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第2話 僕と彼女、出会いは運命。

「ここが僕の新しい世界、天馬学園なんだ!」


 天馬学園。

 通称、ペガサス学園。

 中高一貫教育の私立進学校だ。


 ……校章にもペガサスが入っているものね。


「おはよう!」

「おはようございます」

「おはようございますですわ」


 少し高台にある広大な敷地を誇る学園。

 校庭に咲いている桜が満開を越えて、散り始めになっている。

 花吹雪の中、多くの生徒たちが校門に入っていく。


 ……皆、中学部からの子達かな。


 挨拶をしあう子達。

 その制服は真新しい感じがするので、多分僕と同じ高等部新入生。

 でも、お互いに顔見知りに見えるから中学部からの友達同士だろう。


 ……僕みたいに高校からの編入生は、そんなに多くないからね。


 どちらかといえば、女の子の方が多い印象。

 元々は女子高だったらしいけれど、昨今の少子化から十数年前より共学になった。

 僕が受験を決めたパンフレットには、そう書かれていた。


 他の子達は友達と話し合う中、僕は一人クラス分けが書かれている掲示板に進む。

 そして僕の個人番号が書かれた場所を探した。


「えっと。1052は……。A組か。あ、ごめんなさい」


 自分の番号を探す子達で押し合いになっている掲示板前。

 僕は自分の番号を見つけたが、誰かに押されてしまい何か柔らかいものにぶつかってしまった。


「い、いえ。こちらこそ、ごめんなさい。混んでますし……あ!」


 僕がぶつかったのは、僕よりずいぶんと小さい女の子だった。

 僕の目線からは頭頂部と綺麗な髪は見えるけれども、顔までは見えない。


 ……僕の肩口だから150センチ少々かな。でも、綺麗な髪だよね。リボン付きのバレッタも可愛い……。あれ、姿や声に覚えがあるぞ?


「え!?」


 顔を上げ、僕を見上げて謝る女の子の顔を見て、僕はびっくりした。


「君は今朝の!」

「そういう貴方は……。今朝は助かりました。本当にありがとうございました」


 ぎゅうぎゅう詰めの掲示板前、器用にぺこりと上品に礼を言う美少女。

 お嬢様な彼女に、僕は再びドキンとしてしまった。


「と、とりあえず、今はここから出ましょう」

「そ、そうですわね」


 押し合いへし合いになっている掲示板前から、僕は小さな彼女を庇って校庭まで一旦移動した。


「また、ありがとうございます。そういえば、お名前を……」


 可愛い声は、鈴を転がすように聞こえるというらしい

 彼女の声は、まさしく鈴の音。

 可愛さの中に、何処か(なかな)さを感じてしまう。


「あ、あ、僕は……」


(ひいらぎ)さん、今年もクラス一緒なのね? あれ、その男の子は?」


 僕がドキマギしながら名乗ろうとしたとき、彼女の友人らしい女の子達が集まってきた。


「皆様、今年も宜しくですわ。この方は、今朝から何回も助けて頂きましたの。お、お名前は……」


「ぼ、僕はマモル、植杉 護と言います」


「植杉さん、わたくしは柊 愛理紗(ありさ)と申しますの。同じクラスなのですね。一年間、宜しくですわ」


「は、はい!」


 まるで花が咲くような笑顔、それを見て僕はノックアウトされそうになった。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「この天馬学園、スクールモットーが『天に駆け未来に飛躍する』となっております。若き貴方がたが世界に飛び立っていく為の学舎(まなびや)でありたいと思っておりますわ。ですので……」


 入学式、おばちゃまな校長先生が体育館の演台に立ち、長々と演説をする。

 僕達、新入生にとっては意味不明、かつ興味の薄い話。

 座って聞いているので、新入生の中には居眠りを始める子達もいる。


 ……柊さんっていうんだあの子。なんか気になるけど、僕って惚れっぽかったっけ?


 柊さん、彼女は僕と同じクラスになった。

 身長が低めだから体育館にクラス別に設置された折り畳み椅子でも、だいぶ前の方に座っている。

 なので、僕の座った位置からは、彼女の綺麗な髪とバレッタ、そして背筋がピンと姿勢よく伸びた後ろ姿しか見えない。


「……ということで、皆様。素晴らしい青春をわが校で送ってください」


 校長先生の話を半分聞き流しながら、僕はバラ色になるはずの高校生活をイメージした。


 ……彼女とか出来たら良いなぁ。まさか、あの子と……なんてあり得ないか。


  ◆ ◇ ◆ ◇


 教室で指定された席に座ってのホームルーム。

 僕の左隣の席には、どうしてか柊さんが座っていた。

 横目でみると「凛とした佇まい」という雰囲気なのか。

 微笑を浮かべて先生の話を聞いている。


「はい、皆さんお静かに。今から最初のホームルームを始めます。わたしは貴方がた1年A組の担任をさせて頂きます【宗方(むなかた) 亜澄(あすみ)】と言います。専門は保健体育です。先に言っておきますが、わたしは保健体育の授業を女子にしか行いませんので、期待している男の子たちはごめんなさいね」


「えー!」


 まだ若い女性教師が僕たちのクラスの担任。

 お茶目な感じで、早速に男子生徒たちを揶揄(からか)っている。


「皆さんは、ここ天馬学園で高校生活をスタートします。一部の方は高等部からの編入。元が女子高なので普通の高校とは少々勝手が違う事も多いとは思いますが、一年間宜しくね。では、早速自己紹介から始めましょう。最初は、わたしから。専門はさっき言った通り保健体育。年齢は26歳、独身で彼氏は募集中だけれども、好みは年上なので残念でした。次は向かって左前から席順にお願いします。最初は加藤くんから」


「はい。僕は……」


 それから各自の自己紹介が続いた。

 女子生徒が多く、大半が中等部からのエスカレーター。

 男子生徒は、僕の様に高等部からの編入が多い様だ。


「では、柊さん」


「はい……。わたくし、柊 愛理紗と申します。中等部からこの学園に通わさせて頂いていますの。身体があまり丈夫ではないので、休みがちになり皆様にご迷惑をお掛けする事もあるかと思いますが、宜しくお願い致しますわ」


 柊さんの自己紹介を聞いて、僕は、ますます彼女の事が気になった。


 ……本当にお嬢様なんだなぁ。あれ? 元気そうに見えるのに病弱なんだ。何か持病でもあるのかな?


「では、次は植杉くん。ん、植杉くん!? お話聞いてますか!?」


「は、はい! すいません」


「ははは」


 僕は上の空になって柊さんの事を考えていて、自己紹介が自分の順番になったのも気が付かなかった。

 クラス中に笑みがこぼれた。


 ……僕、かなり重傷だなぁ。これって一目惚れなのかな?

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