第11話(累計 第110話) 最終決戦その1:敵本拠地への強襲!
「じゃあ、最終確認打ち合わせをするぞ。 最初に言っておく! 全員、命を大事にして敵を倒せ!」
「了解!」
「Да-с!」
「はいな、兄ーちゃん!」
「了解でござる」
「はいはい」
僕たちは今、一路『あの方』が潜む敵本拠地を目指す。
先行する電子戦仕様なEA-18G、SU-37。
そして同行するF-35やSU-35らに護衛されて、シベリアの上空を輸送機で飛行中だ。
行く先はロシアの奥深くシベリア中央部クラスノヤルスク地区にある秘密都市「クラスノヤルスク35」。
ソ連時代に核兵器開発をしていた秘密都市で、ロシアになって以降は兵器開発用の原発も廃止され、放棄状態「だった」。
「でも、案外と早く敵の本拠地が分かったよね」
「ボクが情報流したからに決まってるじゃん!」
「ミーシャだけじゃなくて、わたしも知ってること話したもん」
「それらを某が纏めたからでござる。電力に関しては自己所有の原発で誤魔化せるとおもったでござろうが、ネットへの高速回線だけはどうしても繋がなくてはならぬでござるからな」
「ウチ、全然分からんのやけど?」
「リーちゃん、それは隊長の俺も分からんから気にするな。しかし、ユウマ。これが初実戦になるが大丈夫か?」
「大丈夫でござる。なに、皆の後からゆっくりついていくでござるよ」
輸送機による移動中は暇だから、自由に話し合う僕ら。
全員、降下準備されたパワードスーツのコクピットにいる。
黙って緊張しまくるよりはマシだし、今回は日本、アメリカ、EU、ロシアが協力した国連軍主体の軍事作戦。
本来、僕らみたいな子供が参戦すべき戦場では無いが、僕らは無理やり「理由」を作って作戦に参加した。
「でもボクみたいな元敵を案内役に使うなんて、作戦本部も大胆だねぇ」
「それ、当の本人なキミが言う? 僕らの苦労を忘れないで欲しいんだけど?」
今回の作戦においてキーなのが、敵の本拠地である「クラスノヤルスク35」を詳しく知るアーシャちゃんとミハイルくん。
二人が育った秘密組織「Тайное Братство」。
子供らを人体改造し、優秀な兵士やスパイを生み出す極秘プロジェクトだったが、存在が国内にもバレないように国内の秘密都市を拠点とし、数カ月単位で移動したそうだ。
その中で、二人は今回の秘密都市「クラスノヤルスク35」にも短期間ながら滞在した事があるそうで、ある程度の土地勘があるとの事だ。
……今なら衛星写真である程度は分かるけど、それでも土地勘があった方が良いものね。
衛星からの赤外線映像等で、無人の放棄都市のはずなのに原発が稼働している事。
都市に隣接する飛行場に輸送機が頻繁に送られ、物資、兵器が輸送。
更にはなんと最新鋭の戦闘機や戦車までが廃棄された秘密都市に多数出入りしているのが確認されている。
……これがロシア軍からは離れた独自行動なんだから、大変だよね。飛行場にも防空システムが導入されてるらしいし。
ロシア本国は、軍内で『あの方』主導による謀反が起こりつつあると判断。
既に幾度も秘密都市に精鋭を送ったものの、全部隊が音信途絶。
核兵器や空爆による殲滅も国内では行えない上、対外戦争で敗戦後国力が低下した現状で自国のみの解決を断念。
ロシアは恥を忍んで国連に救援を依頼した。
……国内とはいえ、国連に通知なしで大規模戦闘をすれば世界大戦の引き金になりかねない。最近でも、独裁政権末期な大統領の暴走で隣国に攻め入って大変な事になったからね。
ロシアは自ら起こした侵略戦争で敗れ、大統領の失脚、政権中枢部の崩壊を起こした。
今思えば、『あの方』が政権末期で健康問題も抱えていた大統領をそそのかして戦争を起こさせたのではないかとも思われる。
「もちろん、マモルやダニー隊長が頑張ってくれた事は分かっているよ。本当なら、いつ裏切ってもおかしくないボクをパワードスーツ込みで戦場に送り出してなんてくれないものね」
「分かっているのなら良いの、ミーシャ。わたし達でカーシャの悪夢を止めてあげようね」
「うん、そうだね。マモル、ボクを少しくらいは信用してね」
気楽げにミハイルくんは言うが、彼の乗る機体には自爆装置が取り付けられていて、彼の行動次第では強制的に自爆させられる。
「はいはい。背中任せるくらいには信用するから、闇討ちは止めてよね、ミハイルくん?」
「ボク、マモルには正々堂々戦って勝ちたいから、キミ相手に卑怯な事は絶対にしないよ。だって、そんな事をして勝ってもアーシャちゃんが悲しむだけだもん」
「俺もそうあって欲しいな。味方の自爆装置のスイッチを預かるのは、正直いい気分しないからな。かつての強敵が味方なら俺も安心だ。ミハイル、帰ったらもう一度模擬戦を申し込むぞ。これ以上、お前らに負けるのは正直癪に触るからな」
……ダニー隊長。僕やミハイルくんはおろか、最近だとアーシャちゃんにも模擬戦で負け越しだから、気にしているっぽいんだ。でも隊長が背中を守ってくれてるから、僕らは安心して戦えるからね。
「りょーかいです、ダニー隊長。貴方も決して弱くは無いですよ。ボクやマモルが更に強いだけですから」
「ミハイル殿。いくら真実とは言え、酷いでござるよ。あ、隊長殿。そろそろ敵の防空圏内にはいったでござる」
ダニー隊長が文句を言う直前、情報を開示するユウマくん。
彼の乗る機体は旧型M3ながら、情報支援や電子戦装備を満載。
リナさんの乗っているのと同じく操縦腕を機体内に入れ、背中から生える補助機械腕に多くの電子装備を持たせている。
「分かった。色々も文句も言いたいが、それは戦闘終了後にしておく。各員、絶対死ぬなよ!」
「了解!!」
こうして、僕らの最終決戦が開始された。
いよいよ開始された最終決戦。
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