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ヲタッキーズ127 訴訟コンサルの女

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第127話「訴訟コンサルの女」。さて、今回はヲタッキーズの目の前で武器商人が内部告発者を射殺。しかし、彼は法廷で無罪にw


背後に"訴訟コンサル"による裁判員工作があるコトを見抜いたヲタッキーズは、金で訴訟を請け負うプロの裁判業者を相手に懸命に捜査を進めますが…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 逆転無罪


僕の元カノは、最高検察庁の次長検事だ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「"脅威1"が接近中。"24"に入ります」


"24"は、アキバ最大の大箱ホテル。


「"パレス"から"万世1"。"脅威1"はロビーに入った」

「"万世1"は"脅威1"を視認。ソファの"脅威2"とアイコンタクトを交わしロビー奥へ移動」

「"マンドリン"は?」


画像停止。コレは"証拠画像"でココは法廷だ。

新進気鋭の最高検察庁ミクス次長検事が尋問中。


「証人、この男性の名前は?」

「ダミア・レイク」

「この法廷にいますか?」


僕は、被告席にいる男を指差す。


「証人は被告人を指差した、と記録を。それから?」


再び"証拠画像"が動き出す。


「待ってたわ。キスして」

「…おい、お友達は何処だ?」

「やっと会えたのに。焦らないで」


突然セクシーメイドのコスプレ女(マンドリン)が現れ、再び画像停止。


「証人は、なぜレイク氏を監視していたのですか?」

「彼の会社の飛行艇は"リアルの裂け目"経由でマルチバースから密輸した各種武器を、ウクライダはじめ世界の紛争地へ輸出していた疑いがありました」

「なぜ当日、南秋葉原条約機構(SATO)がこのホテルに?」

「次元管理局の潜入捜査官(アンダーカバー)がアポを取り付けていました」


ココで画像に僕が現れるw


「加山雄二だ。よろしく」


握手の手を差し出すもレイクは応じナイ。


「おや?取引(ディール)が出来ナイなら、ホテルのスパでも楽しむか。さよなら」

「待て。半島のルートが途切れた後、PMCの"スグネル(すぐ寝る)"に武器を流して荒稼ぎしてるそうじゃナイか」

「この業界は、客が客を呼ぶ。取引相手には不自由しない」


画像停止。


「セクシーメイドのマリカ、コードネーム"マンドリン"は情報提供者でした」

「そして、レイクの"推し"でもあった。なぜ、彼女は捜査協力を?」

「ウクライダのアフゾ連隊に志願した弟が、レイクが密売する武器によって殺される可能性があったから」

「今回の作戦で彼女の役割は?」

「僕を武器商人としてレイクに紹介しました」


再び画像は動き出す。


自走多連装ロケット砲(HIMARS)のM26ロケット弾用ミサイル誘導チップの話は何処で聞いた?」

「スリランカ人のビクタ」

「乙女ロードでの出来事は残念だったな」


僕は、目を伏せる。


「拷問されズに死んだのは、せめてもの幸運だった」

「そうか…どーやら仲介料は省けたな」

「MFOMチップのためなら仲介料は惜しまない」


すると、ソファに座っていた男が立ち上がり、小脇に抱えていた本を開くと…マイクロチップだ。僕は鷹揚にうなずく。


「FGM-148タイプの追跡用だ」

「ぜひ買いたいね」

「現金で頼む」


僕は、手にしていた紙袋を渡す。


「ん?マリカ、ホッとしてるな?」

「何を言ってるの?」

「おい、取引(ディール)しないのか?」


レイクは、プロレスの反則技のように、死角で巧妙に隠し持った銃をマリカの脇腹に突きつける。僕は、動けないw


「"パレス"、問題発生だ!」

「確認した。全員位置につけ」

「ROG」


民間人に化けた特殊部隊が一斉に立ち上がる。


「全員構えろ。逃すな」

「おいおい。取引(ディール)はどうなってんだ?」

「黙れ、ヲタク野郎」


セクシーメイドを盾にして脱出を図るレイク。


南秋葉原条約機構(SATO)だ。銃を置け」


レイクは耳元で囁く隊員を突き飛ばし…ココで画像停止w


「証人は、被告人の銃を実際に見ましたか?」

「…マリカの背中に隠れてた」

「つまり、被告人とメイドが立ってる姿を見ただけですね。ソレは秋葉原では日常風景だ」←


再び画像が動き出す。しかし、嫌な弁護士だw


「take it easy」

「うるせぇ!」

「きゃー!」


レイクは、拳銃を天井に向けて発射!悲鳴が上がり、ホテルのロビーにいた全員が一斉にテンデンバラバラに走り出す。


「銃を置け!」


エレベーターへと逃げ込むレイク。追う特殊部隊の目の前で扉が無情に閉まって逝く。

薄ら笑いを浮かべるレイク。羽交締めにされたマリカは恐怖に顔を引き攣らせている。


「追え!UPだ!」


逃げ惑う宿泊客をかき分け、階段を駆け上がる特殊部隊。

意外にもそのエレベーターは2Fで止まる。そして…銃声w


エレベーターの扉がゆっくり開く。平然とした顔のレイク。


「動くな!両手を頭の後ろに!」

「もみ合って、銃が暴発した」

「どけ!拘束しろ!」


エレベーターの壁にはベットリ血飛沫が飛んでいる。

そしてエレベーターの中には血塗れのマリカの死体…


"嫌な弁護士"の最終弁論。


「依頼人は、取引相手と商談をしていました。SATOは密売だと主張しています。しかし、対象物は見つからズ、存在スル証拠もありません。モチロン、依頼人がマリカ嬢に危害を加えた証拠もナイのです。依頼人は、マリカ嬢を強盗から守ろうとした。SATOが、この状況を作り上げ、そして名乗らなかったコトで混乱を招いた。マリカ嬢は、身の危険を感じ、彼女を守ろうとした男性と揉み合った。すなわち、この悲惨な死は、現場にいたSATO特殊部隊こそが責任を負うべきなのです」


