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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

革命軍の男

作者: バナナウンコ

3月17日

俺は、魔法貴族どもが憎い。

1人でも多くの魔法貴族を殺し、連中の使っている魔道アーマーを1体でも多く破壊せねば。

だが、いまの革命軍には、戦力が足りない。

魔法貴族たちと太刀打ちできる最新の「魔法杖」も足りない。

俺たち平民の使う魔道杖では、魔道アーマーは傷ひとつつかない。

なんとか、対抗できる手段を見つけなければ。

捕らえてきた平民たちを城の中でもてあそんでいる魔道貴族ども。

人の皮を被った獣どもめ。














5月20日

今日、魔道アーマーに同志が3人やられた。

魔道アーマーには普通のやり方ではかなわないと言ったのに。

Cのやつ、「数人で同時に、同種の魔法を叩き込めばいけるはずだ」「A、きみも一緒にやろう」とか言ってたな。

そんなもので倒せるようなら、今まで何十人も殺られてない。ばかめ。

魔道アーマーは、鉄の鎧を10枚重ねているようなものだ。

平凡な魔道杖からマジックミサイルを撃って直撃させても、魔道アーマーはびくともしない。

ただの兵隊なら、10人まとめてバラバラにできる魔道杖も、魔道アーマー相手ではパチンコと変わらない。

俺たち革命軍の持っている武器は、平凡な魔道杖ばかりだ。

由緒ある大霊樹から切り出して作られた霊杖や、ミスリル銀から作られた物とは、比べ物にもならない。

高位の聖職者や、高位の魔道貴族の骨から作られる魔道杖なら、それに匹敵する威力があると聞く。

1人だけでも、魔道貴族を殺せたら、道は開けるのだろうか?















6月1日

魔道貴族どもが、城外で平民狩りをしていた。

平民たちも、弓や剣で抵抗していたようだが、魔道アーマーには傷ひとつついていない。

魔道騎士たちの魔法で戦闘能力を失った平民たちが、魔道アーマーのアームですりつぶされていくのを、俺はただ遠くから使い魔で見ているだけだった。

俺たち革命軍は、無力だ…。



















9月13日

城内にいるスパイから、革命軍のD支部に情報が入ったそうだ。

吉報だと良いが。
















9月15日

なんと、D支部は、魔道貴族を1人捕らえたらしい!
















9月16日

同志のEから、D支部の話を聞いた。

捕らえた魔法貴族を拷問して、魔道アーマーの仕組みがわかってきたそうだ。

お忍びで、城外に出てきた魔法貴族を、革命軍のD支部が全員決死隊となって拉致してきたんだとか。

普段、城外の平民狩りは、魔道騎士たちの部隊がやるんだが、先日は何を思ったか、魔道貴族様じきじきに出てきていやがったんだ。

城内のスパイから来ていた情報は、「今日の平民狩りは、魔道貴族が1人出てくる」というものだった。

場外の平民を、スポーツ感覚でハンティングしていやがった外道貴族だ。

城外で、護衛の魔道騎士たちも大勢いたから、魔道アーマー無しなのに、油断していたんだろうな。

いい気味だ。

D支部の革命軍は、8割が魔道騎士によって殺られたそうだが、生き残りがなんとか魔道貴族を捕まえたそうだ。

さて、肝心の魔道アーマーの仕組みだ。

どうも、そいつの話じゃ、魔道アーマーは人間の魂を燃料にして動いているらしい。

魔道杖は、俺たち人間の中にあるマナとか、魔素と呼ばれるものを燃料にして、そのパワーを増幅してマジックミサイルにするものだ。

魂まるごと飛び込んで燃料にするなら、魔道アーマーのあの底抜けの出力も頷ける。

捕らえたクソ貴族の話じゃあ、城内の地下牢で、外で捕まえてきた平民をガッチリ拷問してから、魂を抜き取り、核となる部分に入れ込むんだと。

魂を抜き取るのには、別に拷問する必要はないらしく、そいつが言うには「楽しいからやっていた」だそうだ。

そういう事だから、D支部の連中も、そいつで楽しませてもらうだろうな。

そいつが死んだあとは、革命軍の魔道杖になってもらおう。
















9月21日

D支部が捕らえた魔道貴族は、死んだそうだ。

もう魔道杖は作ったんだろうか?























9月23日

D支部が、魔道貴族たちの襲撃にあったらしい。

D支部の連中は、魔道アーマーの魔道砲でほとんど即死したそうだ。

たまたま生き残った連中は、城内に連れていかれ、尋問されているらしい。

なんでD支部の場所がバレたんだ?

