第8話(累計 第107話) 校長先生のお願い。僕らは快諾する!
「貴方達。今日は無理を言って、ごめんなさいね。この後、訓練とかあるんでしょ?」
「いえ、校長先生。今日は機体の調整日なので、そこまで厳しい訓練は無い予定ですから大丈夫です」
「某は事情を既に聴いておるでござるが、あのミッションを開始するでござるか、校長殿?」
授業が終わった後、僕たち四人は校長室に来ている。
始めて来たであろうリナさんが、きょろきょろしているのは分かる。
しかし、アーシャちゃんが何処か落ち着かないのはどうしてだろう?
「柊さん、貴方にとってここは色々な思いがある部屋なのね。あの時は、貴方の事を怖がってごめんなさい」
「いえ、校長。あの時のわたしは、人殺しをなんとも思っていなかった兵士でしたから。血まみれで銃を持つ人間を怖がるのは普通ですわ」
どうやら学園を襲ったテロの際、校長先生を助けたアーシャちゃんが怖がられたらしい。
おばちゃんな校長先生は真摯に謝罪をし、アーシャちゃんもしょうがないと悲し気な笑みで返した。
「そ、それでも貴方は、あの時も今もわたくしが守るべき生徒。同じ過ちは二度と行いません!」
力強く宣言し、アーシャちゃんの手を握る校長先生。
ユウマくん経由情報によれば、テロのボスだったOBが収監されている拘置所に、校長先生は毎週通っているらしい。
自らの過ち、生徒を悪の道に落ちるのを防げなかった事を後悔し、今またアーシャちゃんが闇に落ちないようにしたいと思っているのだろう。
「校長先生。アーシャちゃんは、もう孤独では無いです。僕やユウマくん、リナさんが居ます。そして雪野先生や他多くの大人達も僕たちを見守ってくれていますしね。それでも、お心遣い。ありがとうございます!」
僕はアーシャちゃんの代わりに校長先生に感謝の言葉を向けた。
こうする事が正しいと思うから。
「マモルくん……。ありがと」
「マモルはん。時折、男前の言葉を吐くからたまらんなぁ。あ、アーシャはん、ウチはマモルはんを奪わんから安心するんやで」
「と、某らは大丈夫でござるから、話を進めるでござる、校長殿?」
何故かユウマくんが上手くまとめ、校長先生に話すよう促す。
「そうよね、加藤君。今回も各方面に事前折衝ありがとう。おかげで上手くいきそうよ。他のみんなにも説明するわね。宗方先生から四月の全日制復帰は聞いているかしら?」
校長先生が話すには、四月から全日制として復活する天馬学園。
学園各所で行われている復旧・新築工事も年度内完成の粗方の目途がたったらしい。
「確かに校舎は、まもなく元に戻るわ。でもね、学園の評判や信用は中々戻らないのよ」
校長先生が、悲しそうに話す。
天馬学園はヤーコフらによって襲撃を受け、宗方 亜澄先生が死亡。
他にも先生生徒に多くの怪我人が発生したし、敵として闇バイトに雇われていた馬鹿共が多数アーシャちゃんの手によって死んでいった。
……学校七不思議で幽霊見たとか話もよく聞くけど、実際に校内で戦闘になった例なんかは国内じゃまず無いよね。ロシアじゃ占拠事件あって悲しい結末になったけど。
「学校は全く関係ないとはいえ、ここで銃撃戦が行われたのは事実ですものね。あ、アーシャちゃんは全然悪くないよ。君が頑張ったから被害者が少なくて済んだんだし」
「そうでござるな。悪いのはヤーコフであり、後ろに居る『あの方』でござるよ、アリサ殿」
学園襲撃事件、実はミハイルくんは殆どノータッチだったらしい。
基本、闇バイトで人を集めるのは『あの方』自身。
彼らのトレーニングにはミハイルくんが関係していたらしいけれども、結局使い物にならない奴らばっかりだったので、やり方を変えたんだとか。
……それが沖縄米軍基地襲撃事件だったんだよね。確かに少しは使える奴らも居たし。だから、米軍も犯人のミハイルくんの身柄受け渡しを要求しているんだけど、僕からのパワードスーツの操縦データー受け渡しを辞めるって脅してるから、いまのところは積極的には動いてこないんだ。
米軍も未成年者をグアンタナモ基地送りにするのは流石に不味いと思っているし、このところ協力的に情報提供してくれているので、日本に預けるのに納得はしてくれているらしい、とはユウマくん情報。
「皆、そうは言うけどわたしも責任は感じているの。母校がわたしの事で巻き込まれて壊れちゃうのは嫌だから。だから、校長先生。わたし、学園の為に何でもお手伝いします!」
「僕も手伝います! この学園に来て、僕は色んな人に出会えて楽しいですし」
「ウチも手伝うで。まだ、右も左もよーわからんけど?」
アーシャちゃん、さっきまで握ってもらっていた校長先生の手を両手で包むように抱き返す。
そして、真剣な顔で学園の為に何でもすると宣言した。
もちろん、僕も。
そしてリナさんも学園に何かしたいと言った。
「では、某から校長殿に頼まれた事を話すでござる。校長殿、良いでござるな?」
「ええ、お願いするわ。わたしが話すよりも良いですしね」
そしてユウマくんが「計画」を話し出した。