ミクス次長検事の最終弁論。


「マリカ嬢がレイク氏に不利な証言をしようとしていたコトを忘れてはなりません。レイク氏曰く"残酷な運命のイタズラで特殊部隊が近づく中、彼女は不慮の死を遂げた"でも、コレは運命のイタズラなどではなく、残酷な犯罪です。見ての通り、コレは殺人なのです」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


アキバ工科大学の終身名誉教授ルイナは、水の入ったボールを目の高さに掲げる。全世界に向けリモート配信で講義中。


「何が見えるかしら?モチロン、水が見えるけど、ソレだけじゃないわ。科学は普遍的な手段として、目に見えないモノまで定義し、数値化スル」


ボールの水をすくうと…透明の球体が現れるw


「親水性の球体ょ。水晶みたいだけど、水に入れると300倍に膨張スル。でも、球体はほとんど水分だから、水に沈めると同じ屈折率になり、見えなくなる。私達は、得てして見たいモノだけを見たがる。青い空。白い光。水だけが入ったボール。でも、私達は"見たくないモノ"こそを見透かさねばならない」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

法廷。法衣の裁判長が告げる。


「裁判員は評決に達しましたか?」

「はい。裁判長」

「衛士はコチラに」


裁判員代表が衛士にメモを渡す。メモは裁判長の手に渡る。


「被告人は起立。"アキバD.A."対レイク。罪状、第1級殺人。裁判員による評決は…無罪」


その瞬間レイクは傍の女性をハグ。さらに"嫌な弁護士"と満面の笑顔で握手し…最後に傍聴席の僕を指差す。

レイクは、爽やかな笑顔だ。僕に向かって笑顔で大きくうなずく。僕は茫然として口を閉じるコトも出来ない。


そして、僕の元カノは…頭を抱えている。


第2章 対話型マッチングAI


ルイナは史上最年少で首相官邸アドバイザーに就任した超天才。トレードマークは車椅子にゴスロリ。ラボを訪問スル。


「テリィたん、悪いけど宝くじの予想は出来ないの」

「やらないだけだろ」

「コレは"空間動的陪審モデル"ょ。昨日の裁判、テリィたんの元カノは負けちゃったんだって?」


僕は、うなずく。


「で、裁判員の評決を分析するため"可変スケール"を使って複数の変数を考慮してみた。例えば、他人への意識や有罪と無罪の票数とか…」

「説明が長いぞ。見て欲しいものがあルンだけど」

「なぁに?」


僕はスマホに入れたアプリを見せる。


「対話型AI搭載の"シンFacebook"さ。昔の"推し"と出逢えるし、同じ現場のヲタクとも出逢える」

「Facebookのヲタク版?」

「でも、利用者はヲタクだけじゃナイ」


ルイナは呆れ顔だ。


「知ってる。現に対話型AIを搭載した"シンFacebook"は世界中で何億人ものヲタクが利用し出した。思いがけない"元推し"を探し出せる確率がグンと高まったから」

「プロフィールの見せ方が重要だ」

「YES。その情報を基にアルゴリズムが検索スルの」


僕は、うなずく。


「例えば、どんなプロフィールが良いかな」

「意外にも若い推しは苦手、ダッジオーブン料理が好き、実は推しにはスーパーヒロインのコスプレをして欲しいと思ってる、とか」

「うーん。何だかドレをとってもミユリさんがトップに出て来そうだね」


車椅子でクスクス笑うルイナ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


南秋葉原条約機構(SATO)は、アキバに開いた"リアルの裂け目"からの脅威に対抗する首相官邸直属の防衛組織だ。

その司令部は、パーツ通りのとあるゲーセンの地下深く秘密裡につくられ沈着冷静なレイカ最高司令官の下…


あれ?レイカ最高司令官が…取り乱してるw


「レイクは、この秋葉原で白昼堂々とメイドを殺した。なのに、なぜ無罪判決?みんな、何か考えを出して!」

「しかし、司令官。一事不再理の原則があります」

「殺人でなく組織犯罪の容疑は?立件出来ないの?」


ソコへ厄介な情報が舞い込むw


「レイクの会社の後ろ盾は、実は…"落日の帝国(イギリス)"です。引退後、奴はフリーで活動してる。武器の売買を除けば、奴の会社は合法です」

「MI-6の訓練を受けてるのね?とにかく!奴を捕まえて!」

「容疑は?」

「何でも良いわ!」


レイカ司令官、御乱心なうw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


最高検察庁の会議室。


「…姉が死んだ日、俺達はアフゾスタリ製鉄所を解放してた。いつも姉には心配ばかりかけた。俺はダメな弟だった」

「貴方は、マリカの自慢の弟ょ」

「姉さん…世界のために武器の密売人と戦うナンて」


ミクス次長検事は、マリカの弟をアキバに召喚スル。


「貴方達、軍人のために彼女は戦った」

「姉さんは、色々過ちを犯した。アンタ達、政府を信用したのも過ちカモな」

「…レイクの本性に気づき、悪を正そうとしたのょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ミクス次長検事のオフィスを訪ねる。


