ!
ミハイルもすかさず左機械腕で刺しに来るが、僕はそこに右機械腕の拳をぶち当てた。
「ど、どうして剛腕を誇る『パラディン』が、そんな華奢な機体に撃ち負けるんだぁ!?」
腰の回転と踏み込みが加わった僕が放つ右拳は、機体の指が折れるもミハイル機の左機械腕をバラバラに撃ち砕いた。
そしてそのまま前進しながら、僕はミハイル機に密着。
今度は右膝を機体股間部、重要部品が集まる場所に叩き込んだ。
「いけぇぇ!」
右膝部装甲から杭が電磁加速で飛び出し、ミハイル機の股間をズドンと貫いた。
……必殺奥義、無刀金的打だぁ! ただ、人間。特に男性相手には禁じ手の一つなんだけどね。
バチバチと火花を急所な股間から噴き出し、ガクンと脱力するミハイル機。
これで完全に無力化できただろう。
「参ったか、ミハイル! アーシャちゃんは絶対にお前なんかには渡さない!」
「……しょうがないか、今回はキミの勝ちさ。一体、どんだけの裏技や罠を使ったのさ?」
座り込んで動かないミハイル機。
しかし、まだコクピットを解放しないから、一切油断はできない。
「だから種明かしはしないんだって。早く投降してください。さもないと……」
「マモルには意識しての殺人は無理だよ。キミの技の一つ一つは優れていても、それに殺気が全く乗っていない。まるで殺すのが怖いように急所を外した攻撃ばかりだ。ボクが、それに気が付かないとでも思うのかい?」
「じゃあ、わたしがマモルくんの代わりに殺してあげる! ミハイル、早く出てきなさい」
僕の躊躇を見抜くミハイル。
しかし、今度はアーシャちゃんがミハイルを脅迫した。
……アーシャちゃん、話したいって言ってたけど、昔の仲間でも撃てるんだろうか?
「やーだね。僕の手に入らないのなら……。アーシャちゃん、死んじゃえ!」
いつのまにか、機体の外部ポケットを触っていたミハイル機のオペレーター腕。
ポケットの中から手榴弾を取り出し、アーシャちゃんの声がする場所へ投げ込んだ。
「アーシャちゃん! 危ない」
僕の声が届くと同時に、手榴弾はズドンと鈍い音をさせて炸裂。
アーシャちゃんの声がした場所は、破片でズタズタになった。
「ははは! 僕の手に入らないものなんて、いらないや。さようなら、アーシャちゃん。マモル、残念だったね」
「ええ。残念だわ、ミーシャ」
アーシャちゃんの声がしたと同時に、擱座したミハイル機のコクピット部に、大きな銃声と共にガポンと大穴が二つ開いた。
「忍法『隠れ蓑』。またの名を『空蝉』。僕が使ったのに同じ手を使わないと思ったアンタの負けだよ、ミハイル……。君が爆破したのは、スピーカーさ」
完全に沈黙したミハイル機。
僕は、倉庫二階へカメラを向ける。
そこには遮熱・対電波シートを被り、土嚢に乗せた対物ライフルを伏せた姿勢で構えたアーシャちゃんとスポッター役のリナさんが居た。
「可哀そうなミーシャ。でも、これで貴方の悪夢も終わりよ……」
アーシャちゃんの悲しい呟きが聞こえた。




