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人口比率が『エルフ80%、人間1%』の世界に、 チート能力もなしで転移した俺が「勇者」と呼ばれるまで  作者: フーラー
第1章 弓士団試験

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人間の老爺とエルフのロナ

合格発表の日の朝、セドナ達は小さな民家に足を運んでいた。


セドナが剣を譲り受けた老爺の自宅だ。

二人は、老爺に試験の話をしていたようだ。

「で、今日が合格発表なんだよ!」

「ほう、そうか。ワシの剣は役に立ってくれたか?」

「ああ、ありがとうな、爺さん!」

そういうと、セドナは頭を下げた。

今日は試験が無いので、剣は持参していない。

人間が武器を持っているだけで、周囲は不審者としてこちらを睨みつけるせいでもある。

「それならよかった。ワシはもう剣は振ることが出来んから……。大事に使ってくれ」

「ああ、そうするよ」

楽しそうに話す二人を見て、チャロは少し不満そうな表情を見せた。

「ねえ、セドナ。こんなジジイと話してもつまらないでしょ?もう行こうよ?」

無遠慮に話すチャロだが、その口調には親しみがこもっている。老爺はその発言に怒るような口調だが、やはり本心で怒っている様子は見られない。

「何を言うか!相変わらず、チャロは礼儀知らずじゃな!こう見てもワシは若いころはな……」

「砦で戦ってた話でしょ?その話、もう聞き飽きたよ……。私だってセドナと話したいのに……」

「別にいいではないか。お前さんは、どうせセドナと結婚したら、いくらでも話が出来るのじゃから……。ちょっとくらい、ワシに譲ってくれんか?」

「け、結婚って……」

セドナはそれを聞いて、顔を真っ赤にした。が、逆にチャロは嬉しそうにうなづいた。

「ジジイ、たまにはいいこと言うんだね。ま、もうちょっと大人になったらだけどさ」

「ま、まあ、その話はおいおいするとして……。ところで、その服破れてるな。ちょっと貸しなよ」

それを遮るように、セドナは話題をそらすべく、近くにあった服を手に取った。

「あれ、これ女物だよね?」

不思議そうに尋ねるチャロに、老人が答える。

「ああ、それはワシの妻のものじゃよ」

「へえ、爺さんって奥さんが居たんだ?」

老人とセドナ達が知り合ったのは、ここ数か月のことだ。

重たそうに荷物を背負っている老人をセドナが手助けして依頼、何かと世話を焼いている。

逆にセドナが王国語を覚えるときには、老人の家の書籍を借りて勉強をしており、助け合いながら生活していた。

だが、妻がいることはセドナ達は知らなかった。

「朝が早い仕事じゃからな。あと、昨日は泊まり込みになったそうじゃ。ワシは、そんな頑張る妻の食事を作るのが、今の生きがいなんじゃよ」

「へえ。あんた、料理が出来るようには見えないけどね」

「そうでもないぞ。ワシはこう見えても料理は大得意でな。中でもボルシチは町の娘から大評判で……」

「あーはいはい、分かったよ。老人は話が長いから嫌いだよ……」

うんざりした様子で、チャロは手を振りながら椅子に座りこんだ。

「……よし、出来たぞ、爺さん」

機械のような正確さで直された衣服をみて、老人は驚いた表情を見せる。

「ほう、セドナ君はよくできた夫じゃの」

「でしょ?」

「チャロとは大違いじゃな。いつも力で解決しようとするからな。チャロの格闘技の才能は認めるが、点は二物を与えず、ってところじゃろう」

「少し黙りなよ、ジジイ!」

「おお、怖い。その手を振り下ろされたら、ワシ死んじゃう~」

「ったく、年寄りだからって……!」

軽口をたたきあうが、その光景はどこかほほえましい様子であった。それを見て、セドナはほほ笑んだ。

「ハハハ、待たせて悪かったな。そろそろ行こうか、チャロ?」

「うん。受かってると良いね。じゃあね、ジジイ。生きてたらまた会おうね?」

「そうじゃな……。二人とも、兵士になっても死ぬんじゃないぞ?」

兵士として戦った過去を思い出したのか、少し切なそうに、老人は手を振った。


それから、数分後、老人の妻が帰ってきた。

……ロナだ。

「ただいま。仕事が長引いたせいで、泊まり込みになっちゃってごめんね」

「おお、お帰り、ロナ。朝食が出来ておるから、食べるといい」

「いつもありがと。……あれ、ちょっといつもと違うね?」

「ああ、近所の若者が作ってくれたんじゃよ。後、服も直してくれてな……」

老人はそういうと、セドナが作ってくれたスープを妻に振舞った。

「へえ、その若者ってどんな人?」

「おお、今どき……いや、いつの時代でも感心な子じゃよ。確か名前は……セドナと言ったかのう」

「……え?……そう……」

それを聞き、ロナは押し黙った。


それから、二人は試験会場前の掲示板に立っていた。

「あれ、今日はあの嫌みな女はいないんだね?」

「そういうなよ。……というより、妙にエルフが少ないな?奥に引っ込んでんのか?」

セドナがあたりを見回すが、今日は不自然なほどエルフは姿を見せていなかった。

「まあいいや、で、私たちは……。あった!」

「お、俺もだ!」

掲示板を見ると、二人のは受験番号は、どちらも存在した。

「やったよ、セドナ!」

そう言いながら、チャロはセドナに抱き着いた。

「けど、驚いたね。人間の合格者は私たちだけだったんだ?」

「まあ、受けてた人が少なかったからな。早速、合格証をもらいに行こうか!」

「うん!」

そういうと、セドナ達は会場内に入っていった。


「ああ、セドナとチャロ……か。合格おめでとう」

「ありがとう。これから、一緒によろしくお願いします」

礼節を持って挨拶するセドナに、証書を渡す係のエルフは少し恥ずかしそうに頭をかいた。

「あ、ああ……。それと、セドナ、だったね?」

「なんだ?」

「君は、何でも筆記で満点だったそうだね」

「え、そうだったのか?」

「それで、ルチル姫直々に、挨拶をしたいそうだ。すまないが、これは命令だそうで謁見に向かってくれないか?」

「む……私は一緒じゃダメ?」

チャロは少し不服そうに、セドナと組んでいた腕に力を込めた。

「すまないが、絶対にセドナ一人で来いとのことだ。多分、お褒めの言葉をもらえるだけだろうから、すぐに行きなさい」

「分かりました、すぐ行きます。……じゃ、ちょっと待ってろよ、チャロ?」

「うん。……誘惑されても、絶対に断ってね?」

その発言に、エルフはビクリ、と震わせたが二人は気づかなかった。

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