「ラッツ?弟さんの言葉が頭から離れない」

「ミクスの弁論は、説得力があった」

「でも、負けたわ」


ラッツは、僕がテリィと呼ばれる前のネームだ。


「負けたのは君じゃない。僕達だ」

「弟さんが気の毒なの」

「僕達が勝てるハズだった…ちょっちPCを借りるょ」


そう断るのとホボ同時に、画面が勝手に切り替わるw


「ミクス?今、見てるのは"空間動態的陪審モデル"ょ。裁判の審議プロセスを表示してる」

「ルイナ、お願いだから最高検察庁をハッキングするのはヤメて…で、そのプロセスって評決までの過程ってコト?」

「YES。今回の裁判員達に相応の評決が出たかどうかを評価スルの」


ミクスとルイナは仲良しだ…同じ僕の"元カノ同士"で←

また、実際のハッキングはルイナの相棒のスピアが実施w


「ルイナ、思考を予測スルの?いくら超天才の貴女でもムリでしょソレ」

「でも、確率を使えば何とか…コインを投げると、結果は表か裏ょね?通常、結果は予測出来ない。そこで確率計算を使って、あらゆる変数を考慮するの。コインの速度や重さ、移動時間と距離。コレで確率を"変えられる"。裁判員に応用すれば、結果に対する理解が深まる。今回のケースでは、物的証拠や証言の質を考慮に入れると、有罪判決となる確率が圧倒的に高い」

「ソレはつまり…何らかの不正があったと言ってるの?しかし、裁判員の名前は伏せてるし、審理中は隔離されてるのょ?」


審理は、絶海の孤島ででもスルのかなw


「ソレでも、レイクはあらゆる手を使うでしょうね」

「"QJS"がアルわ」

「"質的陪審ソフトウェア"ね?裁判所は、裁判員の選任に使ってる」


ココで僕がギブアップw


「その"QJS"って何?美味しいの?」

疑似乱数列生成器(メルセンヌ・ツイスタ)と言う擬似乱数生成器で運転免許証や有権者のリストから候補者を選ぶソフトウェアょ。因みに食べられナイ」←

「でも、確かに、そのソフトウェアから裁判員の名前や住所は調べられる。そして、ソレを閲覧出来るのは…裁判所の書記官?!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ソフトウェアについては、全てソフトウェアハウスに問い合わせてください」

「書記官の貴女には聞けないの?」

「私の仕事は、問題があればメーカーに連絡する。ソレだけです。ソフトにはハウスしかアクセス出来ません」


今どき珍しいビン底メガネ女子だw


「最近、何か問題は?」

「そりゃ全員が裁判員の勤めを嫌がるコトね」

「じゃなくて、最近ソフトウェアハウスを呼びましたか?」


僕は、辛抱強く相手をスル。


「約6週間前、セキュリティパッチをインストールしたわ」

「ソレって裁判の直前だょ。誰だった?」

「バルカン人みたいに耳の尖った人。車をレッカー移動されて大騒ぎしてた」


お、バルカンサイン。まさか君はトレッキアンw


「ソイツのお名前プリーズ」

「覚えてないけど…スポックみたいな人だったわ。あら、バルカンサイン?まさか貴方はトレッキアン?」

「長寿と繁栄を。レッカー会社は?」


ビン底メガネ女子の顔が輝き、頬が赤く染まるw


「短縮に入ってるわ!私の番号も…」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「私は、訴訟コンサルタントのブルナ」


そう自己紹介した女は、ミクスを正面から見据える。

ココは、中央通りを見下ろすカフェ。ミクスは話す。


「今回、たんまりコンサル料をとって、有利な裁判員を選ぶためにレイクに手を貸した人ね」

「私は、顧客が抱える案件を科学的に解析し、戦略を立て、適切なアドバイスを行う。そのための適正な料金は、予め提示してあり、合意の上でお支払いいただいてる。念のために申し添えると、私は心理学と神経言語学とセックスセラピストの3つの博士号を持っている。被告人だけでなく、貴女達検察の側にもつくコトもアルのょ」

「つまり、何事もお金次第ってコトね…裁判員の候補者は、事前に質問票に記入するコトになってるけど」


ブルナは、澱みなく応える。


「質問票をもとに選ぶ方が、人口統計を基準に選ぶより偏見が少ない。必要なのは、レイプに対する意識だから」

「そして、レイプ犯からもコンサル料を取るワケね?」


フンと鼻で笑うコンサル。


「私は、判断力を駆使して、人々が認めたがらないコトや、書面上のウソを暴く。貴女のコトも観察した。外見は検察官だが中身は政治家。弁論術があるから法学部の学位を認められて検察に入った。でも、誰も知らない野心がある。政界に入りたいでしょ?」


ミクスは答えない。


「人に光を当てて、自分は影に隠れる人なのね」

「そーゆー人間を世界が求めてる。私、貴女が出馬するなら投票スルわ」

「結構ょ」


ブルナは立ち上がり、歩き去る。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


豪邸だ。玄関前のロータリーにライオンの噴水←


「その車、燃費とか考えたらどうなの?」

「やっと警察のお出ましか。あらゆる手を使って、俺を刑務所送りにする気だな」

「だって、あらゆる政府機関が貴方を追ってルンだもの」


赤のコンバーチブルの前に立ち塞がる。

ラギィは、万世橋警察署の敏腕警部だ。


「俺も運命に逆らうつもりはない。コレで満足か?」

「いいえ。貴方が"リアルの裂け目"経由で武器輸出をやってる間、ずっとSATOマターで欲求不満だった。でも、殺人の容疑者になってくれて、やっと私の出番が来たわ」

「おい!"一事不再理の原則"を知らないのか?」


ラギィ警部は動じない。


「あら"審理無効"って知らないの?」

「あのな…検察官の不手際のお陰で、俺は自由に秋葉原を出られる。警察は手出し出来ない」

「私、前の職場で"新橋鮫"と呼ばれてた。よろしくね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ラボを訪れるとルイナは黒板に数式を描き連ねてるw


