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第9話(累計 第108話) オープンスクール! 僕は彼を学園に招待した。

「ようこそ、天馬学園へ。ミハイルくん」


「ふん! まあ、アーシャちゃんがどうしてもって言うから来てやったんだ。連れてきた以上は、ボクを楽しませてくれよ?」


 時は過ぎ、二月後半。

 今日は天馬学園オープンスクールの日。

 校舎が新しくなった学園にミハイルくんを、僕たちは連れてきていた。


 ……ここまでの準備、大変だったんだよねぇ。学園での事務に公安の仕事。更にはミハイルくんを一次的とはいえ連れ出す手続き。更にはアーシャちゃんの誕生日とか。


 アーシャちゃんの誕生日は一月後半。

 僕はアレクサンドルさんから色々と情報を収集し、彼女が喜ぶものを沢山準備した。


 ……ぬいぐるみ系が好みなのは、水族館でペンギンさんのぬいぐるみを買って嬉しそうにしてたから分かってたけどね。


 その後、バレンタインデーでの甘いひと時もあって、僕は存分にリフレッシュできた。


「ミーシャ。今日、貴方を連れ出すのにマモルくんがどんなに大変だったか。少しくらいはマモルくんに感謝してあげてよね?」


「はいはい、アーシャちゃん。ボクもそのくらいは分かってるさ。でもね、大好きなアーシャちゃんをボクから奪ったんだから、このくらいの悪口は許してよね」


 アーシャちゃんと年相応の幼い笑みで笑いあうミハイルくん。

 僕にとっては、この笑顔を見られただけで十分だ。


「マモルはん。本当にお人好し過ぎるで? 普通、殺し合いした相手をここまで喜ばせんで?」


「そういうリナ殿も笑顔でござるが?」


「う、ウチはダニー兄ちゃんと一緒やから、楽しいだけやん!」


「おいおい、リーちゃん。こんな場所で腕組んでくるなよぉ」


 リナさんは、隊長、ダニーお兄さんと一緒だから上機嫌。

 隊長も、リナさんの胸を押し付けるような行動に迷惑そうな顔を一瞬するが、目が笑っている。


「マモル殿、良かったでござるな。この笑顔が(それがし)も見たかったものでござるよ」


「うん。そうだね」


 僕はオープンスクールの企画を纏めていた時にアーシャちゃんから頼まれた事を思い出していた。


「あのね、マモルくん。ミーシャ、ミハイルくんに世界を、日本を見て欲しいの。わたし、日本に来て。皆と出会って、変わる事が出来たの。同じ機会をミーシャに与えて欲しいの。だから、今度のオープンスクールに……」


 灰蒼な眼をウルウルさせて僕に歎願してくるアーシャちゃん。

 そんな姿を見て微笑む雪野先生や父さん。

 僕は、無理だという言葉を飲み込み、


「何とかしてみるよ。先生、係長、協力お願いできますか?」


 そして各所との折衝により、今日のオープンスクールでミハイルくんが来れる様になったのだ。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「へぇ、この学校じゃ校舎は全部防弾仕様なんだ」


「どっかの誰かさんが撃ち合いしたってたからね。同じ事は二度とないと良いけれど、どんな場合でも対応できるように文科省とも相談したって校長先生が言ってたよ」


「マモルくん……。どっかの誰かってわたしの事かしら? そういえば、夜中の銃撃戦からでしたものね、わたしとマモルくんの関係は……」


 ミハイルくんを校内に案内する際の話題で、校舎が防弾仕様になっていると話すと、アーシャちゃんが僕をジト目で見てくる。

 確かに誰とも言わずにアーシャちゃんが原因と言えば良かったかもしれないが、今日は校外の人間も多くいる。

 迂闊な事は言えないのだ。


「あ、ご、ごめん。でも、周囲に他の人が居るのにアーシャちゃんの事を話すのは……」


「まあ、良いわ。マモルくんだから許してあげるの。因みにミーシャなら、どう攻める? ヤーコフ教官は講堂に皆が集まっているタイミングを狙ってきたの」


「そうだねぇ。バラバラになった生徒を捕まえるのは大変だから、多分同じ策に出るかな? でも、アーシャちゃんやマモルみたいなチートキャラが居たら勝てないよね」


 ……ミハイルくんまで僕をチート扱いなんてねぇ。僕ってチートなんだろうか? 爺ちゃんから教えてもらった技を使っているだけだよ? 僕よりはユウマくんとかアーシャちゃんの方が凄いって思うんだけど。


「もー、ミーシャったら褒めても何も出ないわ。あ、でも向こうでバザーの出店をやっているから、そこを奢ってあげるわ。マモルくん、さあ行くわよ」


「うん。さあ、ミハイルくん。一緒に行こう」


「しょうがないなぁ」


 僕たちは校舎から離れ、中庭でやっているバザーに向かった。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「あーあ。楽しかったぁ。日本の学校ってこんな事をするんだね。ボク、学園長やってたけど、全然知らなかったよ」


「あそこは普通じゃなかったからね。といって、こんなお祭りは文化祭とか運動会とかじゃなきゃ無いけどね」


「運動会は、わたしも楽しかったわ。あそこでなら手加減無しに運動能力を使えるんだものね」


 バザーでフランクフルトや焼きそば、綿飴とかを買った僕ら。

 今は中庭のベンチに座って休憩しつつ食べている。

 今日は二月なのに、まるで春みたいな陽気。

 校庭の梅の木も満開だ。


 ……真ん中にアーシャちゃんを挟んで三人掛けなんだ。


「ミーシャ。わたし、日本に来て日常を知ったわ。そして皆の日常を守る為に今は戦っているの」


「ボク、最初アーシャちゃんが話している意味が分からなかったんだ。ボクが全く知らない事言っているんだものね。で、一見弱気な事をいうから、『日常』とやらに汚染されて弱くなったとも思ったよ」


 ぽつぽつとお互いの事を話し合う二人。

 僕は黙って話を聞く。


 ……周囲に公安の人が結構いるなぁ。でも、まだ殺気の消し方が十分じゃないや。僕が気が付くんだから、二人とも承知の上なんだろうけど。


 今回、ミハイルくんが外出する条件として公安の監視下になること、そして逃げた場合は銃殺もありうると上は言ってきた。

 アーシャちゃんも僕も、銃殺の部分についてはやり過ぎといったが、凄腕のテロリストが逃亡したら被害がどれだけ出るか分からないと言われた。


 ……あと、逃げないように説得したら良いじゃないかと、父さんには言われてるけどね。


 なお、当の本人はこの条件を聞いてもニヤリとしただけで文句は言わなかった。


「だって本気で逃げる気なら、とっくの昔にこの施設には居ないよ、ボク。今ここには、衣食住に最高の娯楽があるんだ。ただ、行動の自由がないくらいで文句言わないって。ロシア時代に比べたら天国だもの。それに、ここに居たらアーシャちゃんとも逢えるしね」


 と、僕にも後から話してくれた。

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[一言] チート(英語)=カンニングの事。ズルをして利益を得る行為。 なろう小説における「チート」はほとんどの場合、神(またはそれに類する上位存在)からのギフトにあたる。 知識チートの場合、文明的上位…
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