第7話 私は昔馴染みと遭遇する。
うーむどうしようか、これ
目の前には、とても健康的で美味しいそ...いや、手首に大きな火傷跡のある腕がある。
何故こうなったかは明確に理解している、私がちぎり取ったのだ。
こうなったのは少し前。
私は龍との戦いの余韻に浸っていた。
戦いの後遠くから気配を感じ取った。
その数は17、存在感を放つ4つの気配を中心として、前に6、後ろに4、更に離れてぼんやりとしたのが3つ。
龍に比べればなんて事ないけど、一つ無性に懐かしさを感じさせる気配があった。
その気配の正体を確かめようと意識を向けると道中の小さな気配が一斉に動き出し私から逃げるように一行へ向かっていった。
逃げる気配は一行と出会すと6つの気配が一瞬膨らみ、小さな気配が次々と消え、一行は何事も無かったかのように殆ど足を止める事なく進み続ける。
遂に一行は私のいる荒野に出た。
その光景に驚き動きを止め、私もその中の人物を見て驚いた。
一行の内訳は画一化された鎧に身を包んだ兵士が6人、魔法使いや僧侶と言っだ装いをしたのが4人、そして中央の4人、個々人それぞれが異なる装いで明らかに質の良い装備をしている。
その中で1人、一際目立つ美女がいた。
吸い寄せられるよう程黒く長く艶やかな髪、鋭く冷たい光を浮かべる目、身長は高く手足がスラッと伸び、一見細く見えるがしっかり鍛えられ引き締まり整えられた体。
そして、髪色と合わせて配われた黒を基調としたドレス風の服と革鎧。
その姿は大人びていて見ているだけで高揚し、吸い寄せられそうになるその美しさ。
そんな美貌を持つ女性は私がよく知る人物で、目を疑った人物。
彼女の名前は烏羽 愛香、とてもとても深い付き合の友人だ。
異世界でも相変わらず綺麗な愛香ちゃん、今すぐにでも話したい衝動に駆られたけれど、この虫の姿はあまり見て欲しくない。
話したい衝動を抑え意識を他の3人に移す。
1人は中背で線の細い目隠れ美男子、身長より大きい手の込んだ装飾のついた杖とローブを着ている。
もう1人は目隠れの子より少し背が大きい、目つきの鋭い女の子。
白色の修道服と巫女服を足したような格好で、凝った意匠の錫杖を持っている。
そして3人目。
愛香ちゃんより背の高い赤髪のイケメン騎士。
所々紋様が入った煌びやかな鎧を着ているが武器らしいものは無い。
他に特徴的なのは首から指輪をネックレスのように下げているぐらい。
3人ともその格好と扱いからしてクラスメイトだと思う。
目隠れ男子が涼川 碧くん、鋭い目の女の子が山吹 華ちゃん、赤髪騎士は明道 漣くん。
3人とも愛香ちゃんからよく聞く3人組の特徴とほぼ一致している。
名前は散々聞いたし、新学年のクラスメイトだ、ただ3人と面識が無かったのと記憶にある姿と雰囲気が違ったので知っていたとしても気付けなかったかもしれない。
一行、主に愛香ちゃんとクラスメイトの3人を見ていると1人こちらに気付いたようだ。
イケメン騎士くん事明道くん、相当離れている私に気付くとは随分目がいいようだ。
その直後、全身を四方八方から見られているような不快感が襲った。
まるで全身を舐め回されているような感覚に拒絶の意識を向けると、不快感は弾けるように消えた。
その瞬間、呆気に取られている人物がいた、不快感の犯人は涼川くんだった。
そして偶然は重なり、驚く涼川くんの腕には私にとって許されざるものが残っていた。
それを見た瞬間、私は涼川くんに対し不快感と苛立ちを向けていた。
私自身怒りの感情を露わにするのは珍しいと自覚している。
恐らくワタシからも去来する感情なのだろう。
そして唐突な怒りで理性が薄れた私はクラスメイトに襲い掛かった。
そして現在に至る。
手元には大変美味しそうな、血の滴るクラスメイトの腕がある。
何をしたかは理解している、クラスメイトを襲い、戦いを演じながら遊び、油断した瞬間に涼川くんの腕を、言葉を使って意識を向けさせ奪った。
うーん、どうしたものか
長い回想の果てに、再び同じ悩みが襲う。
どうしたものか考えていると血相を変えた愛香ちゃんが渾身の踵落としを決め盛大に土煙を巻き起こした。