「ランチにしないか?偶然つながった高校時代のガールフレンドのコト、相談したいんだけど」


振り向くルイナ。


「どーやら"シンFacebook"は順調みたいね」

「絶好調さ」

「元はアフリカ南部のネットワーク研究だったのに、まさか対話型AI時代にも生き残るナンて」


僕は笑顔で応じる。


「マジックテープも宇宙計画の産物だ。で、審理の分析はどう?何かわかった?」

「あの評決に不正があった可能性は高い。でも、裁判長は納得しないでしょうね」

「ミクスが気の毒だ。悪いのは法制度なのに」


僕は持論を展開←


「法制度って完璧だった試しがナイ。そもそも、人間の判断力に頼ればミスを避けられない…ソレじゃ、またね」

「待ってょ何処行くの?…ねぇだったら、法制度の後始末じゃなく、先回りすれば良いと思わない?」

「法制度の先回り?何だソレ?美味しいの?」


ルイナは、何かをヒラメきつつアルw


「そうね。確率って予測ツールにもなるから…状況を変えるコトで、犯罪を未然に防げるカモ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)に捜査本部が立ち上がる。


「警部。セキュリティパッチのインストールで裁判所を訪れた技術者は、ロバト・ロガンでした。ただ、ソフトウェアハウスにそんな名前の社員はいません」

「あらあら。別の雇い主がいるみたいね」

「駐禁でレッカー移動されてる。交通課で住所がわかります」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


神田同朋町の安アパート。


「ロガンさん!万世橋警察です…誰もいないの?それとも、サプライズパーティ?」


鍵が開いている。薄くドアを開け中の様子を伺う。

腰の拳銃に手をかけながら、中へ入るラギィ警部。


「どーやらパーティはお開きみたいね」


デスクのチェアに、額を1発で撃ち抜かれたロガンの死体w


第3章 殺されたハッカー


合同捜査となったヲタッキーズが捜査本部に顔を出す。妖精担当のエアリとロケットガールのマリレ。2人共メイド服w


「ラギィ、ロガンはハッカーだったんだって?」

「ハッキングで裁判員の情報を盗んでたのね」

「そーなの。で、口封じに殺された」←


女子同士の情報共有は光速←


「やっぱりレイクね?」

「指紋や通話記録を調べ中ょ」

「また教えて」


エアリは、マリレを物陰に連れ込む。


「話がある。私、副主任に立候補スルから」

「あらら。ミユリ姉様が不在の時、仕切るつもり?私が嫌がるとでも思った?」

「いいえ。でも、私の口から話しておきたかったの」


もともとエアリの方が年長なのだ。何しろ、彼女は地球が冷え固まって以来、ズッとこのアキバにいる妖精なのだから。


「私は賛成ょ。姉様は何て?」

「…未だ話してない」

「私の"パンツァーファウスト"を知ってるわょね?」


マリレは、必殺技の名を口にスル。


「もちろん。ソレが?」

「私に紅茶を持って来させる前に思い出してね」

「ヤメてょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「警部!レイクの右腕フクスの動きを内偵中です」

「ソレで?」

「事件当日に奴が持ってたチップが"ウクライダ2875"で見つかりました」


"ウクライダ2875"はマルチバース世界の1つだ。


「奴は"リアルの裂け目"を渡ったの?」

「監視を続けますか?」

「レイクの居場所を知る唯一の男だしね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ルイナの相棒スピアは、ストリート育ちのハッカーだ。


「ロガンは"管理者パスワード"を作ってた。そのコードを破ればウェブでの動きを探れるわ」


スピアのPC画面で"管理者パスワード"の文字が明滅。


「出たわ…あらまぁ裁判員候補者の名前や住所を盗み見してる。暗い性格w」

「裁判員の個人情報がダダ漏れね。でも、私達にも武器があるわ」

「武器?ルイナ、ソレは何?」

「裁判員が記入する質問票ょ。その内容をデータ化して解析すれば裁判員団の動向が分かる」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


御屋敷(メイドバー)のバックヤードをスチームパンク風に改装したら常連が沈殿、客の回転率が落ちてメイド長(ミユリさん)はオカンムリだw


「おかえりなさいませ、お嬢様…あら、ミクス?」

「ただいま、ミユリさん」

「テリィ様ならいないけど」


現カノ vs 元カノ!悪夢だ←


「ラッツは未だSATOにいたわ」

「何か飲む?」

「是非いただくわ」


ミユリさんは気を使う。


「また会社(けんさつ)に戻るの?コーヒー?」

「…赤ワインはある?」

「あら」


振り返って微笑むミユリさん。ミクスも微笑む。カウンターにワインとグラス2つ。気を利かせて常連全員が席を外すw


「私も付き合うわ」

「学生時代、いつもラッツをアイスで釣って、話を聞き出した。ミユリさん、今はラッツを何で釣るの?」

「もちろん、今もアイス」


穏やかな時間が流れる。


「検察官として常に弱者のために戦い、勝利して来たわ。でも、マリカは殺されて犯人は無罪放免。私は2度も正義を裏切った」

「テリィ様と貴女は、とても高い理想の下に生きてる。今のアキバには、冤罪もあれば犯罪者が放免されるコトだってアルわ」

「でも、ソレは許されない」

「モチロン」


ワインを飲み交わす2人。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


翌朝、訴訟コンサルのブルナは最高検察庁に呼ばれる。


「未来の議員さん。寄付金でも必要?」

「貴女、ハッカーのロガンから数回電話を受けてるのね」

「ロガン?誰?」


トボけるブルナ。


「貴女が雇ったハッカーょ。裁判の不正に加担してた。頭を撃たれて死んだわ。彼と何の話をしてたの?」

「ロガンなる人と話した覚えはナイわ。仮に話したとしても依頼人との間には"秘匿特権"がアルの。ゴメンね」

「不正に手を貸した場合の秘匿特権は認められナイ」


熱くなるブルナ。


「ずいぶん大胆な主張をスルのね。証拠はアルの?名誉毀損で訴えようか?」

「その前に、も少しレイクを注意深く観察して」

「何?どーゆーコト?」


身を乗り出すブルナ。


「奴の周りの人間が、次々と死んで逝くの」


第3章 凹まざる者達


最高検察庁でミクスと立ち話。


「ラッツ。裁判長がハッキングの証拠を検討した結果、裁判員の名前を明かすコトに同意したわ!」

「やったな、ミクス。審理無効は近いか?」

「でも、未だロガンの情報の使い道がワカラナイ」

「ソレは、ルイナが調べてくれてるょ」

「うーん数式だけじゃダメなの」

「話だけでも聞いてみょ?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ルイナは、ラボからリモートでレクしてくれる。

