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『ワタシ』と『私』は魔物と人  作者: Libra・ventus
第一章 新たな世界
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第4話 帰還する召喚者

平穏に見える平原の中、緊張感を漂わせるながら馬車の一団が走っていた。


先頭から少し後方に控えた馬車の中、地を走る振動を体に感じながら、ゆっくりと震えている左手を開閉させる。


ぎこちなく動く左手を見るたび、腕を掴まれ、腕を食われる光景がフラッシュバックする。

鮮明に蘇るその光景に鼓動が早まり冷や汗が湧き出てくる。


「大丈夫、大丈夫だ、腕はある」


自分自身に言い聞かせるよう何度も繰り返し、震える左手を隠すように右手で抑える。


「あぁ、そうだ、もう大丈夫だ。」


声をかけられ顔を上げると、煌びやかな重鎧に身を包んだ友人が眉をハの字にしながらコチラを覗き込んでいた。


馬車の中でも重鎧を身につけているコイツはこの世界でも何度も助けてくれた恩人でもあり昔からの親友だ。

そのあからさまな困り顔をしている親友の顔を見ると左手の震えは収まっていた。


「ふふっ、ありがとう、(レン)

「なに笑ってんだ、さっきまでチワワみたいに震えてたくせに」

「そうだね、でも本当にありがとう」

「感謝するなら向こうの奴にしときな、泣いて喜ぶだろうからよ」


そう言ってレンは窓の外を指した。

外にはもう一台の馬車が並走している。

その中にはよく知る二人が居る。


レンと一緒に守ってくれた烏羽(からすば)さん、腕を取り戻してくれた(ハナ)

3人には本当に命を助けられたし感謝しかない。


ただ今回の任務で遭遇した化け物の事がずっと引っかかっている。

僕の能力でも理解しえず、絶望的なまでにあった力量の差、化け物としか言えない生物が結果だけ見ればただ一人も手に掛けず、僕の腕だけを喰らっていった。


「なぁ(アオ)、やっぱおかしい...よな」

「うん、正直思い出したくないけど」

「あぁ、それは同感、でもやっぱりなぁ」

「僕達はあの化け物からなんとか逃げて...いや、生かされた」

「そうだな、完全に手加減された。だけどよ、その手は‼︎...そうか、分かった」


僕の手を見たレンは渋々ながら話を終わらせた。僕らが昔決めた、他人に聞かれたくない話をする時に出すハンドサインを見たからだ。


「歓談中失礼します。スズカワ様、アカミチ様、間もなく王都に到着いたします。王城までは市民にお目見えとなりますので装具の装着をお願いします。」

「はい、分かりました」

「問題無しです、ずっと着けてたので」


御者台につながる小さな戸に向かってグーサインを向けるレンを余所に、横に置いていた鎖帷子と厚手の煌びやかな装飾の入ったローブを着込み、かけてあった杖を持った。


レンは首から下げた指輪から身長よりもデカイ大楯を取り出した。

そのままでは馬車に負担がかかるのでレンの盾に鎧と同じ軽量化魔法をかける。


「さんきゅ」

「どうも、っと、こちらは準備ができました。」

「分かりました、では...《解放(リリース)》」


短い起動句(キーワード)を唱えると、馬車は蒼い光に優しく包まれた。

中を隠す馬車が一転、観光馬車の様に解放的になり、シンプルな見た目が職人の粋が込められた丁寧で豪勢な装飾が施されている。


解放的になった事で嗅ぎ慣れた匂いが風に乗って運ばれていくる。

この世界に来て、早2ヶ月。今や第二の故郷になりつつある王都エルグリンデもすぐそこに見える。


「それでは宜しくお願いします、英雄様」

「あっ、はい」


馬車の壁が無くなり、馬車の御者を務める兵士さんのダイレクトに向けられる満面の笑みに対して僕は生返事を返すことしか出来ない。


いい加減慣れないとなとは思うけど、やっぱり年上に敬われるのは苦手だ。


横目にレンを見るとすっかり顔を作って騎士様モードに入っている。

すぐ後ろに並んだ馬車には華と烏羽さん、白と黒で反対の意匠をした綺麗な装具を身につけている。


気付かないうちに華の姿に魅入っていたら目が合い恥ずかしさのあまり咄嗟に顔を背けてしまった。

一気に身体中が熱くなって、周りの音が遠ざかる。

レンと烏羽さんの五月蝿い声が聞こえてくるが、五月蝿いので当然無視する。


すると、今や聞き慣れた意気揚々とした声が羞恥心を吹き飛ばす様に響き渡る。


『任務を終え、英雄が帰って来たぞ‼︎兵士諸君よ開門せよ、英雄の凱旋だ‼︎』


訂正、また別のものに置き換わっただけだった。


何処から共なく響き渡るその声に呼応して巨大な門は鈍い音を立てて動き出す。

すると門の開く音を掻き消す程の歓声が街から轟いた。


相変わらず人前に出るのが苦手な僕は、城に入るまでの間、緊張しながら作った笑顔を向け手を振る事しか出来なかったがレンはパレードのキャストになったかのように勇ましくアピールしている。


華は気怠げそうにしながらしっかり反応しているし、烏羽さんは...優雅にお茶を飲んでて華しか見てない。


未だに人前に出るのは恥ずかしいままだけど、こうして歓声に包まれると、漸く帰ってきたんだなと思えた。

読んでいただきありがとうございます。

中旬には投稿するつもりが、いつの間にか時間が過ぎ、今日に至ってしまいました。

次話はちゃんとしたバトルシーンがあります!投稿は早めにします...


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