第19話 イチャコラの続き。日焼け止めの塗り合いっこ。
「ねえ、ちゃんと日焼け止めを塗って頂戴ね。わたし、日焼けできないから、すぐに真っ赤になっちゃうの」
「は、はいです!」
二人して絞られた後、僕は夏の海辺な日差しを避けるテントの中。
何故かアーシャちゃんの背中に触っている。
と言っても先程とは違い、健康的な行為の為に合法的に触っている。
……自分で塗れない部分に、日焼け止めを塗ってあげているだけなんだけどね。
先程、アーシャちゃんの肌にじっくり触れたおかけで、背中を触るくらいなら動揺もしなくなった僕。
今は、合法的に触っても良い肌の感触を十分に味わっている。
「ん! くすぐったいのぉ」
「あ、ごめんね」
「某、感激でござる!」
「ちゃんとムラなく塗ってよね、加藤くん」
僕たちの横では、セクシーなカットが入った黒いワンピース水着な宗方先生の背中に日焼け止めをユウマくんが塗っている。
憧れの年上美人の背中に合法的に触れるのは、最高のご褒美であろう。
「マモルくん。丁寧に塗ってくれるのね。くすぐったいのは困っちゃうけど」
僕は内心のドキドキを気が付かれないように、アーシャちゃんの背中に日焼け止めを塗っていた。
こと、背中でもブラ部分に隠れた部分を触る際やお尻に近い部分に触る際には、最大級のドキドキだった。
「ありがと。じゃあ、今度はわたしの番ね。さあ、マモルくん、ここに寝そべってね」
全部塗り終えて一安心したかと思うと、今度はアーシャちゃんがニヤニヤ顔で待ち構える。
どうやら、彼女も僕の背中を合法的に触りたいらしい。
「マモル殿は羨ましいのでござる。某の背中は……」
「ユウマおにーちゃん。先生なら、ライフセーバーの人をナンパにいくって言ってたよ?」
いつのまにか先生に逃げられてしまってションボリなユウマくん。
「おにーちゃん、可哀そう。良かったらアタシが背中に日焼け止めぬってあげよーか?」
「おお! ミワ殿。気を遣わせてすまんでござる。流石は我が親友の妹君。幼いながらも出来た女子でござる」
「へんなユウマおにーちゃん。おかしいね」
ケラケラ笑いながら、案外と丁寧にユウマくんの背中を触っているミワ。
……ミワってば、案外とユウマくんに懐いているんだよね。しゃべり方、おかしいって最初は笑ってたけど、話題も案外と豊富だし、女の子扱いは丁寧だもん。
「ミワちゃん。そういえば水着可愛いの褒めて無かったよね。マモルおにーちゃんは、妹さんを褒めなきゃ!」
「あ、すっかり忘れてた。馬子にも衣装、あ、冗談だから。赤いワンピース水着、似合ってて可愛いよ」
「マモルおにーちゃんのばかぁ! ユウマのおにーちゃんの方が優しいもん!」
僕たちは笑いあいながら、日焼け止めを塗り合った。
なお僕たちがふざけ合っている間、母さんは笑いながらナンパに来る男性共をあしらってました。
……母さんってば、今でもアラサーくらいに見える可愛い若奥さん風だものね。
◆ ◇ ◆ ◇
「マモルくん、手を離さないでよね」
「はいはい」
「ハイはひとつなの! あ! ぜーったいに離さないでよね」
波打ち際、足が付く辺りで僕とアーシャちゃんは水遊び。
あまり泳ぐのが得意じゃないアーシャちゃん。
僕の手をしっかりと握ってバタ足。
……運動神経抜群なアーシャちゃんでも泳げないんだ。やっぱり生まれたところに海とかプールなかったんだろうか?
「ユウマおにーちゃん、すっごいね。コツがあるの?」
「砂での構築物でござるが、適度な水分と押し固めるところにコツがあるのでござるよ!」
ふと、砂浜に視線を向けると「灰被り姫」に出てくるお城を砂で作っているユウマくんと感動しているミワ。
実に微笑ましいと思う。
「ふぅ。わたし、泳ぐの上手くなったでしょ?」
「確かに少しづつはね」
顔を水に付けるのすら嫌がるレベルのアーシャちゃん。
小学生から泳ぐ日本と違い、彼女の生まれた国では泳ぐほどの水を確保するのも難しかった可能性が高い。
……名前から連想するあの辺りなら、降水量も日本の半分くらいだしね。
その後もアーシャちゃんの手をぎゅっと握って、僕は幸せな時間を過ごした。
「マモルくん! ぜ、絶対に手を放しちゃだめよ? ダメなんだからね」
「はいはい!」
「皆、冷たい飲み物買ってきたから飲みましょ?」
「そこの若者共、年長者だけに働かせたらダメよ?」
母さんと先生がペットボトル入りのスポーツ飲料を沢山抱えているのが見えた。
「アーシャちゃん。一休みしようか」
「うん!」
僕はアーシャちゃんの手を握ったまま、母さんたちの方へ歩く。
「あら、マモルくん。わたしの手を意識せずに繋げるようになったのね」
「あ! そういえば、さっきからの繋がりで自然に手を繋いじゃった。ご、ごめん、イヤなら手を」
僕はアーシャちゃんの指摘でびっくりする。
これまで手を握るのすら躊躇していたのに、今はアーシャちゃんと手を繋いでいたから。
「ううん。他の人なら嫌だけど、マモルくんなら良いよ」
僕が手を離そうとするも、逆にギュっと小さな手で握り返してくる。
そして、僕だから良いのと微笑み返してくれた。
「あ、ありがと!」
僕は日焼け以上に顔が熱くなりながらも、アーシャちゃんの手を握り返した。