 

「つまり、質問票から集めた情報をデータ化するワケ」

「 ソコから何がわかるの?」

「裁判員の先入観。OK?数値が47以下の場合、検察官寄りで貴女の味方。52以上は弁護側寄りょ。その中間は先入観が少ない人達」


身を乗り出すミクス。


「つまり、今回6人が有罪寄り、3人が無罪、4人が中間層だったワケね。で、その評価方法は?」

「"SJS"」

「"科学的選別"ね?」


ルイナはうなずく。


「全然"科学的"だとは思わないけど、そーゆー名前がついてる。つまり、統計から裁判員の考え方、そして、彼等が下す評決までを予測スルのが前提」

「警察がやってるプロファイリングとは違うの?」

「あぁ。海外ドラマで良くやってる奴ね。アレも統計分析が前提ょ。集団力学だから、暴走族の群れと同じ。昔は10人の族を1人のリーダーがまとめてた。リーダーを操るコトで、族全体がついて来る。つまり、1人が族全体を動かすの。裁判員団も同じ。で、リーダーを捜し出すには、年齢、性別、学歴、職業などを考慮するワケ」


ミクスはすっかり乗り気。ココでも元カノ同士は仲良しだw


「ねぇルイナ。補欠裁判員を変数に加えて欲しいの。裁判員7番は、審理開始前に家族に不幸があって交代してるから」

「初めて聞いたわ。御不幸って?」

「夫が事故死してる…嫌だわ。コレって関係あるの?」


車椅子の超天才はコトもナゲに応える。


「助変数を考えると、その確率は極めて高いわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「パパ似なの」


元裁判員7番は美人妻だ…だった、かな。

膝の上に載せた乳児の頭を優しくなでる。


「御主人の件は単独事故だと認定されましたね」

「私が裁判員になって、夫に家事を任せてた。彼は余裕がなかったのかも」

「以前にも事故が?」


ミクスの問いに首を振る美人妻。


「まさか。いつも注意深い人でした…検事さん、お子さんは?」

「いません」

「パーソナルクエスチョンでごめんなさい。子供が生まれた瞬間から人生は変わる。誰もが、出来るだけ長く子供の側にいたいと願うようになるの」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


真昼の"潜り酒場(スピークイージー)"。僕とミユリさん。


「テリィ様。ミクスが落ち込んでました」

「えっ!御帰宅したの?!…マリカの死でラギィも自分を責めてる」

「でも、殺したのはレイクなのでしょ?」


メイド服で首を傾げるミユリさん。萌える←


「法執行機関では、時に無実の人間が障害になる」

「テリィ様。本件、私も参戦します」

「…車から投げ出された人の治療法を探してる気分さ。治療も大事だけど。真に必要なのはシートベルトだ。対症療法じゃなく根本的な解決策が欲しいな」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部もフル回転に移行。


「元裁判員7番の夫の交通事故を調べ直してみました。現場で採取された塗料片が事故車のモノと一致してません」

「何てコト?!当時の捜査は何やってたの?」

「誰も犯罪だとは疑ってなかったので…」


ラギィは怒る。


「じゃ今から疑って頂戴!」

「補欠裁判員はジステ・サーフ。マイナンバーは、故人から盗まれたモノです」

「ソンな野郎がナゼ裁判員になれるの?!」


怒気に圧倒される刑事達。


「えっと、先ず裁判員の候補団に潜り込んで…」

「その後"不幸な自動車事故"が起きてますw」

「レイクが"空き"を作ったのね?奴を拘束して!」


慌てる刑事達。


「しかし、警部。審理無効を待った方が…」

「他にも何点か確認したい点があり…」

「レイクを連れて来て!今すぐ!」


第4章 ココにレイクを連れて来て


玄関のロータリー。ライオンの口から水が出る噴水。

SWATが玄関の両脇に張り付く。衝角(ラム)を振り下ろす…


万世橋警察署(アキバP.D.)万世橋警察署(アキバP.D.)!」

「*∂@‰¿Å∀⁂(勝手に入って来ないで)!」

「タガログ語?」


フィリピーナのメイドが飛び出して来る。


「私はタガログ語が話せます。(ごきげんよう。秋葉原は初めてですか?)」

「(はい。昨日はヨドパシカメラに行きました)」

「(ソレは良かったですね)」


緊迫した雰囲気の中、実はこんなヤリトリだw

国営放送の"初級英会話"みたいな会話の後…


「警部!レイクは昨夜、プーケットに高跳びした模様!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「警部!レイクは昨夜、プライベート飛行艇をチャーター、プーケットに高跳びしました。ICPOを通じ国際手配済み。現地で捜査官が奴の行動範囲を捜査中です」

