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第7話(累計 第106話) 久方ぶりの学園生活!

「おはよう、植杉! 去年は色々あったけど、今年も宜しくな。で、もしかして年末の湾岸でのアレは……?」


「ま、まあ。お察しの通りで、他の人には内緒にしてくれると助かるかな」


 今日は、新年初めてのスクリーング登校日。

 僕たち四人は揃って「天馬学園」に登校している。


 ……通信制高校の場合、年数回は面接指導(スクリーング)を受けなきゃいけないんだ。まあ、僕らの場合は担任の雪野(ゆきの)先生が仕事で一緒だから、面談は毎日受けてるようなものなんだけどね。


「そ、そうか。お前ら大変なんだなぁ。でも、植杉や(ひいらぎ)のおかげで俺達の日常が守られているんだから感謝だぜ」


「姫、今日も美人さんだねぇ。忙しいみたいだけど、愛するマモルくんが側に居るから、お肌ぴちぴちなのかな?」


「もー皆。いやん!」


「アーシャはん。今日も男女問わずモテモテなんやな。流石はウチの戦友や!」


 何故かアーシャちゃんがクラスで大人気なのをドヤ顔で自慢げなリナさんだ。


「植杉。お前ら、本当に戦ったりしてるのか? とても歴戦の戦士だなんて見えないよ。どう見ても普通の高校生。現実に柊が敵を倒している場面を見てても、俺には今も信じられないや」


「そこは僕も思うところだね。でもね、いつも神経をとがらせて戦う事を考えているよりは、良いと思うんだ」


 視線を女子生徒たちの方に向ければ、アーシャちゃんやリナさんがキャピキャピと女の子たちの中ではしゃいでいる姿が見える。


 ……やっぱりアーシャちゃんは、笑顔が一番だね。


 僕らが「普通」の高校生を今もやっているのを、クラスメートらは不思議がる。

 しかし、僕らが今も学生なのは帰ってくるべき『日常』を実感するためだ。


「お前らは、只のガキ。学生だ。だから、今は何があっても学生で居ろ! 兵隊『ごっこ』以上をやりたいのなら、ちゃんと高校を卒業してからにしろよ!」


 沖縄キャンプ・ゴンザレスでの訓練時、教官だったサイモン・ミストロット曹長は僕の頭を撫で繰り回しながら、よくこんな事を言ってくれた。

 その時は、子供扱いされるのに少しカチンときたが、その後の戦いを経験したことで、僕は戦場の非情さ、悲惨さを知った。

 また、逆に日常、普通の日々の尊さも実感できた。


 ……曹長さん、とっても良い人で僕たちに生きる為に戦う意味を教えてくれたんだ。今はメールを送り合う仲。僕らを励ます言葉と共に、可愛い娘さんの画像送ってくれるのは、とても微笑ましいんだ。


「僕らは、この平凡な日常に帰ってくるために戦っているんだからね」


「そっかー。どっかのアニメとかでも聞く話だね」


「俗にいう『新日常系』でござるな」


 僕とクラスメートとの話に割り込んでくるユウマくん。

 彼もニコニコ顔で、学友たちと話している。


「マモル殿。ミハイル殿は、こういう日常を知らぬから、ああなってしまったのでござるかな?」


「多分そうだと思うよ。最近のミハイルくんは、前みたいに死んだ目をしていないからね。アーシャちゃんが日常を知って弱くなったとか言ってたけど、彼自身その『日常』を知らない可哀そうな子だったんだから」


 ミハイルくん、最近は僕ともよく話してくれるようになった。

 彼曰く、僕は手ごわいけど仲間になれば裏切らないから今は味方で居た方が都合良いっていう。

 半分は照れ隠しだろうけれども、それでも僕を信用してくれたのは嬉しい事だ。


 ……命を賭けた戦いをした上で、お互いに理解することもあるからね。そういえば、日本とアメリカも第二次大戦で殺し合いをしたんだったっけ?


 今や日本とアメリカは価値観を共有する同盟国。

 僕個人としても知人が多く、「それなり」に信用している国だ。


 ……国家間に真の「友情」は無いものね。お互いに利益のある存在(win-win)であれば、裏切りは普通(・・)無いだろうから。


「さあ、ホームルームを開始しますよ。皆さん、席について!」


 プレハブな教室に入ってくる宗方 真雪(まゆき)先生。

 手をパチパチしながら、僕たちに着席を促した。


「皆さん、揃いましたね。では、通達事項があります。二学期から通信制高校として再開しました天馬学園ですが、来年度以降に通常の全日制に戻る事が決まりました!」


「え? 普通の高校になるの!?」

「これで朝寝坊できる日々からサヨナラかー」

「俺、アルバイトの調整をしなきゃ!」


 真雪先生から突然の発表がなされる。

 その嬉しい発表に教室は騒然となる。


「先生、そんな話は僕ら知らないですよ? 今まで毎日一緒でしたのに?」


「だって、校長先生や係長から今日までナイショにしてくれって頼まれていたんですもの。貴方達は戦士だけれども、まだ学生なのよ? 普通の高校生なのを辞める必要は無いの」


「マモル殿、今は先生らの思いを汲むでござるよ? まあ、某は既に知っていて、先生や係長殿らと打合せをしていたでござるがな」


 僕は毎日顔を合わせいていた先生に秘密にされていたことに怒ったが、ユウマくんは既知。

 僕らが『日常』を忘れないようにしてくれる為だろう。


「それと先生殿。いくら最早バレバレとはいえ、堂々とマモル殿や某らが戦っているのを公言しないで欲しいでござるぞ? あと、マモル殿も情報漏洩でござるよ?」


「そ、そうだったぁ」


「あ、しまったぁ。み、皆さん、今のは忘れて……。いいえ、心の底にしまっておいてください。植杉くんや柊さん、正木さん、加藤くんの事を大事に思ってくれるのなら」


 先生、ユウマくんの指摘で自分が失言をしてしまったことを謝り、教壇でぺこりと頭を下げた。


 ……僕も驚いて失言しちゃったよ。


「先生、そこは心配するなって。な、皆!」

「ええ、姫を守るのはクラスメートとして当たり前だもん」


「皆、ありがとう。わたし、もっと頑張ってみるの!」

「アーシャはん、泣いちゃだめやん。あ、ウチも泣きそう」


 周囲のクラスメートの暖かい言葉と表情に、僕らは勇気づけられた。


「皆、ありがとう! 僕も頑張るよ!」


「じゃあ、頑張るマモルくん達にお仕事。今日の授業が終わったら校長先生に会いに行ってね」


「はい?」


 雪野先生は、可愛く首を傾けながら僕らに「仕事」を与えてくれた。

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