第13話 仮面が剥がれた柊さん。過去の罪に苛まれる。
「そうなの! マモルくんったら、優しいけどピンボケでおかしいのよ」
「ウチのマモルは、何処か変だものね。母親のわたしでも、時々そう思うもの」
「おにーちゃん、筋金入りのオタクだもんね」
「ママ、ミワ。あんまりマモルをいじるのは良くないよ。ほら。マモルは、そこで拗ねてるじゃないか」
「良いよ。母さんやミワと柊さんで仲良くしてたら……。僕の事は忘れてても……」
妙に意気投合している母さん、ミワと柊さん。
世の中では嫁と姑、小姑とは相性最悪とも言うらしいが、今のところ我が家では大丈夫らしい。
……ん! あれ? 僕、柊さんの事を嫁って?
すっかり盛り上がって話し込んでいる3人。
どんどん時間が過ぎ、夕方を迎えようとしていた。
「あ! こんなお時間までお話してしまい、申し訳ありません。わたし、そろそろ……」
「アリサちゃん、帰っても一人で夕ご飯でしょ? だったら、今日はウチで一緒に食べましょうよ。そして、お風呂にも入ってお泊りしましょ? 明日は日曜日だから問題無いでしょ?」
「そうなの! おねーちゃん、一緒にお風呂入ろよぉ! 寝るのもアタシと一緒なの!」
帰ろうとする柊さんの手をがっちり握り、逃がさないとにんまりな顔の母さん。
妹のミワもすかさず柊さんに抱きつき、逃がさない構え。
……もしや、最初から計画的?
「で、ですが、着替えとか……」
「そこは安心してね。こんな事もあろうかと、担任の宗方先生に連絡してアリサちゃんの着替えを持ってきてもらっているの!」
母さん、何処からかピンク色のスポーツバックを取り出し、柊さんに渡す。
カバンの中身を見て、引きつった笑みを浮かべる柊さん。
……先生までグルかよぉ! いつのまに母さん、宗方先生と接触していたんだ?
「で、では、お言葉に甘えまして……」
「ええ、どうぞ我が家を堪能してね」
「わーい! おねーちゃん。アタシ、嬉しいなぁ!」
「柊さん、すまない。ウチのママ、とことんやっちゃうから。前からもう一人女の子が欲しいって思ったところにキミみたいな飛び切り可愛い子が来ちゃって、逃がさないってなっちゃったんだ。ママ、ミワ。くれぐれも、無理やりはダメだぞ?」
困って苦笑いモードの柊さんを前に嬉しそうな母さんとミワ。
それを見て、父さんは再び柊さんに頭を下げた。
「い、いえ。わたしの様な者を排除どころか可愛がってくださるのは嬉しい事ですの。な、慣れていないから、どう反応して良いのか分からないのです、お父様」
「お、お父様かぁ。これは威力絶大だなぁ。マモル、お前の気持ちが良く分かる。柊さんを大事にするんだぞ?」
恥ずかしそうに笑みを浮かべながらお父様と呼んでもらった父さん。
赤面して「撃墜」された模様。
僕を肘で突きながら、柊さんを守れと言ってくれる。
「うん。父さん、母さん、ミワ。柊さんを受け入れてくれて、ありがとう」
……父さんも撃墜か。まー、良いか。柊さんって外見は元より内面が可愛いんだよね。
僕は家族に、柊さんを真実の姿を知ってでも受け入れてもらえたことを感謝した。
◆ ◇ ◆ ◇
「さあ、もっと食べないとね。アリサちゃん、細いからもっと太らなきゃ!」
「あ、ありがとうございます」
母さんに家族団らんへと半ば無理やり引きずり込まれた柊さん。
夕食準備を手伝いたいといってミワと一緒に台所に行ったものの、包丁で切るくらいしか出来なかったらしい柊さん。
これから練習したら良いと母さんに慰められていた。
「大好きな人に喜んでもらえるのは嬉しいからね。わたしも料理は結婚してから練習したの。パパの方が最初は上手かったんだけどね」
父さんは昔から野外活動が好きで、キャンプとかでは今でも料理を作ってくれている。
父さん曰く、母さんは最初料理が下手で苦労したんだとか。
「おねーちゃん。今度はアタシと一緒に作ってみようね」
「う、うん」
元気いっぱいのミワと違い、何処か表情が硬い柊さん。
何かあったのかと、僕は心配してしまう。
……やっぱり、無理やりウチに連れてきたのは不味かったのかな?
「どうしたの、柊さん。さっきから様子がおかしいけど?」
「……植杉くん。わたし、こんなに幸せで良いのかな?」
僕の問いかけに、ポツリと呟く柊さん。
大きな瞳から、涙もポロリとこぼれた。
「どうしたの、アリサちゃん? 食べられない物でもあったの? 無理やり連れてきたのが悪かったの?」
「柊さん、無理は禁物だ。イヤならイヤだって言ってくれても、俺達は怒るなんて事は無いんだ。だって、コッチが無理を言ったから……」
「おねーちゃん。ごめんなさい。アタシ、おねーちゃんの都合を考えないで無理言っちゃったの」
柊さんが泣き出しそうなのを見て、母さん、父さん、ミワは慌てて謝る。
母さんは席から立ち上がり、柊さんの側に歩み寄った。
「……。いえ、わ、わたしが……。わたしが悪いんです。本当なら、わたしにはこんな幸せに預かる権利なんて無いんです。わたし、沢山の命をこの手で奪いました。わたしの手は血まみれ。間違っても幸せになったらダメなんです。わたしの代わりに死んでいった、あの子達にも悪い……。う、うわぁぁ!」
突然、号泣する柊さん。
僕は硬直して動けなかったが、母さんは泣き出した柊さんをギュッと抱きしめた。
「アリサちゃん。馬鹿な事を言っちゃだめよ? 貴方には幸せになる権利は十分あるわ。貴方が命をかけて戦ってくれているから、わたし達は何も知らずに幸せに生きてきたの。わたし達は貴方に守ってもらってくれていたのを感謝こそすれ、軽蔑なんて絶対にしないわ」
母さんはさめざめと泣く柊さんを逃がさない、絶対に守るという様子で暖かく抱きしめていた。
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