「フクスを捕まえて」

「え。レイクの右腕だったフクスですか?今はフリーみたいですけど…」


カチンと来るラギィ。


「アンタ達、レイクがプーケットにいるとホンキで思ってるの?ホントの居場所はフクスだけが知ってるカモ!」

「そ、そぉか。ソレでムーンライトセレナーダーは…」

「え。ムーンライトセレナーダーが参戦したの?」


ムーンライトセレナーダーは僕の推しミユリさんがスーパーヒロインに変身した姿。メイド服にレオタードのコスプレ←


「さっきフクスに会うって…」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


和泉パークは、東秋葉原の真ん中にアル児童遊園だ。

夏はキッズに人気のジャブジャブ池の畔に佇む人影…


「あら。チップ売りの立ちんボ?」


フクスが見上げるとムーンライトセレナーダーが降臨←

慌てて回れ右スルと、今度は真正面にエアリ&マリレw


「いつも私達から逃げるのね?ヲタッキーズ、嫌い?」

「大嫌いだ!何だょ?」

「あの駐禁エリアに止まってる白いバン。違法武器を積んでるって匿名の市民からタレコミがあった」


顎でバンを指すエアリ。フクスは、血の気が失せるw


「調べても何も出て来ないぞ」

「良かった!じゃサッサと調べて終わりにしょ?トランクを開けて」

「ま、ま、ま、待ってくれ!」


メイド3人に囲まれ手も足も出ないフクスw


「何やってたの?」

「実は、取引相手が来るハズだった。だが、スッポかされた…だけだから、まさか逮捕は出来ナイょな?」

「そりゃ気の毒ね。レイクの居場所を教えて」


単刀直入に迫るエアリ。


「奴とは切れた。今も組んでりゃこんなトコロに立チンボしねぇズラ」

「奴の右腕だったンでしょ?」

「レイクは俺達と連絡を絶った。大勢の売人を切り捨て、スッカリ東秋葉原から消えちまったのさ」


ムーンライトセレナーダーがうなずく。先を急ぐエアリ。


「OK。じゃ手を後ろに」

「マジかょ?!」

「情報がナイなら過去バレ案件で逮捕ょ」


フクスは、頭を抱えるw


「参ったな。1つだけ教えてやるょ」

「あら。ゼヒ聞きたいわ」

「レイクは裁判員に手を出した」


フクスは食いつくw


「手を出すって何?具体的には?」

「よく知らンが"俺は絶対に蔵前橋(の重刑務所w)には行かない"とウソぶいてたゼ」

「もっと詳しく教えてょ」


ココでフクスは首を振る。


「聞いてない。ホントに知らないんだ」

「ホントに残念だわ」

「え。何が?」


後ろ手に手錠をかけられるフクスw


「マジかょ?!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部に凱歌が上がる。


「みんな、審理無効が認められたわ!」

「やったな、ミクス!」

「おめでとう!さぁ真犯人探しよっ!」


拍手、口笛、歓声で沸く本部。


「補欠裁判員に関する情報は?」

「免許証が偽名だったので桜田門(けいしちょう)の顔認証で照合しました。サーフを裁判員の候補に入れたのはロガンのようです」

「あのハイテク詐欺ハッカーの?」


リモートでラボから割り込むルイナ。


「サーフは、検察寄りの人間として質問票に記入してる。高学歴、兄は軍人。過去に強盗の被害者。この男は、検察が思わズ裁判員に選びたくなるような答えをしてる」

「私達検察が、思わズ選びたくなるような人間を装ってたワケね?」

「YES。予め"SJS"の知識があったか、誰かがサーフに入れ知恵したか」


唇を噛むミクス。


「殺されたロガンの通話履歴を調べたトコロ、訴訟コンサルのブルナと頻繁に通話してたわ」

「絵を描いたのはコンサル?奴も共犯。いや、主犯の可能性もアル。もう手加減しないわ!」

「…ムーンライトセレナーダー。お話しが」


高まる捜査本部の片隅でエアリがささやく。


「エアリ、どうしたの?」

「実は…副主任に立候補しようと思ってます」

「そう。テリィ様には話したの?」


ムーンライトセレナーダー率いるヲタッキーズは、スーパーヒロイン集団で、民間軍事会社(PMC)としてSATOの傘下にアル。


因みに、CEOは僕←


「テリィたんには未だ話してません。その前に、先ず姉様からの推薦状を提出したくて」

「わかってるわ」

「よろしくお願いします」


ムーンライトセレナーダーは微笑む。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。ルイナのラボ。


「スピア。ハッキングで新しい方法を模索したコトは?」

「常に模索してる。私は、いつも軽視され続けて来た。SATOでは、誰も私の意見を求めないし」

「私は評価してるわ。言葉にしないだけょ」


超天才ルイナの相棒スピアはストリート育ちのハッカーだ。


「その言葉が必要ナンだけどな」

「レイクは、サーフを送り込んで裁判員団を操った。脅迫したか、お金を握らせたかだけど、11人の裁判員は何も話さない。でも、11人全員に鼻薬を嗅がせる必要はナイわ」

「どーゆーコト?評決は、常に全員一致ょ」


車椅子の超天才は相棒に解説。


「常に一貫してる少数派は、多数派をしのぐの」

「うーん今回ばかりは、貴女の数学を疑っちゃう」

「テリィたんが"シンFacebook"を始めたわ」


驚くスピア。


「マジ?ってか何でソンなコト知ってるの?」

「意外でしょ?で、"シンFacebook"は、利用者層を拡大するためにSNPが高い人間に依存スル戦略をとった。つまり、他者に影響を与えるインフルエンサーに特化したマーケティングね。最先端の流行の発信者を取り込めば事業の成功は間違いナイ」

「と言うコトは」


ルイナの裁判員モデルに見入る2人。


「サーフは、裁判員の中のインフルエンサーを知ってたってコト?」

「サーフじゃない。わかってたのは、恐らく訴訟コンサル。でも、私のモデルも、あと少しで割り出すわ。裁判員団を操るインフルエンサーは…出たわ。リンパ・ダーカとロイデ・チメデ」