何故か腕に土が付くのを嫌った私は、逃げる愛香ちゃん達を横目に腕に土がかからないよう私付近の土煙だけを払った。
その時腕から滴った血は私の食欲を促進させ、腕が汚れる前に食べるべきと決定付けた。
そう決めた瞬間私の体は勝手に動き出し、逃げ出すクラスメイトを前に腕を丸呑みした。
腕は甘美な味わいだった、龍の肉を食べた時も対して味を感じていなかったのがこの腕を口に入れた瞬間、強烈な甘さと旨さが全身に広がり龍とは違い、全身を震わせるほどの多幸感で満たされる。
《権能を収集しました。権能を獲得できませんでした。収集量が不足しています。収集情報より下位権能の獲得を実行。権能『探知』を獲得。肉体の最適化が行われます》
満たされた感覚の直後、ドクンと体が震えると共に頭に声が響き、視界が暗転した。
なっ、に、これ
直ぐに視界は元に戻ったが景色が変わって見えた。
4人が馬車に乗り込む瞬間、それぞれに文字が浮かび上がって見える。
華ちゃんには『癒し手』と、明道くんは『守護者』、愛香ちゃんは『解放者』、涼川くんのは文字化けしていて読み取れない。
これが何を意味するのかは文字通りの事しか分からない、が今気になるのは華ちゃんの癒し手だ。
それを見た私は残していた龍の骨と鱗を回収しに荒野の中央へと戻った。
襲い掛かった時の衝撃で骨と鱗が辺り一帯に飛び散っていたが突如得た能力で位置を特定して回収し、2人の乗っている馬車に向かった。
馬車で去ってく一団に追いつき、またも能力によって華ちゃんの位置を特定し侵入した、予想通り涼川くんもいる。
「......‼︎」
必死になって治療しているせいで滝のように汗をかいている華ちゃんは私の唐突の訪問に顔を青褪めさせている。
華ちゃんの目は恐怖に染まり体は小刻みに震えているが、涼川くんを包む優しい光は途切れる事なく輝いている。
何とか恐怖心をおさえようと手を振ると、余計に華ちゃんは体を震わせる。
それでも光は途切れる事なく輝いている。
「さっきはごめんね、取り敢えずコレ使って、治るかは分からないけど、効果はあると思う。居たら怖いだろうからすぐ出るから、本当にごめんね、バイバイ華ちゃん」
慌てて手を合わせ頭を下げ謝罪の意を見せ、龍の素材を涼川くんの近くに置いた。
伝えた言葉も何処までちゃんと伝わっているかは分からない、私は喋っているつもりでも実際はくぐもっていて部分的にしか聞こえない。
そのままいても怖がらせるだけと思い、伝わらずとも思う事を告げ、そそくさと馬車から去った。
本当に効くのかは気にはなるけど、こんな事になった原因が行くのはどうかと思うし、華ちゃんが私に向けたあの目、怪物を見る目をしていてそれがとても辛く感じた。
小高い木の上から森の中を走っていく馬車を見送り私は荒野へと戻った。
*****
「・・・さん?」
訪問者が去った馬車の中で呆然としていた。
今の一瞬の出来事がなんだったのかうまく消化できず理解できていない。
不意に溢れた言葉も誰の名前をを言ったのか自分自身分からずにいた。
「ゲホッ、は...な」
「待ってて今治すから」
困惑する思考で治療の手が止まり、治癒魔法の弱まってしまいアオの苦しそうな、そして心配するような声が溢れる。
その声を聞き、困惑する思考を払い除け、治癒に集中する。
アオの横には訪問者が置いていった謎の骨と鱗がある。
それはとてつもないエネルギーを感じさせるが、どうすればいいのか。
こんな時こそアオがいれば分かるのに。
「大丈夫、アオは私が絶対治すから」
手段はある、覚悟しなさいハナ‼︎
一瞬、弱気になる私を強い想いで奮い立たせる。
そして覚悟を決め、治癒魔法を解き、別の魔法を展開した。
転職&引っ越しで、あれよあれやと時間がすぎ10月は全然でした。
12月は少し落ち着くので書いていけると思うんですが、一月から新しい生活と仕事が始まるのでそれまでに出しておきたいです。
そろそろ森でのお話は終わります。
年内に次の章に入るか年明けになるかは、筆の進み次第ですが是非読んでいただけると幸いです。
ここまで読んでいただきありがとうございます。




