第39話 僕の戦い。技を駆使して敵を投げ倒す!
今にもパワードスーツに乗り込もうとしていた敵オペレーター。
僕は背後から、彼に攻撃を仕掛けた。
……足払いからコンボ!
スーツのコクピットハッチに足を掛けたオペレーターの軸足を下蹴りで刈り取る。
「な、なんだ!?」
バランスを崩したオペレーター。
何が起こったのか理解していないだろうが、僕は理解させる暇を与え無い。
僕は、腰の力を使って敵オペレーターを下から担ぎ上げる。
「うわぁ」
後は容赦なく、背中に担いだオペレーターを背中からコンクリートの地面に叩き落とした。
「ぐぎゃ!」
……ヘルメットもあるし、首を折らないように落とし方を手加減したから死なないでしょ?
狙い通り、後頭部と背中を強打したオペレーターは一撃で無力化。
後は、パソコンを操作している整備士を倒すのみ。
「ん、どうした? え、オマエは!?」
……し、しまった。気が付かれた。撃たれる前に倒さなきゃ。
僕の存在に気が付いた敵整備士が、拳銃を腰から抜くのが見える。
……だったら!
僕はジグザグにステップしながら、対抗して拳銃を抜く。
僕の腕では多分当たらないと思うが、十分牽制にはなる。
僕に向かって整備士の銃口が向いた時、整備士は横から銃撃を受けた。
「え! なんだ!?」
……ユウマくん、ナイスフォロー!
ユウマくんが、敵兵から奪ったカービン銃を整備士へと撃つ。
もちろん当たりはしないが、それでも連続して撃たれれば整備兵士は物陰に隠れるしかない。
……出来た隙を僕が突く!
三点バースト射撃で上手く敵兵を足止めしてくれるユウマくん。
僕は陰から敵整備士の背後に回り込んで、膝カックンを仕掛ける。
「うぉ!」
なれば、敵兵は後ろに倒れないように前に踏ん張る。
そこを逆に利用して、僕は敵の拳銃を持つ手を制しながら前に押し倒した。
「トドメ!」
「ぐぎゃ!」
腎臓辺りに体重を乗せた全力の膝蹴りを叩き込み、僕は敵整備兵も撃破した。
「ふぅぅぅ! 爺ちゃんに色々技を教わってて良かったよぉ」
僕は、敵を殺さずに倒せたことに大きく安堵した。
……アーシャちゃんには悪いけど、僕には敵を殺す覚悟がまだ無いんだ。だから躊躇せずに倒すために、不殺の技を使うよ。
殺す覚悟、それを幼い頃に身につけるしか無かったアーシャちゃんの不幸。
僕に人殺しになってほしくないという、アーシャちゃんの思い。
僕は、自分の手をじっと見た。
手加減無しに力を振るえば、簡単に人を殺せる自分の手を。
……僕、アーシャちゃんに何かあったら、どうなるんだろう。怒りのあまり敵を皆殺しにしちゃうのかな?
「マモル殿。凄すぎでござる。いつの間にそこまで強くなったでござるか? もはや神業でござる!」
「相手が油断しているから、勝てるだけだよ。銃を持つ敵に真正面から戦って勝てるとは、僕思わないね。それに人を殺す覚悟は、僕には無いし」
ユウマくんと僕、敵兵をそのあたりに合ったワイヤーやインシュロックで拘束する。
とりあえず二人とも息はしているので、すぐに死ぬ可能性は無いだろう。
「じゃ、第三ステージでござる」
「やっぱり、僕がアレに乗るの?」
ユウマくん、にんまりと悪そうな笑顔をした。
◆ ◇ ◆ ◇
「マモル殿、どうでござるか?」
「少し窮屈だね。でも、僕の体格でこれだと大きな人は乗れないんじゃない?」
僕は今、アメリカ製パワードスーツM3『ラコタ』のコクピットに入っている。
手足を所定の場所に固定して操作する身体拡張型。
脚は機体の膝の部分に固定する関係で動かす角度の倍角に動く。
また、機体の外に出ている腕を動かしたとおりに機械腕が動く。
……お腹からオペレーターの腕が出る関係で、四本腕に見えるんだよね。
「本当に僕が動かすの? 行き当たりばったりじゃない? 第一、銃撃戦なんて僕には無理だよ?」
