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第13話(累計 第60話) 基地強襲 その四:敵に囲まれる僕、危機一髪!

「マモルは無人機を頼む。俺は有人機を……うわ!」


「ほう。どうやら、飛び入りのキミがアーシャちゃんのカレシかい? 『ベーカー』、無人機を全部お前に任す。そこの坊やをお前らで囲み殺せ!」

「了解でさ!」


 有人機のうち、一機がアーシャちゃんの名前を呼んで僕を襲う様に外部スピーカーで命令を下す。

 わざわざ日本語で言うとは、僕に対する精神攻撃か?


 ……コイツがボスか? やっぱり敵はアーシャちゃん狙いなの!? 僕の事も知っているみたいだし。


「ま、マモル!」


「少尉、こっちはなんとかします。少尉、絶対に死なないで!」


 僕は、三機に襲われながら逃げ回る。

 囲まれたら負け、だから動き回って敵の隙を狙うしかない。


「マモル殿! 有人機でござるが、ロシアの最新鋭機YK-102『パラディン』でござる。ホバー移動可能なのと、両機械腕に仕込みナイフがあるので要注意でござる!」


「う、うん! ありがと」


 下部モニターにざっとした形だけれども、敵機の概要が表示される。

 敵の概要がわかるだけでも、かなり楽になる。

 またレーダーに随時敵の位置が表示されていて、どこに逃げれば遮蔽物を利用出来るかも指示してくれている。


 ……ユウマくん、凄いや!


「ははは! 死ねぇ!」


 無人機に追い込まさせて、トドメを刺そうとする敵、ベーカー()とやら。

 だが、まだ動きが荒い。

 その動きまで見切った指示がモニターに表示され、僕はそれに従って行動した。


 ……ここだ!


 僕は今まで温存していた機械腕部ワイヤーを左腕部から撃ちだし、無人機の脚部を狙う。

 見事にワイヤーに足を引っかけて転ぶ無人機。

 僕はワイヤーを巻き取りながら高速移動、転んだままの無人機へ至近距離からライフルを打ち込んで撃破した。


「なにぃ!」


 想定外の動きに驚愕して動きを止めた有人機。

 僕は、その隙にもう一機の無人機へワイヤーとローラーダッシュを併用して不規則移動しつつ接近。

 背後から腰部バッテリー部を銃撃して倒した。


「く、くそぉぉ、このガキがぁ!」


 高速移動する僕に向かって、無暗に銃を撃つ有人機。

 しかし、向こうもホバー移動しながら撃つので当たらない。


「よいしょ!」


 ワイヤーを壁に撃ち込んで急ブレーキ、からの高速ターン。

 敵は僕の動きが読めずに、射撃が外れた。

 そこを狙い、僕は一気に接近戦の間合いに踏み込む。


「死ねよぉ!」

「甘い!」


 敵機は左機械腕部手甲から高周波ナイフを出して突き刺してくるが、その攻撃は想定内。

 こっちも左機械腕で攻撃をかち上げて、そのまま左機械腕の掌底をコクピットがある敵機腹部に当てた。


「ふん!」

「げはぁぁ!」


 『徹し』を本気でぶち込めば、べっこりと腹部装甲が凹む。

 そのままくず折れる敵機を僕は蹴り転がし、背部バッテリーを引っこ抜いた。


「これで残り1機。あ、少尉は?」


「マモル殿、少尉殿は弄ばれているでござる。既に左腕部が欠損、脚部も不調で歩くのがやっとでござる! 今は某がフォローしているでござるが、撃破されるのも時間の問題でござるよ」


「分かった。今から少尉を助けに行くよ!」


 ずいぶんと少尉から引き離されていた僕、ローラーを高速回転させて、少佐の元へ移動を開始した。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「『ベーカー』は時間稼ぎすらマトモに出来ないのかぁ。やっぱり闇バイトで来るような奴に使える人材は居ないなぁ」


 僕が少尉のところに到着したとき、既に勝負が付いていた。

 敵有人機『パラディン』は少尉のM4の頭部を左機械腕のみで掴み、そのまま持ち上げている。

 中吊りになっている少尉機はオペレーター腕をバタバタさせるも、両機械腕は欠損。

 両足とも膝関節部より折れ曲がり、それより上にある操縦士の自身の脚も無事そうには見えない。


「少尉! お前、少尉を放せ!」


「コイツは、あくまで時間潰しの玩具。キミが来てくれたのなら、もう用無しだよ。あ、殺さないから安心してね。ボクが興味があるのは、キミとアーシャちゃんだけなんだから」


 僕は怒りに燃え敵機にライフルを向けるが、簡単に少尉を放り投げ捨てる敵機。

 もう興味無さそうに少尉機を一瞥した後、僕の方にバイザー型の頭部センサーを向けてきた。


「少尉!」


「は、早く逃げろ……。コイツは、普通じゃな、無い……、ぐは!」


「煩いなぁ! 殺さないんだから、そのまま黙ってろや」


「マモル殿! 少尉殿のバイタルは致命的ではござらん。今は敵に集中でござるよ!」

「ダニーお兄ちゃん!」


 敵は僕を動揺させようと、起き上がることが出来ない少尉機を蹴る。

 ユウマくん、僕を安心させようと少尉は死なないと教えてくれているが、背後に居るリナさんの悲鳴が悲しい。


「卑怯者! そうやって僕をいたぶって焦らせようとしているのがバレバレだよ? あ、そうか。僕が怖いからマトモに勝負したくないんだね」


「……ボクの想像よりは口が悪いんだね、マモル。キミはアーシャちゃんのカレシには似合わない。アーシャちゃんにはボクみたいな完璧な人間がパートナーにならないと! ボクは殺したいほどアーシャちゃんを愛しているのだから」


 僕の挑発に対して挑発返し。

 まるでオペラ俳優みたいに大げさな動作をしつつ、スピーカーから歪んだ愛を謳う敵。


「その声、まさか? まさか、ミーシャなの??」


「マモル殿、要注意でござるよ? そいつは通常型と装甲形状が一部違うでござる。手練れな事も考えて、コイツがボス敵。何をしでかすか油断するでないでござるよ」


 無線機からは、アーシャちゃんの呟きとユウマくんの情報提示が聞こえてくる。


 ……そういえば、ヤーコフはアーシャちゃんの昔の仲間が敵に居るって言ってたね。それがこいつか!


「それって愛の押し付けじゃないかい、ミーシャ。いや、ミハイル! お前にアーシャちゃんは絶対に渡さない!」


「へぇ。ボクの正体を看破するなんて、想像よりは優秀だね。ああ、僕はミハイル・アントノーヴィチ・カミンスキー。今は『あの方』に仕える騎士さ!」


 演劇で王子を演じる様に華麗な礼を見せるミハイル。

 しかし、煽り文句を言いながらも一瞬たりとも僕から視線を外さない強敵だ。


「じゃあ、僕も名乗り上げる! 植杉マモル! アーシャちゃんを一生守る者だ!」


「じゃあ、アーシャちゃんを愛する者同士、戦おうか!」


 それまで下げていた銃口を僕に向けたミーシャ。

 僕は、それが戦いのゴングとみて、機体を動かした。


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