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第2話(累計 第49話) 僕とアーシャちゃんの訓練24時!

「さあ、ガキ共。起床時間だぞー!」


「イェッサー!」

「ダース!」

「はい!」


 今は午前四時。

 早すぎる朝ではあるが、米軍の新兵訓練なブートキャンプでは普通の起床時間らしい。

 訓練教官のサイモン・ミストロット曹長が大きな声で僕たちを起こす。


 ……米軍の新兵教育だと起床前にトイレとか歯磨き、身支度をするから、この三十分前から起床らしいけど、そこは免除なんだ。


「では、今より居室の掃除だ! ベットメイクと掃除が終わり次第、外に出て体操とマラソンだ!」


「サー、イェッサー!」


 新兵訓練では同じ部屋に五十人くらい寝起きをするらしいが、今回僕たちは個室を貰っている。

 女の子なアーシャちゃんが居るってのもあるし、僕たちが訓練をしにきているキャンプ・ゴンサルベス、本来は新兵訓練用の場所じゃないからだ。


 更に教官のミストロット曹長も、本職の訓練教育官では無い。

 兵站、つまり補給物資の事務処理を行うのが本職。

 奥様が日本人で日本語に堪能、そして教育隊にもかつて所属していたので、今回のお役目になったそうだ。


「次は朝食だ! 新兵には急いで食べろと言うが、お前らはまだまだガキだ。ゆっくり噛んで沢山食べろ! アリサ、特にお前は痩せすぎだ。間違ってもダイエットなんて考えるなよ。女の子はむっちりで良いんだぜ。こと胸と腰回りは……」


「もー、教官のエッチぃ!」


「教官に何をいう! あ! え……。いや、うん。確かにセクハラだな。でも、健康的な方が俺は好きだが……」


「教官、発言には気を付けましょう。さあ、アーシャちゃん。怒っていないで食堂に行くよ」


 ……アーシャちゃん。教官相手でも本気の殺気飛ばすからね。教官、娘さんいるならセクハラ発言は注意ですよ? 今回も周囲の日本人スタッフに睨まれたでしょ。


 厳しいだけでなく、ジョークで時折僕たちを笑わせてくれる教官。

 まるでお父さんみたいな感じで、僕たちの事を見てくれている。


 ……実際、幼稚園に通う娘さんがいるんだ、教官。これがまた、大柄で豪快そうなお父さんに似ていない栗毛の美幼女ちゃん。自慢げにスマホで美人な奥さんと娘さんの写真を見せてくれたよ。


 休み時間や食事中には、雑談も話してくれる教官。

 彼のおかげで僕たちは、どんどんと強くなった。


「食事終わったら座学だ! ガキ共は高校の宿題をしろ! 軍事教育にはまだ早い」


「サー、イェッサー!」


 もくもくと勉強をする僕たち。

 語学に堪能なアーシャちゃん、理系全般が完璧なユウマくん。

 僕は二人についていくのがやっとだ。


「今から海兵隊マーシャルアーツプログラムだ! ユウマはそれ以前だから筋トレをしろ。マモルとアリサは、ナイフバトルの訓練だ!」


 午前最後の訓練は、格闘技。

 まだ格闘技以前のユウマくんは、基礎体力を上げるために腕立て伏せなど。

 僕は、ゴムナイフを使ってアーシャちゃんとの戦闘訓練。


「教官、わたしとナイフバトルの訓練して頂きたいのですが?」


「う……。アリサ。お前のナイフの腕はもう分かっている。さっきの発言は俺が悪かった。だから、……な……すまん」


「ええ。わたし、教官の事は好きですから、少々のセクハラは気にしてませんですわ。さあ、マモルくん。戦いましょ?」


「お、お手柔らかにね、アーシャちゃん」


 教官に対して許していると言いながらも、眼が笑っていないアーシャちゃん。

 コンプレックスになっている体形の事を言われたのが、余程気に食わなかったらしい。


 ……アーシャちゃん、教官のセクハラを随分と根に持っているんじゃないかな。戦闘職じゃない教官にはアーシャちゃんの相手は厳しいって。


 ちなみに腕を見るってことで最初教官は、僕、アーシャちゃんと軽く戦ってみた。

 僕は接戦の上、僕よりも大きな体格を利用された抑え込みで負け。


 ……教官って、僕よりも身長は20センチ以上、体重も倍近く大きいからね。爺ちゃんから最近教えて貰った技は、教官に怪我させちゃダメだから使わなかったし。


 アーシャちゃんは、高速移動を駆使したナイフバトルで教官を十連敗にまで追い込んだ。


 ……アーシャちゃん、爺ちゃんに教わった歩法でますます強くなっているんだよね。


 そして僕、お昼前にはゴムナイフで切られた痣で身体中一杯になった。


「やっぱりアーシャちゃんには、ナイフバトルでは敵わないや」


「そういいつつ、わたしを投げ飛ばしたのは誰かしら? 投げ技や崩し技と合わせられたら、わたしでも苦戦しちゃうわ」


「アリサ殿、マモル殿。凄いでござる。某、なーんもできないでござるよぉ」


「さあ、ガキ共。シャワー浴びてからお昼ご飯だぜ!」


 僕たちの訓練は、まだまだ続く。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「あ! また止まったわ。ユウマくん、わたしのパソコン見てくれないかしら?」


「しょうがないでござるね。うむ、これは完全にハングアップしてるでござる。データのバックアップはしてるでござるか?」


「ええ。念のために一分ごとにバックアップする設定にしてるわ」


「じゃあ、リセットするでござる」


 午後。

 一通りの実技が終わった後は、パソコンを使っての勉強。

 機械と何故か相性が悪いアーシャちゃん。

 今日もパソコンが固まってユウマくんに助けてもらっている。

 困っているアーシャちゃんにくっついて、ユウマくんが色々と作業している。


 ……僕よりも、ユウマくんの方がパソコンには詳しいものね。まあ、ユウマくんじゃなきゃ僕は嫉妬してるかもだけど。


「ガキ共。作業しながら話を聞け。明日以降は、ジャングル訓練施設を利用する部隊が来る。オマエらとは基本別行動だが、食堂とかで一緒になる事もある。問題は起こすなよ」


「教官。それは軍人のお兄様方次第ですわ。わたし、自分からケンカを売る気はございません」


「僕もそうです。アーシャちゃんに何も無ければ」


「某は最初から関係ないでござる。というか、マモル殿たちについていくのがやっとでござるから」


 ちょうど訓練所が開いている時期を借りていたので、今まで僕たちの他には訓練生は居なかった。

 けれど明日以降、どうやら他のお兄さん方がここに来る様だ。


 ……ここに訓練に来る人ってレンジャーさんとか特殊部隊になるような人ばかりだよね。確か、アメリカ軍はここ以外にジャングル環境での訓練施設持っていないって聞いているし。


「それとな。もう一人、ガキが増える。オマエらと同じ歳らしいから仲良くな」


「はい?」


 どうやら、僕たちの訓練はさらに賑やかになる様だ。

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