魔道貴族の骨から作った魔道杖は通用しなかったのか?






















10月2日

同志Eが、行方知れずになった。

先日、魔道貴族を拉致してやっつけたD支部が、魔道騎士たちの襲撃をくらって全滅したことにビビったのだろうか。

革命軍のアジトの数は多くない。

魔法貴族どもに知られたら、しらみつぶしにやられてしまう。

幹部たちは、どうしたらいいか、会議をしている。

そんなことしている場合じゃない。

今すぐこのアジトを引き払い、逃げなければ。


  










































11月10日

俺のいたF支部が、魔道貴族から襲撃を受けて、今日で1ヶ月くらいだろうか?

残っている革命軍は、何人いるんだろうか。

城外のアジトはすべてやられたのだろうか。































12月4日

俺の人相書が、城下町に出回っている。

連中に捕まるわけにはいかない。

死ぬ前に、なんとか魔道貴族どもに一泡吹かせたい。






















12月15日

Eを城下町で見かけた。























12月21日

Eの隙をみて、魔道杖で脅して、今の隠れ家に引っ張り込んだ。

Eは「私は何も知らない」「死にたくなくて、逃げただけだ」という。

なんてやつだ。

とりあえず、魔道杖で弱めのマジックミサイルを手足に撃ち込んで、動けなくしておいた。

















12月25日

連日、Eを責め続けていると、とうとう吐いた。

Eは、魔道貴族どものダブルスパイだった。

革命軍のど真ん中にスパイとして入り込み、革命軍に誤情報を流し、さらに革命軍の支部の所在地を密告していた。

いい度胸じゃないか。

Eは、功労を讃えられ、魔道貴族に昇進するそうだ。

それなら、さぞいい魔道杖になってくれることだろう。









































12月28日

Eを解体して、いい魔道杖にするのに手間取った。

































(日付なし)

Eが原料の魔道杖を試射してみた。

威力はまずまずだ。

これなら、きっと魔道アーマーを倒せるだろう。

俺の恋人を、魔道アーマーの燃料にしやがった魔道貴族どもを倒せる。






  








(日付なし)

魔道貴族どもは、閲兵式をやるらしい。

もう、そこしかない。

この魔道杖なら、魔道アーマーも倒せるだろう。

見ていてくれ、B子。













(日付なし)

閲兵式当日だ。

俺は、やるぞ。

もうすぐ、あの世でB子に会える。

(ここで日記は途切れている)

















































………ふう。

見たかね、諸君。

これが、先ほどの閲兵式で、わけのわからんことを言いながら魔道杖を乱射した男の手記だよ。

幸い、E男爵の報告のもと、閲兵式の魔道アーマーはすべて無人の自律型の魔法誘導にしていたため、われわれ貴族の犠牲者はいなかった。

「魔道貴族の骨を使えば、強力な魔道杖ができる」という誤情報もよかった。

ふふふ、そんなわけがないだろう。

われわれ生粋の魔道貴族ならともかく、ポッと出の成り上がり貴族の体に、魔素やマナが備わっているはずもないのだよ。

最下級の男爵の骨から作られる魔道杖の威力など、たかが知れている。

それすらわからないのだから、うだつの上がらない平民なのだ…。

彼ら平民は、われわれ魔道貴族に魂を抜き取られ、魔道アーマーの核として、われわれの鎧となり足となることを光栄に思わねばならん。

ふふ…

しかし、女の魂で動かす魔道アーマーはたまらんよなぁ、きみ。

先日の、ほら、B子とかいったか。

あの女も良かった。

最後まで、Aとかいう男の名を呼んで、泣き叫んでいたなぁ。

今も、魔道アーマーに乗ると、B子の温もりを感じ、B子の悲鳴が耳に聞こえる気がするのだ。

やはり、魔道アーマーの核は、女の魂にかぎる。

さて、F子爵、そろそろ魔道アーマーの自律誘導を切ってくれたまえ。

うむ、そう、われわれ全員分の魔道アーマーだ。

どうした、F子爵?

自律誘導が切れない?

魔道アーマーがこっちにきている?

そんなわけないだろう。

よく確認してみたまえ。

…なんだあれは。

なぜ魔道アーマーが…

おい、諸君、待て、おい。

おい、B子くん…か?

B子くんなのか?

まて、まちたまえ、話せばわかる、な、まって、まってくれ、なぁ…痛…

う…ぐ…あ…ひぃ…

































A男さん…

来てくれたのね。

遅かったけど、来てくれた。

ありがとう。

ようやく、思い出せたわ。

私が、誰だったか。

ありがとう。

今から、あなたのいるところに、私も向かうわ。

また、ね。


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