第3話 ワタシと森と恐怖
ピチャ、ピチャ
うーん、何か滴ってくる...
ピチャ、ピチャ、ピチャ
ほぼ一定の間隔で生温い何かがワタシの体に当たる。
おかげで、薄れていた意識が徐々に覚めていく。
ブブブブブブブブ
バシッ、バシッ
意識が戻るにつれ周りの音が聞こえ始める。
最初は小さな音に感じていたのが、体が揺れ動くほど五月蝿く感じ始める。
えーい、さっきから五月蝿い!ワタシが気持ちよく眠ってたってゆーのに...
意識がはっきりとし、音の正体を見る為目を開けた、すると中々の光景が目に飛び込んできた。
眠る前作り上げた繭の開いたままの天井に巨大な虫が覆いかぶさり頭を突っ込んで?いた。
ただ、虫の頭は繭の穴からは中に入っておらず、繭の中に入っていたであろう部分だけ抉れそこから体液がポタポタと垂れてワタシの体に降り注いでいる。
襲撃者の姿にギョッとしてると、繭に衝撃が走った。
すっかり辺りは明るくなり繭の外が透けて見え、繭の外には異様に大きな足がある。
時折、襲撃者はその足で強く繭を蹴り付けている。
それと同時に複数の翅で体を持ち上げようと
羽ばたかせるが、頭が繭に張り付いているせいで体だけが持ち上がる。
飛ぶのを諦めた襲撃者は体が浮いた状態から繭に向かって体を打ち付けながら大きな後ろ足で蹴り付けた。
「ぴきゅ」
繭の真横からの衝撃で思わずワタシの体が小さく浮き上がり、声が漏れてしまった。
「キシャァァァァ‼︎‼︎‼︎」
襲撃者は、ワタシの声に反応し、体液を繭の中に撒き散らしながら叫んだ。
ただ、それは叫ぶこと以外抵抗できないが故に叫んだ、小さな足掻きに感じられた。
小さな足掻きを見せてから、程なくして繭を襲撃してきた虫は力尽きた。
暫くじっと見つめていたが、力無く繭にのしかかる襲撃者を見て、繭の外へと出た。
繭はワタシの体液を付けると柔らかくなり簡単に破れ出られた。
ここに来た時は暗く余り辺りを見れなかったが、明るい今はよく見える。
気持ちのいい日の光に照らされ体をぐっーと伸ばし辺りを見る。
今いる木が相当高く、足下に木々が見え、ワタシの食事跡も草が一つも生えていないのでしっかり見える。
近くには同じ高さの木はないが、少し離れた場所に一本、また離れた所に一本、同じかそれ以上に高い木が生えている。
そしてその先には紛う事なき巨大な樹があった、その木は大きく、雲の上まであるんじゃないかと思うほど巨大だ。
そうやって遠くにある巨大樹を眺めていた時、ズンッと周囲の空気が重くなった。
その瞬間ワタシの体は初めて脱皮した。
ワタシの体は凄まじい速度で脱皮を行い、繭の中へと入り込んだ。
するとその場に残った抜け殻はグシャっと潰れ、繭の上の虫ごと押し潰れた。
ただ繭は3分の2ほどが押し潰されただけで、ワタシ自身は繭で守られた。
重い空気は続き、その間ワタシは震える体を堪え兎に角気配を消していた。
気付けば重い空気はなくなり元の穏やかな空気に戻った、少しして震える体は収まった。
怖かった、そう、怖い。
初めてワタシは恐怖というのを感じた。
知識としての恐怖はあった、だが実際感じた恐怖は、ワタシが知っていた以上に悍ましいものだった。
ほぼ無意識で起きた無理な脱皮でワタシの足はいくつかダメになってしまったが幸いそれだけ。
足の殆どは残っているし動かせる、歩くには問題ない。
ワタシの思考は、色々な事が駆け巡っているが、何よりこの森を早く出なければならないと叫んでいる。
自身の状態を確認し、繭に孔を開ける。
巨大樹の方は見ない、というより見れない。
見た瞬間再びアレが襲い掛かるかもと考えただけで体が震えてしまう。
巨大樹を背に、外を見る。
相変わらず森が続くが、所々に生えている木が奥になるに連れ普通の木の高さと同じになっている。
木の量も巨大樹から離れるにつれ減っている、つまりは向こうであれば森から出られる。
即座に進むべき方向を定め、巨大樹に向かって姿を晒さないよう慎重に繭から出て木の側面を這い降りる。
木の幹を這い降りる最中、ワタシという支えを失い繭が潰れた瞬間、空気がズンと重くなり、その直後繭のあった枝が吹き飛んだ。
寸前までそこに居たという事実が思考を恐怖で塗り潰していく。
ワタシは再び恐怖に苛まれ、決して巨大樹から身を晒さず、森の外を目指した。
この時、ワタシの思考は恐怖に支配されていた為に、自身に対して抱いていた疑問を暫くの間忘れてしまうのだった。
読んで頂きありがとうございます。
月末に出すと言って、結構ギリギリになってしまった。
なるべく今のペースで出していくのでよろしくお願いします。




