第14話(累計 第113話) 最終決戦その4:怒りに燃える僕。目の前の敵を殲滅する!
「はぁはぁ」
無理やりの空挺降下を、なんとか成功させた僕。
大きく息を付き、しばし膝をつく。
しかし、滑走路には多数の四脚歩行型の小型ドローンたちが機銃を構えて待ち構えていた。
そして、ドローンに囲まれる僕。
OSからはロックオン警報とそれぞれの敵からの射撃予想線が提示される。
「僕を邪魔するな―!」
怒りに燃える僕は、機体の右機械腕に持たせた十二.七ミリライフルで銃撃をしながら高速機動を開始する。
ローラーで火花を上げながら滑走路上を疾走。
敵を蹴り飛ばし、撃ち倒して前に進む。
「もう、誰の命も落とさせない!」
僕が目指すは、飛行場を守るCIWS。
アメリカ軍で使用しているファランクスよりもかなり大型。
ミサイルと二基の大型ガトリングガンを装備し、まるでロボットみたいな恰好の奴を狙う。
「マモル殿! それはコールチクでござる! レーダーユニットごとふっとばすでござる!」
「了解!」
ユウマくんの支援情報で、敵の概要が分かる。
左右に二発ずつの四連装な対空ミサイル、また左右に三十ミリガトリング砲を一門ずつ装備している重武装。
「はぁぁあ!」
僕は、機体を疾走。
雑魚な四脚ドローン共を蹴散らしてCIWSを目指す。
「オマエ、邪魔!」
切りかかって来た無人タイプパワードスーツも、左手で抜き払った長剣で居合気味に腰から真っ二つに切り裂く。
「壊れろー!」
なおも空に銃撃を繰り返していたCIWSに、僕は高周波長剣を突き刺した。
「つぎぃ!」
目の前のCIWSが火花を散らしながら沈黙したのを確認した僕。
滑走路の更に反対側、同じく空中に砲撃を繰り返すCIWSに視線を向ける。
「マモル殿。無茶は禁物でござる。拙者らが到着するまで待つで……」
「マモル! そんな状態で連戦は危険だ。一端、後方に……」
「マモルくぅん! わたしが着くまで待って!」
「もう待っていられないんだ、僕! これ以上、誰にも死んでほしくないんだよぉ!」
僕は皆の制止を聞かず、目につく敵を殲滅していった。
◆ ◇ ◆ ◇
「マモル。俺が言いたいことは分かっているよな?」
「ごめんなさい、ダニー隊長。僕、また暴走してしまいました」
今、僕らは空港に無事到着した他部隊と合流。
機体を降りて、補給と応急修理を受けている。
降下中に邪魔になるステルス防弾マントも再装備だ。
「マモルくん。貴方の怒りは分かるの。でもね、貴方一人で抱える問題じゃないわ。わたし達全員で戦うの」
「マモルはん。温厚そうでも、キレたら怖いんよ。無理をチートで力押しで通す癖あるんは気をつけなあかんよ? ウチも偉そうに言えんけどな」
二人の美少女からも叱責を受けて小さくなっている僕。
あの後、僕は大暴れ。
ライフルの銃弾が尽きるまで、いやその後も長剣による接近戦をとことん挑んで、沢山の敵を殲滅した。
無我夢中だったので、もしかしたら有人機も倒しているかもしれない。
襲ってくる敵を倒す事は、問題はない。
だが、暴走して必要以上の殺戮をするのでは話が違う。
「まあまあ。皆、これ以上マモルを攻めてもしょうがないよ。実際、マモルがCIWSや敵機を多数倒してくれたから、こっちの被害は減った訳だし。情報を提供したボクにも想定以上の敵だったのには、責任あるんだ。ただ、マモル。もう少しボクらの事も信用してね」
「そうでござるな。いくら『作戦」における被害を想定していたとはいえ、現実に目の前で人が死ぬのを見るのはキツイでござる」
反対にミハイルくんやユウマくんは、僕を慰めてくれる。
実際、ミハイルくんは僕が着地した直後に降下ユニットを強制パージして着地。
僕の背後で、僕が撃ち漏らした敵を殲滅してくれていた。
「おいおい。元敵や実戦初めての坊やらが、マモルのフォローかよ……。マモル、お前はいつも人助けに走るが、お前の命自身も大事な命だってのは分かっているよな。それと、いつもチートが通用するとは思うなよ?」
「はい……。僕、自分がチートなんて思っていないんですが、そんなにチートですか? ユウマくんやアーシャちゃん、ミハイルくんの方がチートだと思うんですけど? 本当にチートだったら、もっと多くの命が救えたはず……」
「自覚無いのが問題やね。ウチから見たら誰も彼もチートやで?」
皆、僕がチートというが僕にその自覚は無い。
体術は爺ちゃんから教えてもらったのを使えているだけで、爺ちゃんには絶対に勝てない。
射撃なんてAI補正無きゃ絶対に当たらないし、頭脳も平均より少し上くらい。
実戦技能ではダニー隊長にも、ミハイル君にも、アーシャちゃんにも勝てない。
だからこそ、もっともっと強くならないと皆を守れない。
そういう思いで頭の中が一杯。
でも、実際には助けられない命が沢山居た。
失われた命に対し何もできなかった後悔の思いで、僕は顔を上げられない。
「マモルくん。いつも、わたしに話してくれてるよね? 一人じゃないって。それは貴方も同じよ?」
アーシャちゃんが小さく暖かい手で僕の両手を握ってくれる。
ふと、顔を上げて僕はアーシャちゃんの顔を見た。
そこには暖かい笑顔があった。
また周囲を見ると仲間達はみんな苦笑しながらも、僕を見守ってくれている。
「こういうのは英雄症候群のとは少し違うが、自分を少しは大事にしろ。そして他人と話し合え。全部、自分で抱え込むな。まあ……、多くの仲間が助かったのは事実だ。そこは自慢して、今後は自重しろ!」
「……はい、隊長!」
僕は涙をぬぐい、皆に頭を下げた。
 