別のモニターにプロフィールが出る。


「リンパは…シングルマザーね。でも、みんなをまとめる力がある。そして、ロイデは金融機関の人事部長。教養があり、話も上手い。恐らくこの2人とサーフが裁判員団を引っ張ったインフルエンサーょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


リンパ・ダーカは、弁護士同伴で捜査本部に出頭スル。


「依頼人は、免責が保証されれば話す用意があります」

「OK。リンパさん、御事情をお話しください」

「ある日、アパートの扉の下から封筒が入れられたの。子供の写真で顔が標的になってた。その裏には…」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


一方、ロイデ・チメデは一気にまくしたてるw


「今日までのサラリーマン人生で、最悪のタイミングだった。失業し、家は差し押さえ寸前で…」

「落ち着いて、ロイデさん」

「一言大きく"無罪"と描かれた文面だった。その横に銀行の支店番号と私の負債総額が描かれていたんだ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「評議で真っ先に無罪を主張したのは3人」

「貴女同様、脅迫されてたのかな?」

「知らない。でも、私のアパートが分かるなら、誰の子供だって殺せると思う」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「サーフという人間は?」

「気さくな男だったょ」

「何か個人的な話をしましたか?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「そー言えば、いつもサーフはからかわれていたわ」

「なぜ?」

「ランチを頼むデリバリーの子に気があったみたい」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"マチガイダ・サンドウィッチズ"はアキバ最凶のホットドッグステーション。テイクアウト専属?のUper girlに聞く。


「裁判員団のデリバリー?ええ、上得意ょ。サーフさんでしょ?覚えてる。いつも"納豆ドッグ(ネバー)"だった」

「スマホの番号を聞かれた?」

「まぁね。うふっ」


ツインテの女子大生だ。普通に可愛い←


「で、教えたの?」

「まさか。私、納豆ダメなの。ローストビーフが好みょ」

「ロービー?」


意味深な目付きで僕を見る。え。僕か?


「もしサーフから連絡が来たら教えて欲しいな」

「連絡先、未だ持ってるわ。好みじゃないけど納豆に渡されたから。でも、私の好みはロービー」

「ありがとう」


ホントにウマいのは"チリドッグ"だょw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「テリィたん。連絡先の名前はシラバになってたけど、写真はサーフにソックリ」

「知らばっくれるのシラバだ。ラギィ、住所がわかればヲタッキーズに…」

「もう行ってもらってる。ところで、テリィたん。貴方"ロービー顔"ナンだって?クスクス」


しばらく、肉の話をしたくナイなw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その雑居ビルはビル自体がスラム。香港の九龍城?笑


「シラバ?」

「誰だ?…メイドさん?」

「ヲタッキーズ!動くな(don't move)!」


部屋の前でシラバと出くわすエアリ&マリレ。潔く買い物袋を投げ捨てて、脱兎の如く逃げ出すシラバ(恐らくw)!


「止まれ!ひとまず話そ?窓から飛び降りたら死ぬわ」

「落ちたら終わり。メイドとお話ししたいなら絡んであげるから!」

「ウソだ!秋葉原のメイドは俺を放置スル!」


窓ガラスを粉々に割り飛び出すシラバ(多分w)…

を空中でキャッチする妖精とロケットガール←


「世話の焼ける人ね。死にたいの?」

「死んだも同然だ!」

「でも、生きてるじゃない」←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


そのママ万世橋(アキバポリス)の取調室に連行されるシラバ(ほぼw)。


「俺は、言われたコトをしただけだ!」

「そして、何度も有罪判決を受けたのね?貴方、ホント色んな人に利用されてる。気づいて」

「俺は詐欺師だ。決して人は傷つけない!」


ムーンライトセレナーダー自らの取調べw


「ソレは男の言い訳。必ず女は傷ついてる」

「演歌?とにかく!俺は何も知らない」

「裁判員としては何をしたの?」


満点回答が返って来る。


「法廷で証言を聞き、評議して1票を投じた。全員が無罪票だったのに、なぜ俺だけを責める?」

「ニセの身分で裁判員団に潜り込んだから。コレだけでもぉ十分に重罪ょ」

「弁護士を呼んでくれ」


鼻で笑うムーンライトセレナーダーw


「必要ナイわ。貴方は釈放。でも、貴方が警察署に来たコトは、みんな知ってる。貴方が自白したと思うわ。せいぜいロガンと仲良くするコトね。あ、ゴメンなさい。あの人、もう死んじゃったわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


夜の佐久間河岸。神田リバーの黒い川面がゆっくり流れる。


「何を考えてるのょアンタ!」

「死にたくない…」

「何でアンタが死ぬの?私は誰も殺さないわ」


シラバに分厚い封筒を押し付けるのは…ブルナw


「でも、私とはコレ切りにして。もう2度と顔を見せないで。OK?」

「あら、随分ね。私の顔はどう?」

「おっとコッチも行き止まり」


目の前に"舞い降りる"エアリ。振り返ると後ろにマリレ。


「はい。後ろを向いて。両手も後ろ」


ブルナは、鬼の形相だ。

しらばっくれるシラバ←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部の取調室で再会スル2人。


「ミクス次長検事、第2ラウンドのゴングね」

「ボクシングじゃナイわ」

「いいえ。コレはボクシング」


ブルナは譲らない。


「貴女とは、司法制度の認識が違う」

「でも、その司法制度で私達は食べてる。相手の弱みを巧みに利用し非情のストレートを撃ち込む。私達はボクサーょ」

「でも、私はルールを破らない」

「ルール?無意識の内にボクシングだと認めたわね」


巧みなビジネスバーサン、じゃなかった、パースンだ。


「…貴女の口座の最近の動きを監視してるわ。司法のルールを教えてあげる。貴女を雇ったレイクが姿を消した今、全ての責めを負うのは貴女。殺人2件に犯罪容疑は10件以上。仮釈放ナシの終身刑は確実。でも、質問に答えたらルールに少し目をつむってあげる。レイクは何処?プーケットはダメょ。いないのはわかってる」

