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『ワタシ』と『私』は魔物と人  作者: Libra・ventus
プロローグ
1/8

第1話 転生

この世界は現実ではあり得ない、幻想とされている事が現実の世界の物語。


その世界では魔法が存在し、勇者が魔王に立ち向かう英雄譚が実在する。


ある日、勇者と魔王の戦いが起きた、その戦いは歴代の戦いを凌ぐ凄まじきものだった。


ただ勝利の女神は魔王の元にやってきた。

その戦いによって勇者は(たお)れ、魔王を恐れる国が新たなる勇者を外界から呼び出そうと画策した。


本来成功するはずも無いその試みはなんの因果か成功してしまう。


それによって本来交わる事の無い世界が混ざり込み世界中に異変が起きる事となる。


異界から迷い込んだ転生者や召喚者と言った存在が徐々に変化と混乱を呼び起こす。



*****


ある日、異変が起きた。

異変が起きたのは高校の教室、その日は面倒な授業があったが最早どんな内容だったか覚えていない。


問題を当てられたクラスメイトが黒板に向かっている時にそれは起きた。

その子の足元から幾何学模様の陣が現れた。


そこからは酷いものだった、その子の近くに座っていた子は、机が押し潰され程強い力で押さえつけられて床に突っ伏し、陣の外側にいる子は様々で、熱いとか寒いとか痛いだとか叫んでいた、人によっては身体から血が出ていた。


私は陣の外側だった。

身体中熱いし痛かったけれど周りを見る余裕があった。


何故なら私はその時喜んでいたからだ、

あぁ、ようやく死ねるんだ ってね。


でもその喜びは、期待通りにならなかった。

なぜなら私は転生したからだ。


*****


バキバキバキバキメキメキメキ

カサカサカサムシャムシャムシャ


鬱蒼とした森の中、巨大な生物が2種類の音を鳴り響かせながら一直線に突き進んでいる。


一つは植物を薙ぎ倒す音、もう一つは咀嚼音、その生物が通った場所には苔一つ残らず地肌が現れている。


その音は夜になると止み、朝になると再び音を立てて進む。


その生物はただただ愚直に、目の前に何があろうと真っ直ぐ進んでいる。


それを私は俯瞰した視点から見ていた。


今森を貪っている巨大生物はワタシだ。

ワタシであって私では無い、その正体は私が転生する筈だった生き物だ。


本来は小さな芋虫で、ごく僅かな自我が私で塗り潰そうとしている時、転生なんてしたくない私はなんとか自我を守って結果こうなった。


小さな芋虫の自我は守られ、私は思考だけできる意味の分からない事になっている。


流石に完全には止められなかったようで、度々虫とは思えない行動をとっている。


も今正にそうなのだが、何故か森の植物を食べながら一直線に進み出し巨大化している。

まぁその何故かに心当たりはあるのだが。


どうやらこの時は無意識状態にあるようで、私は自由に思考する事が出来る。


どうも私はワタシの意識がある内は自由に動けないようだ、ワタシの意識が動き出している間、私は思考はできても薄ぼんやりした状態になってしまいワタシが寝る際は私も眠ってしまう。


自由では無いと言っても今みたく頭脳をフル稼働出来ないだけで起きている事に対して理解と判断ぐらいは出来る、ただただ自発的に周囲を見たりが出来ないぐらいだ。


ワタシが目覚めるまで毎日毎日思考を重ねるが、最初の頃以外目立った変化がないので流石に退屈である。


変わらぬ森の景色に飽き飽きしていると、目前に人の集団が見えた。


「□□!□□△○○△!」

「□□□!〇〇△!」


ワタシが大きいが為に小さく見えるが、よくわからない言葉?を喋る人間の商隊がこちらを見つけ慌てている。


それなりに規模の大きい商隊のようだが残念なことに商隊はワタシの真正面にいる。

無い手を合わせて祈っていると数人の護衛達がこちらに手を翳し、何やら同じ言葉を重ね唱えている。


「「「○○○○○△○△×○△○○△×《◎◎◎◎◎◎◎◎》」」」


護衛達の言葉と共に大きな魔法陣が馬車とワタシに割り込むように連なって展開され、陣の中央でエネルギーが収束していく。


恐らく火に属する性質を持つであろうそれは、護衛達が一層語調を強めて言い放ったと同時に、熱線がワタシの頭に直撃した。


ピシャャャャャャァァアアア


いくらかワタシにも効いたようで悲鳴か苦痛かワタシの鳴き声が響く。


痛みによって、ワタシの意識が目覚め、私の意識は自由を失っていき深層へ沈んでいく。


その最中、ワタシは周囲ごとその商隊を1呑みにしたのを見て再び私は手を合わせた。

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