第16話(累計 第115話) 最終決戦その6:敵基地攻略作戦。敵も黙ってはいない。
「ここが敵の本拠地ですか、隊長」
「ああ。先行した偵察部隊からの情報だと間違いない。ただ、先程から偵察部隊との連絡が途絶している」
僕らは秘密都市「クラスノヤルスク35」内にある軍事施設が見通せる場所まで来た。
途中、僕らも戦闘ドローンや戦車部隊に襲われたが、皆の活躍で難なく撃破した。
……随伴歩兵居なくても、戦闘ドローンを従えた最新型戦車に無人銃座を追加してたから、それなりには手ごわかったけど。でも、上手く戦車の上に飛び乗って上から高周波長剣でエンジン刺したら終わりだよ。
目的地の基地は、周囲を鉄条網と多重監視システムに囲まれている。
施設内のところどころには鉄塔があり、自動無人銃座も見える。
よく見れば、ビルの屋上にはCIWSコールチクも設置されていた。
……基地内にも四足歩行タイプの戦闘ドローンがいっぱいだよ。
「Counter-RAMも数機見えるでござる。これ、さっさと空爆した方が早く無いかでござるよ、隊長殿」
「ああ、俺もそう思う。ヤバい気配がビンビンする。施設内には入りたくはないが……」
ダニー隊長は周囲に待機している部隊長と話し合っている様だが、空爆や砲撃要請が上手く通らない。
上層部は『あの方』がいる施設の必要以上の破壊を望んでいないのかもしれない。
……施設内に小型とはいえ原発があるから、そこを破壊したくないのは理解するけど。これだけ近い位置にレーザー照準できる味方が多数いるのなら、スマートバンカーバスター弾で目的の建物だけ破壊できるでしょ?
「ちきしょぉ。空爆や砲撃は出来ないって回答がコマンドポストから帰って来やがった。陸戦部隊だけで基地内を制圧しろってさ」
「早くも『あの方』撃破後の技術を奪い合いでござるか、各国は? あのような悪魔の所業。正直、某はいらぬ技術と思っているでござる」
ダニー隊長は空爆や近接航空支援、榴弾砲による砲撃支援が司令部によって却下された事に怒る。
普通、地上部隊の支援行動として空爆などは普通に行われるし、今ならスマート爆弾により数メートル誤差での攻撃が可能。
レーザー照射による補正があるなら必中距離。
それでも許可が出ない=施設の必要以上の破壊を上層部は望んでいない。
『あの方』に使われている技術、データーを駄賃代わりにどの国も欲しがっているのだ。
その為のコストが、僕ら兵士の命と知っていても。
「ボクもユウマの意見に同意。そりゃボクもカーシャちゃんとは、も一度ゆっくり話したかったけど、アレ本当にカーシャちゃんだったのか。今になったらボク怪しいと思うんだ」
「そうよね。声や記憶は間違いなくカーシャちゃんなんだけど、何処か違う気はわたしもしたわ」
『あの方』の中に居るだろうカーシャ、エカチェリーナさんの事を良く知る二人。
カーシャは本当のカーシャじゃない気がすると共に思う。
「某の仮説通りなら、『あの方』の中に居るのはスキャニングされた脳構造と記憶の一部であって、そこに宿った魂でも本人でもないでござる。それこそ、残留思念、怨念でござる。早く解放し、あのような悪魔な装置や技術は永遠に封印するでござるよ」
「ウチ。難しい事は一切分からへんけど、こんな寒いとこは早く片付けて家に帰ろ? 暖かいオデン食べながらコタツでぬくぬくしよ?」
「俺もリーちゃんと同意見。こんな地獄から早く帰るぞ。とりあえず、他の部隊が突入する。俺達は後方からの支援が仕事だ」
僕らを少しでも戦闘から遠ざける為、他の部隊のお兄さん達が先行することが多い。
そして少なからず犠牲が出るのが、僕は嫌だった。
……でも、僕が行っても勝てる保証も無いか……。
血が頭に上った僕は突撃していく傾向があり、背中に隙が多い。
これまでは敵が小数かつ味方の援護があったから無事だったが、ずっと同じ手が通用するわけでも無い。
……ニューバビロンシティの時は、僕ら以外に戦える人が居なかったから、しょうがなく戦わせてくれたんだけどね。
「はい。皆さん無事に行ければ良いのですが……」
米軍海兵隊らしきパワードスーツM4及びロシアのパワードスーツYK-98 プラウダーが遮蔽物を利用しながら基地内に進行していく。
……ミハイルくんが乗っている機体YKー102の一個前の型。重装甲と戦闘稼働時間の長さが自慢だったっけ?
手際の良い動きで鉄条網を無効化し、基地内への進行ルートを確保していくお兄さん達。
ハンドサインをしながら一気に基地内に侵入、高速展開をしていくが……。
「やはり侵入はバレバレか!」
基地内スピーカーから警報音が鳴り響く。
そして鉄塔上にある銃座の重機関銃が火を噴きだす。
四足歩行型戦闘ドローンも蜘蛛みたいな動きで、侵入部隊に迫る。
「隊長!」
「ああ、これは黙ってはいられんな。支援砲撃開始! まずは鉄塔の銃座を黙らせるぞ」
「了解!」
僕は支援AIの指示通り、一番近い銃座に照準を合わせライフルの引き金を引く。
銃口から飛び出した徹甲焼夷榴弾は音速の数倍の速度で飛び、銃座を覆う遮蔽板を容易に貫通する。
他の部隊の人の攻撃も同じ銃座を襲う。
僕は、銃座が止まるまで銃弾を叩き込んだ。
……早く止めなきゃ犠牲が増えちゃう。
他の銃座も他の人達の攻撃で沈黙した。
また地上を這う攻撃ドローンの大半も撃破できた。
「よし。じゃあ、俺達も基地内に……」
デニー隊長の突撃命令が出る瞬間、基地内で凄まじい閃光が見えた。
そして閃光が終わった後、基地内に侵入していたパワードスーツ部隊の大半は文字通り『消え』ていた。
「今のは荷電粒子ビームでござる! まさか!」
「そんな馬鹿な! ボクが居た頃には、まだ実用化されてなかったぞ!」
ユウマくんとミハイルくんが驚愕の声を上げる。
彼らの視線の向こう。
そこには銀色、ステンレスっぽい色で光り輝く多脚戦車が居た。




