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「満月の夜、僕は学校で一番の美少女に拳銃を突き付けられた。~クラスで隣の席に座るアノ子は、超絶凄腕エージェント~」  作者: GOM
第1部 ボーイ・ミーツ・ガンガール

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第34話 監禁状態の僕ら。逆転のカギを探す!

「わたし達どうなるの?」

「おかーさーん……」

「俺らじゃ何も出来ないのかよぉ」


 体育館に集められた僕たち人質。

 皆、夏の夜が更ける中、嘆き苦しんでいる。

 床に座り、寝ることもできず、飲食も無く、トイレすら監視されている。


「ちきしょぉ、ちきしょぉ」


 普段は、穏やかなユウマくん。

 しかし、目の前で大好きだった宗方(むなかた)先生を殺され、怒りと悲しみに支配されていた。


「……今は、まだ辛抱。チャンスを狙うんだ」


 僕は何も言わないアーシャちゃんを抱きしめながら、敵兵の様子を観察した。


 体育館を監視する兵は三人。

 二人が東西の出入口、一人が壇上で全体を見回している。

 時折、折り畳み椅子に座っては休憩。

 また、トイレに行くと言った生徒を監視しながら連れて行く。


 なお、先生達は僕らとは別の場所、多分職員室辺りで監禁されているらしい。

 おそらく先生が生徒と結託する危険性を避ける意味があるのと、ボスらしき男が校長先生達に酷く恨みがあるようだ。


 ……もうじき深夜0時。後二、三時間後が勝負だ。明るくなる直前を狙って行動するぞ。


 お互いに緊張が続く監視。

 今は外部からの狙撃を警戒して、体育館は分厚い天幕で窓を覆い、照明も付けていない。

 暗い室内、敵兵は暗視装置を装着して周囲をゆっくり見回している。


 ……暗視装置って視野が狭いから、突くならそこか。後はフラッシュで目潰しとか。


 僕の前に居る兵ら、装備は銃器を含めて西側の物を使っているが、今一つ動きが洗練されていない。

 そう、動きがぎこちなくて、銃だけ撃つ練習をした素人っぽいのだ。


 ……サバゲ―もしたことないっぽいんだよね。CQC(近接戦闘術)とか知らなそう。


「……ユウマくん。僕に敵の情報を詳しく教えてくれない? 僕も先生の敵討ちをしたいんだ」


 僕は、ぶつぶつ言っているユウマくんに小さく声を掛ける。

 ユウマくん、先生が大好きだったから、今は先生の死で暴走しそうになっている。

 このまま放置するよりは、目標を与えて行動させた方が安心だ。


 ……敵兵が、僕たちの会話に注意していない今なら相談できるね。


「……(それがし)。いや、ぼくは宗方先生の事が大好きだったんだ。美人で明るくて、お茶目でドジっ子で強くて優しくて……。夏の海では先生の背中に日焼け止めを塗る事もさせてもらったし……。その先生を殺したアイツらを、ぼくは絶対に許せない。でも、ぼくには何の力も無いんだ。知識や情報がいくらあっても、ぼくにはそれを生かす武力が無い。敵討ちしたくても、何も出来ないんだ」


 ボロボロと泣きながら、思いを話すユウマくん。

 力無き正義は無力、圧倒的な暴力の前に何も出来ないとこぼす。


「それは、僕も同じだよ。でもね、このままアイツらの思い通りになるのは絶対に癪だ。先生の敵討ちもしたいし、このまま被害が大きくなるのを黙って見ているなんて出来ないよ!」


 体調不良の生徒が、既に多数発生している。

 先生が射殺された時に、嘔吐した生徒は多い。

 更にずっと銃口を突き付けられていては、ストレスも過大だ。


 トイレには、体育館にあるものに監視付きで行かせてもらっているとはいえ、朝から誰も水分や食料を摂取していない。

 夏の高温と緊張から、誰もが制服を透かす程に汗を流している。


 ……このままじゃ、明日には誰か死んででもおかしくないよ。


「たぶん、今晩が勝負どころ。明日の夜には脱水症状で誰も動けなくなって終わりになる。僕は、アーシャちゃんが復活しなくても動くよ。せめて、あそこに設置された爆弾を解除しなきゃ」


 体育館の中心、周囲に誰もいないそこには圧力型の炊飯器が何故か置いてある。

 ただ、中身が米飯ではなくて、爆弾というのが大きく違うが。


「……マモルくん。君は強いなぁ。ぼくは、動きたくても怖くて動けない。いくら口で復讐をしゃべっても動けないんだ」


「僕だって、怖くてたまらないよ。でもね、理不尽を押し付ける、人を楽しんで殺すような奴らは許せないし、アイツはアーシャちゃんの仇でもあるんだ」


 僕は、震える手をユウマくんに見せる。

 僕が勇気を振り絞れているのは、腕の中に居るアーシャちゃんの暖かさを守りたいから。

 そして……。


「宗方先生はね、最後に僕らの方を見て何か話したんだ。たぶん、貴方達は生きてとかだと思う。だから、その願いを叶えなきゃ絶対にダメなんだ!」


「……先生。ぼくは、ぼくは……」


 僕の小声の問いかけに、ユウマくんは静かに泣く。


「ふん! 某、復活でござる。義を見てせざるは勇無きなり! 先生の敵討ち、皆を守るために行動開始するでござる!」


 ユウマくん、一瞬顔を下げてから上を見上げる。

 そして先生の遺体の方を見てから、僕に振り返った。

 その表情は、先程までのか弱い少年ではなく、戦う男の物だ。


「それでこそ、ユウマくん。まず、敵兵の正体を考えよう。僕が見た感じ、雇われの様だけど、アイツ。ヤーコフ以外は半分素人じゃない?」


「某も同じ意見でござる。おそらく闇バイトの一環で、銃を撃てるとかで雇われたでござろう。ただ、外のパワードスーツ乗りとメカニックはプロに違いないでござる。最新ではないとはいえ、実戦配備型でござるし」


 落ち着いたユウマくん。

 早速、その知識と観察眼で、僕が気が付かない部分まで敵を見抜いていった。


 ……そうか、パワードスーツのオペレーターなんて、いきなり動かすのは難しいものね。


「爆弾でござるが、圧力釜爆弾の一種でござろう。釘を沢山入れて殺傷力を上げたタイプに見えるでござる。兵が一度足を引っかけて動かしていたから、触ったりゆっくり動かした程度では爆発はしないでござろう」


 落ち込んでいた間も敵兵の動きを観察していたユウマくん。

 僕が一番懸念していた爆弾についても、既にヒントを掴んでいた。


「アイツら、慌てて爆弾は絶対に持ち上げるなとか言っていたでござるから、一旦起動すれば床から持ち上げれば自爆するタイプに見えるでござる」


「だったら、ゆっくり滑らせれて動かせば大丈夫かな? 確か体育館倉庫にあったよね、床用のワックス」


 僕は夏休み前の大掃除の際に、体育館の床にワックスをかけさせられたのを思い出していた。


 ……イタズラでワックス塗り過ぎた床で転んでいた子がいたものね。


「カーリングの要領で滑らせて、運動場にいる敵にぶつけたら一石二鳥かな?」


「うふふ。マモル殿は斜め上でござるな。敵兵がぎゃふんとするのが見えるでござる」


 僕たちは朝から初めて笑いあった。

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