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第46話 エピローグ2:とりあえず事件解決。悪あがきするヤーコフ!

「もうあわてんぼうなんだから、アーシャちゃんは。肋骨は痛いけど、僕は死なないよ?」


「ホント? 絶対にホント? マモルくん、絶対に死なない? わたし、マモルくんが居ない世界なんて絶対に嫌なの!」


「うん、絶対に死なないよ。先生も『緑』タグだって判別してくれてるでしょ? だから安心してね、アーシャちゃん」


 今、僕は救護用のテントの中で応急処置、点滴を受けつつ胸を固定する包帯でぐるぐる巻きをされている。

 横では、僕から離れたくないと無理言ってアーシャちゃんが手当を受けている。


 まるで野戦病院な救護テント。

 搬送の緊急度合いが低いものの脱水症状が酷い生徒には、点滴処置も行われている。


 ……ホント、被害も最小限ですんで良かったよ。宗方(むなかた)先生……、僕は皆を守れました。


 アーシャちゃん、擦り傷に切り傷、打ち身。

 全身ボロボロな上に、制服は返り血でも汚れている。

 しかし眼には力が溢れ、僕に対して最高の笑顔を向けてくれる。


 ……本当にアーシャちゃんは綺麗だよね。


 アーシャちゃんの痛々しくも神々しい美しさに、僕は息をのんだ。


「アーシャちゃんこそ、ちゃんと治療受けてよね。傷跡とか残ったら僕も嫌だもん」


「うん。マモルくん」


「はいはい。バカップル共は、存分にイチャついてな。そこの坊や、動くなよ?」


 自衛隊病院から来ているらしい女医さん。

 ぶっきらぼうで一見乱暴に見えるけど僕らの手当てを手際よく行っているし、さっきまでは敵兵らの識別救急(トリアージ)をしていた。


(それがし)、動きたくても動けないでござるぅ」


 ユウマくんも、瓦礫や資材の中から敵兵と一緒に助け出された。

 手足に添え木を付けられて、今は救急車による搬送待ち。

 トリアージでの緊急度合いが「黄色」なので、慌てての搬送でも無い。


 ……トリアージタグ『赤』の人は、急いで警察病院やら自衛隊病院へ緊急搬送されたんだ。ほぼ全部が敵兵なんだけどね。


「でも、半分くらいはまだ生きててたんだよね、敵も」


「うん。彼らも殆どが闇バイトで来た愚かな犠牲者。傷つけたわたしが言うのもなんだけど、助かって欲しいわ」


「敵ボス、二人とも生かして確保できたのは行幸でござるぅ! これで事件の詳細も分かる……ぎゃ! 痛いでござるぅ!!」


「アンタは動かないの! まったく、最近のガキ共は爆弾飛ばしたり、パワードスーツをいきなり操縦したり。すごい無茶するし、末恐ろしいねぇ。親御さん、これ以上心配させるんじゃ無いよ?」


 女性軍医さん、ユウマくんを粗っぽく固定させているけど、声は優し気。

 僕たちの事を心配しての言葉と思うので、とても嬉しい。


 ……結局、ヤーコフもボス、松戸って奴も死ななかったんだよね。


 松戸という名の太った四十路男、文句垂れながら搬送されていたが、彼がこれから受ける罰で犯した罪を償えるのかは正直分からない。


 ……それでも生きてたら償えるとは思うよ。ヤーコフに比べれば罪は軽いし。


 そして、ヤーコフ。

 首やら全身を固定されて機体から搬送されていた。


 ……僕のバックドロップが完全にトドメになったみたいだね。脊髄損傷とかもあるのかな?


「くそぉ、ガキ共。絶対に殺してやる! 今度、逢ったら絶対に許さん!」


「あら? 半身不随になりかけの貴方がわたし達を殺すって? 可笑しいわねぇ。アンタなんか、もうわたしの敵じゃないの。殺してあげる価値も無いわ」


 搬送中に悪態を付くヤーコフ。

 しかし、アーシャちゃんは彼の悪意には一切反応しない。

 そして拳銃を彼の目の前でホルスターに収め、殺す価値も無いと切り捨てた。


 ……あれがアーシャちゃん流の復讐だね。戦士に対して戦う価値が無いって切り捨てるのは。


「ち、ちきしょー! 俺を蔑むか!? ふん、まあいい。アリーサ、お前には更なる地獄が迫るぜ。良い事最後に教えてやろう。『秘密の兄弟団』に居たガキの中に、お前の敵になった奴がいるぜ? 『あの方』の配下にいるのさ」


「口から出まかせかい? ヤーコフ、これ以上アーシャちゃんを痛めつけるなら、許さないぞ?」


 ヤーコフ、いうに事欠いてアーシャちゃんの幼馴染に敵になった者が居ると言い出す。

 悪あがき、最後っ屁にしても酷いとしか言えない。


「ふーん。何処まで下品なのかしら、ヤーコフ教官? それで、一体誰なの?」


「ミハイルだ。俺がお前を殺しに行くって話したら、どうぞって言ってたぜ?」


 ヤーコフに対し、勝手にどうぞって感じだったアーシャちゃん。

 しかし、彼が出した名前でビクンと硬直した。


 ……これは不味い! ここで黙らせないと。


「愚か者でござるな、ヤーコフ殿。我らを舐めるでないでござる。第一、お主はこれが初戦のマモル殿に負けた雑魚でござろう? アリサ殿やマモル殿はどんな敵でも負けぬでござる。お主は勝手に牢屋の中で動けぬ身を後悔するが良いでござるよ」


「ぐぬぬぅ」


 僕が急いで何か言い返そうと思ったとき、戦場から運ばれてきたばかりのユウマくんが厳しく言い返す。

 雑魚と言われたのは、流石にヤーコフも傷ついた様だ。


「そ、そうよ。わたしは絶対に負けないわ。ヤーコフ、アンタは世の中を恨みながら腐るが良いの!!」


「……アリーサ。お前が苦しむのを牢獄の中で楽しみにしてるぜ、ははは!」


 怒りに顔を歪ませ、負け惜しみに捨て台詞を吐きながら搬送されていくヤーコフ。

 僕は、震えるアーシャちゃんの肩をそっと抱いた。

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