「ホントに知らないの!」

「じゃ仮釈放は諦めて。第2の質問。レイクの支払い方法を教えて。銀行コードと取引記録も」


ブルナは、泣き出さんばかりだ。


「高度に暗号化されてる。警察には追跡不可能ょ」

「レイクは、それほど利口じゃない。ソレに追跡スルのはウチじゃナイし」

「ねぇ仮釈放だけど…」


応えズ、ペンとメモ用紙を突きつけるミクス。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ルイナのラボ。相棒ハッカーのスピアがスク水になってるw

彼女のトレードマークなんだが、ホンキを出してる証左だ←


「確かに口座の入出金は高度に暗号化されてる。オマケに複数の海外のオフショア口座を経由させてるから、追跡はソコソコ難しいわ。ね?スピア」

「と言っても、不可能じゃナイ。とりあえず、今"世界金融メッセージネットワーク"をハッキングした。全世界200カ国の9000以上の金融機関を結ぶ、世界最大の金融ネットワークょ。因みに、ココを通る取引処理のデータは、1日1100万を超える」

「その中からレイクの取引が特定出来るのか?」


つい心配になり、捜査本部からリモートで口を挟む僕←


「ソレが…実は本石町(日銀)の口座に使われてる暗号化コードを使うと、レイクが送金した全ての銀行識別コードがナゼだかわかる仕組みで…」

「おい、ソコのハッカー!やって良いコトと悪いコトが…ってか、そもそもソンなコトは出来ない仕組みだろ?」

「ソコはソレ、首相官邸からの圧力って奴ょ。今の中央銀行は、どの国も政治の言いなりだから」←


ソレを聞いて、ますます僕は心配になるw


「ルイナ、日銀に借りを作ったのか?」

「いいえ。貸しを帳消しにしただけ」

「なら…良いか」←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


97秒後。


「テリィたん、コードが来た。最初の4文字は銀行、次が国コードと支店コードね」

「TSって何処?」

「南洋の楽園だわ。日焼け止めが必要」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


南洋の楽園。珊瑚礁のリゾートホテル。

プールサイドでうたた寝してるレイク。


「カクテルならソコに置いといてくれ」


デッキチェアで午睡中だったレイクは、警官の図太い指に掴まれ手荒く起こされる。

意識が混乱スル中、まるでスローモーションのように姿を現すのは…ミクス検事だ。


…もみ合いで暴発した…被告は無罪…マリカを殺した…必ず捕まえる…脳内で言葉がフラッシュバック。コレは白昼夢?


傍らでビキニ美女が呆気にとられている。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の捜査本部。解散が決まり、後片付け中だ。


「僕は、今から20分後にホットな約束がアル!」

「あ、あのロービー娘ね?姉様、テリィたんは女子大生にモテてました」

「まぁ。テリィ様はローストビーフに目がナイから」


話をややこしくスル者、汝の名はヲタッキーズw


「なぁエアリ。ヲタッキーズの副主任を目指してルンだって?」

「え。何処で聞いたの?未だCEO様に話すレベルでは…」

「信頼出来る筋からの情報さ」


その時エアリのスマホに着信音。ムーンライトセレナーダーのサイン入りの"推薦状"が届く。エアリの顔が輝く。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ミクスは、最高検察庁でマリカの弟と握手を交わして別れ、リモートアプリで僕と会話スル。


「弟さんの様子、どうだった?」

「犯人が捕まったコトは喜んでたけど、ソレでお姉さんが戻って来るワケじゃナイ。彼も私も道を見失った気分ょ」

「そんなコトないさ。道はアル。今は見えナイだけだ」


ミクスは、ポツポツ語り出す。


「初めて話すけど、ラッツ(僕ですw)と同棲してた頃、1度ロースクールをやめかけた」

「え。どうして?」

「法哲学の講義で聞いたの。ニーチェ曰く"力の差がある社会に本当の正義は存在しない。弱者は強者に敵わない"。打ちのめされたわ。でも、やめなかった。そして、今でも弱者のために戦ってる」


PC画面のミクスは僕を見る。僕が話す番だ。


「ミクス。君は君の道が見えているんだね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


最後にルイナのラボ。


「ルイナ、徹夜するつもり?事件は解決したのょ?」

「多分ね。でも、1人を捕まえるだけじゃダメだと思う」

「その1人を野放しにしとくよりマシでしょ?」


車椅子の超天才は考える。


「でも、犯罪者は次から次へと現れるわ」

「貴女の頭脳を使って、この世の犯罪を全て無くすコトを考えてる?その発想、現実的なの?」

「どうかな。でもね、毎日ズッと弾痕を塞いできた気分なの。ホントは銃弾ソノモノを無くしたいのだけれど」



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"訴訟コンサルタント"をテーマに、訴訟コンサルを雇って無罪を買う武器商人、内部告発して殺されるメイド、訴訟のプロを名乗るコンサル、コンサルに雇われたハッカー、詐欺師、コンサルに操られる裁判員であるシングルマザーや破産寸前の元銀行家、訴訟コンサルを追う超天才や相棒ハッカー、元カノの次長検事、ヲタッキーズに敏腕警部などが登場しました。


さらに、ヲタッキーズ内の昇進話や対症療法的に犯人を追う者の葛藤などもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、すっかりインバウンドに覆い尽くされた感のアル秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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