「そこは心配無用でござる。FCSが敵味方信号を確認するので、味方には銃器ロックオンはできないでござる。つまり敵のスーツはマモル殿のスーツを撃てないでござるよ。後は、マモル殿お得意の格闘戦に持ち込めば勝ちでござろう?」
「そうかなぁ?」
僕は、ユウマくんにすっかり騙されている気もする。
でも、残る敵最大の戦力を潰せるのは今、僕しかいない。
「第一にマモル殿は、ちゃんとスーツで歩けてるでござる。普通、素人は立つのがやっと。十分、勝算はあるでござるよ」
僕は、試しにスーツを歩かせてみた。
足捌きに少し違和感が最初あったものの、しばらくするとラジオ体操が出来るくらいにはなった。
……あんまり練習や準備に時間は掛けられないからね。ヤーコフがスーツに乗って出て行ったし。でも、僕らじゃヤーコフには勝てなかったから、あの時はしょうがないよ。
先生の仇でありアーシャちゃんを狙う敵なヤーコフがスーツに乗っていった以上、残敵を先に倒してアーシャちゃんを助けにいかないといけない。
「分かったよ、ユウマくん。じゃあ、フォローお願いね」
「任せておくでござる。……マモルくん、先生の敵討ちを頼むよ」
コクピット内スピーカーからユウマくんの声が聞こえる。
最後に先生の仇を討ってと頼むユウマくん。
僕は快諾した。
「うん、まかせておいて! 僕は絶対に負けないよ」
僕は深呼吸をする。
そして掛け声を出して、発進した。
「マモル、発進します!」
「ご武運を!」
僕は、スーツの腰部スラスターを一気に吹かして運動場に飛び出した。
「す、すっごいG。敵は……。あそこか!」
輪郭強調されたモニターの中、大型機関銃をパトカーに向けて撃っている敵が映った。
敵から奪ったヘルメットから網膜投射で、FCSデータが映し出される。
敵味方識別信号では味方に指示されているスーツ。
緑色に輪郭表示されている敵に、僕はスライディングで体当たりをした。
「ぐわ。一体何をして。あ、オマエは『ホテル』じゃないな! どうして、え?」
足を狩り取られて転んだ全長3メートルのパワードスーツ。
僕は立ち上がろうとしていた敵を背中から再び押し倒し、脚部、右膝関節を背後から右脚固定用のパイルを使って踏み抜いた。
バキンと砕けるスーツの右ひざ。
振り返って僕に銃口を向けてくるも、IFFが邪魔をして弾丸は飛び出さない。
「も一発!」
僕は、スーツの頭部を踏みつぶす。
これでメインセンサーは全滅、内部オペレーターは眼を潰されて状況が把握できないだろう。
「お前ら、絶対に許さない!」
ぶんぶん振り回すスーツの右機械腕を掴み上げ、曲がらない方向へ捻る。
するとスーツのバカ力で、銃を持ったままの腕が肘関節部からちぎれた。
「ふっとべ!」
僕は、自機の機械腕に持っていたライフルを放り投げ、手足を失い軽くなった敵をバーベルの様に頭上に持ち上げる。
そして、そのまま投げ飛ばした。
「があぁぁ!」
ゴロゴロと転がる敵バトルスーツ。
残る腕も足も衝撃でちぎれ、達磨状態だ。
「スーツの衝撃緩衝能力に感謝してよね!」
僕は、トドメに敵機体の背部からバッテリーを引き抜く。
その際、スーツから出たオペレータの腕がぴくぴくしているのを見、敵オペレ―ターが死んでいないのを確認した。
文章だけではパワードスーツがイメージしにくいと思いますので、補足説明します。
マニューバースレイブ方式、要は、オペレーターが身体を動かすとそれに追随して機械が動く仕組みです。
例を出せば、攻殻機動隊の士郎正宗先生の作品「アップルシード」及びアニメ版攻殻機動隊や「紅殻のパンドラ」に出てくるパワードスーツ、アームスーツがそうですね。
また、特撮「王様戦隊キングオージャー」のロボコクピットに使用されています「スケルトニクス」がそうですね。
では、引き続き応援の程、宜しくお願い致します。




