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第1話(累計 第48話) 僕の新しい生活! 過酷な訓練。

「おい、ガキ共! 頭を低くしないと弾に当たるぞ!」


「は、はい!」

「マモル殿、早いでござるぅ。アリサ殿、待ってくれでござるぅ」

「ユウマくんは、だらしないわね。マモルくん、がんばろー!」


 僕とアーシャちゃん、ユウマくんはジャングルの中にいる。

 匍匐前進をしている僕たちの頭上には銃弾が飛び交う。


 ……実弾じゃなくて訓練用のゴム弾だけどね。それでも当たったたら悶絶するくらい痛いんだ。


 半分泥沼になった中を匍匐前進で進む僕たち。


 背中には実戦装備と同じ重さの(おもり)が入ったリュックを背負う。

 そして本物と同じ重さのエアーガン仕様M4カービン銃を握り、少しずつ前に進む。


 眼球保護の為のゴーグルは泥水で汚れ、前も満足に見えない。

 借り物の迷彩服は、生ぬるい泥水を吸い込んで重く身体を縛る。

 過酷な環境の中、僕たちは訓練をしていた。


「ガキ共! 制限時間まで残り五分。慌てず急げ―!」


 鬼教官軍曹の掛け声で、僕たちは移動速度を上げた。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「お疲れ様、マモルくん、ユウマくん。やっぱりジャングル訓練はキツイわね。わたし、寒い極地の訓練は何回もしたけど、ジャングル訓練は新鮮で楽しいわ」


「あれが楽しいって、ロシア時代ってどれだけハードな訓練だったの、アーシャちゃん?」


「しゃ、シャベルで野犬を殺す訓練をしてい、いるって(それがし)は聞いたことがあるで、でござるぅ」


 訓練終了後、僕たちは簡単なカウンセリングや質問を受ける。

 本来でなら、未成年、十八歳にならない僕たちが受けるような軍事訓練は存在しない。

 日本もアメリカも少年兵を使わない国連議定書に署名をしているためだ。


 ……自衛隊の陸上自衛隊高等工科学校は、特別公務員だけど扱いは自衛官じゃなくて防衛省職員なんだ。僕も今は彼らと同じ様な存在なんだけどね。


「ユウマくん、それはGRUのスペツナズの新兵訓練らしいわね。わたしは、七歳でやらされちゃったの。今思い出しても嫌な訓練だったわ」


「……動物好きなアーシャちゃんには辛い訓練だったよね」


「その野犬が、これまた狂犬病持ちだったの。可哀そうだったけれど殺すのは慈悲だったわ」


「う、うぷぅ。お二人とも、よく平気で話出来るでござる、某は限界でご、御ざるぅ」


 訓練後、シャワーを浴びてさっぱりして休憩中の僕ら。

 休憩室に設置された自販機からジュースを買って飲んでいるけれども、ユウマくんは椅子に寝ころんで半分死んでいる。


「僕は爺ちゃんにスタミナ関係はしごかれたから、それなりにはね。でもキツイよ」


「わたしはスタミナ無いから、今回みたいな持久戦は勘弁して欲しいな」


 僕たちがなぜ、こんな訓練をしているのか。

 それには、僕たちの年齢が関係している。


「おう、ガキ共。ユウマは、まだ撃沈中か。落ち着いたら座学もあるから頑張れや」


「サー、イェッサー」

Да-с(ダース)!」

「は、はいですぅ」


 僕たちの様子を見に来てくれた教官さん。

 アメリカ海軍 海兵隊 第三海兵遠征軍 第三海兵兵站群 サイモン・ミストロット曹長が、ガハハと豪快に笑いながら僕たちに日本語で話しかけてくれる。


 僕たちが今居るのは、沖縄県国頭郡(くにがみぐん)国頭村。

 米軍の北部訓練場、キャンプ・ゴンサルベス。

 米軍が唯一持つジャングル戦闘訓練場である。

 どうして、こんな場所で訓練をすることになったのか。

 それは半月前のある命令書から始まる。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「えー、沖縄の米軍キャンプで訓練をしろって?」


「マモルくん、声が大きいの! ええ。わたし達が所属する事になる組織の設立前に訓練しておけって話なの。特に二人は実銃の訓練はしたことないでしょ?」


「某、銃はサバゲ―では使っていたでござるが、実銃はこの間の事件が最初でござる。カービン銃だったからなのか、思った様に当たらないでござるね」


 ウチでの三人での勉強会中、アーシャちゃんから僕たちの訓練についての話が飛び出した。


 ……今、アーシャちゃんは僕と同じ家に住んでいるんだ。保護者だった宗方(むなかた)先生が亡くなって、宙ぶらりんだったアーシャちゃんを母さんが保護しちゃったんだ。


「で、日本国内には公的に未成年者が射撃訓練を出来る場所って無いのよ。自衛隊の高校でも実弾には触らせないようだし」


「少年兵問題に引っかかるからだよね」


「なので、航空自衛隊と海上自衛隊の高校は廃止になったでござる。で、某らも立場は陸自高校の生徒と同じ、特別公務員扱いでござるか?」


 世界的に問題になっている少年兵問題。

 日本には存在してはならないし、民間軍事会社に勤めさせるのは更に問題。


「そこが問題で、国会とか霞が関の官僚さんたちが、わたし達の為にがんばってくれているんだって」


「ありがたい話だよね。じゃないと、僕。今頃は少年院とかに送られているかもだし」


「某も感謝でござる。で、給与も陸自高校と同じ額が出るでござるか? まあ、無くても一切問題無いでござるが」


 半分冗談気味にお金貰えるかって話すユウマくん。

 僕にとっても、お金はどっちでも良いけれど、アーシャちゃんと一緒に戦える力が得られるのなら大歓迎だ。


「ということで、三人で沖縄旅行よ。泳ぐには少し寒いけど、秋の本土よりは暖かいわ」


「マモル殿。アリサ殿の水着姿を思い出してはダメでござるよ?」


「もー、ユウマくんったら」


 大声で笑いあう三人、気になって母さんや妹のミワが勉強部屋を覗き込みに来たのは、大切な日常の一幕であろう。

 マモルくんとアーシャちゃんの物語は第二シーズンへと突入します。

 これからもイチャコラしつつ、ハードなアクションをお送りいたします。

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