第6話 私と龍の遭遇戦
鬱蒼とした森の中だったそこには、一体の魔物が横たわっていた。
その魔物は人の様な特徴を持った虫だった。
その魔物は見るからにボロボロで、ひび割れた体からは大量の液体が溢れ出していた。
ー死にそうだ。
見るからに瀕死状態のその魔物はそう思った。
そして直ぐ側にある肉を一目見て、体が壊れる感覚を無視して齧り付く。
無理やり咀嚼し飲み込むとひび割れた体が少しずつ塞がり始める。
塞がる最中、魔物の体はメキメキと音をあげ、苦しむ声が鳴り響く。
少しして声が止むと、ひび割れた体は僅かに塞がり、流れ出る体液が収まった。
なんとか生き残った。
深く息を吐き、同じだけ息を吸う。
何度かそれを繰り返し、鳴り響く心臓の鼓動を感じただ生を実感する。
ほんの少し前、私は龍に挑んだ。
キッカケは単純、龍を見つけたからだ。
目が覚め自由に体を動かせるようになり、森の中で堪能していると、上空を羽ばたく龍を見たのだ。
そして私は龍を追いかけ挑んだ。
理不尽な化け物、災害と同義の存在、圧倒的強者、それが私の中の龍のイメージだ。
対峙した龍は大きさこそ私の3倍程の大きさとイメージしていた物より小さいが、イメージ通りの存在感を放っていた。
そして挑んだ結果はボロボロ。
だが、敗北した訳ではない。
顔の直ぐそばに龍の翼がある、根元の部分は肉が見え齧りついた跡が付いている。
この翼こそ私が生き残り得たものだ。
体を動かす度、軋んで痛むのを堪えながら翼を喰らう。
一口食べると、たちまち傷が治っていき、全身に力が満ちるのを感じる。
傷が癒るのを確認し、鱗と翼の膜?も食べていく。
龍の味は美味しい?と疑問に思う味だった。
そもそもワタシの体は味覚が弱いのか無いのか味を殆ど感じない。
嗅覚は機能しているようなので香り立つニオイから私の記憶から味を連想している。
所々焼けた翼とイイ匂いがするだけの生肉
一応食べられるが硬い鱗、それ以上に硬い骨。
鱗は食べるには適さないがそれらも食べると力が漲った、流石に全部を食べる気にはならなかったので骨と鱗はある程度残した。
龍の翼を食べ終えた頃には体の傷は完全に癒、それどころか変化をもたらした。
食べるだけで癒、姿が変わるとは流石龍という事だろう。
というより考えてもしかたないのでそう納得する事にした。
龍の事はさておき自身の変化した姿をじっくり見る。
手足が細く長くなり、背筋がスッと伸びて視線が高くなった。
前は虫が人の様に二足歩行していて前屈みで若干動き辛かったのが、背筋が伸びて真っ直ぐ立てるようになった事で動きに違和感が無くなった。
因みに腕は4本あるが、なぜかそれは最初からすんなり動かせた。
それ以外の変化はよく分からない、触った感じ顔とかも変わってそうだけれど鏡は無いし、辺りに反射しそうな物も無い、人っぽくはなったが相変わらずこの体はどっちか分からない。
虫の雌雄の判別の仕方を知っていれば分かったかも知れないけれど、私は至って普通の女子高生をしていたので知らないし知ろうと思った事もない。
なので、何か体に変化があればよかったけれど結局どちらとも言える姿だ。もしや無性か?
自身の変化を見て考察も程々に終え、彼我の差を思い返す。
龍と私、相対して分かったけれどその力は圧倒的で力の差は歴然だった。
ただ、龍は油断していた。
目の前に現れた私を一目見て少しの間観察した後、興味を失いそっぽを向いた。
観察されていた瞬間は生きた心地がしなかったが、興味を失ってからは隙だらけで襲えるものなら襲ってみろと言わんばかりだった。
単純な力を比べれば当然の判断だろう。
まともに戦えば敗北するのは私だ、ではまともじゃなければ?
答えは龍の左翼が一枚とボロボロになった私。
何をしたかは単純、油断しきった所を全力で、
鱗の少ない翼の付け根を狙っただけ。
当然反撃はあった、一撃でも受ければ致命傷になりかねない力で振るわれる反撃。
当たれば死は必然、ならば当たらなければ良いと言う単純明快な作戦、とても正気では出来ないような作戦で、龍の攻撃を躱し二撃、三撃と続けていき龍の翼をもぎ取った。
実際あの時は正気ではなかったけれど、寸前まで迫った龍の爪や尻尾を思い出すと体が恐怖で震え...ないな、どちらかと言うと興奮する、かな?
ただ最後の龍のブレスは流石に死を覚悟した、咄嗟に翼で防いだおかげで生き残れたしその場から退散できて結果的には一石二鳥だったし死んでないので良し。
一時は瀕死になったとは言え、五体満足の私に対し片翼を失った龍、これは私の勝利でいいのではないか?いや、そうしよう。うん、私の勝利だ。
気持ち的には長い回想を終え、勝利(と言う事にした、)を味わうのだった。
読んで頂きありがとうございます。
最近書く時間が減っていて投稿が遅くなってしまっている。
私事ですが現在転職活動中で11月中もきっと投稿ペースが遅い事でしょう。
11月追記
転職活動自体は終わったのですが引っ越し作業で手間取ってます。
だいぶ時間も開いて後編を出すつもりが話が結構変わるので変えました。
それに伴って各タイトルも変更しました。




