第95話 世界樹に登るの。
レイニィは考えていた。
わざわざお金を払ってゴンドラに乗らなくても、自分には自前のゴンドラがあるじゃないかと。
直径は三キロメートルもある世界樹の中ならば、十分熱気球が使えるのではないかと。
翌朝目覚めたレイニィは早速それを実行に移した。
ゴンドラで一度地上に降り、世界樹の中心付近で熱気球を取り出し、飛び立つ準備を始めた。
そこに見知らぬ人がやってきた。
「ちょっと、そこの人たち、私は警備隊の者なのだが、それはなんだね」
「熱気球といって、空を飛ぶ乗り物なの」
警備隊を名乗る人に声をかけられ、レイニィは素直に答えた。
「世界樹の中でそんなものを飛ばされては困るよ」
「え、駄目なの?」
「駄目、駄目、世界樹の中にはゴンドラがあるんだから、それを使ってよね」
折角いい考えだと思ったのに、禁止されてしまい、レイニィは残念でならなかった。
それなので、レイニィは駄目元で聞いてみることにした。
「あの、世界樹の外だったら使っても構わないの?」
「ん。外か。外なら管轄外だから構わないぞ」
「そうなの。ありがとうございますなの」
予想外に外ならいいと許可が出た。
いや、許可ではないな。
暗に「俺は関係ないから好きにしろ」と言われたのだ。
レイニィ達は世界樹の外に出ると、また、邪魔されないとは限らないので、素早く準備して熱気球で飛び立った。
「おお!確かに枝によって実っている物が違うの」
「レイニィ様、あちらの枝には麦が生えてますよ」
「本当なの。枝の上が畑のようになってるの」
枝の上が畑のようになっていて、そこに麦や豆、野菜なども生えていた。
また、花園になっている枝もある。
「あそこ、幹に開いた穴から人が枝の上に出てきてるの。おーい」
レイニィが手を振ると、枝の上の人はびっくりしていた。
熱気球など、見るのは初めてなのだろう。
熱気球は順調に高度を上げていった。
だが、順調に進んだのは高度十キロメートル位までであった。
「なにか、高度が上がる速度が遅くなっていないか?」
「そういえば、そうですね。それになにか息苦しいような___」
「うーむ。空気が薄くなってるの。熱気球で上がれるのはこれが限界みたいなの」
「なら、世界樹の中に入ろう」
「レイニィ様、あそこの枝なら熱気球で降りられそうですよ」
「それじゃあ、そこに着陸なの」
レイニィ達は枝に着陸し、側の穴から世界樹の中に入った。
「この中だと息苦しさがありませんね」
「世界樹の中は空気が満たされているからな」
「ここからは階段で登りか。ゴンドラを使ってもいいが、どうする」
「今、なん層なの?」
「大体二千層位かな」
「まだ五十分の一しか来てないの。今日は、ここまで楽して来たから、残りは階段を登るの」
そこから二百層程階段で上がり、初日は二千二百層まで登って終わりとなった。
二千二百層付近にも、地上付近ほど過密ではないが、街並み?があり、宿もちゃんとあった。
レイニィ達はそこに泊まり、翌日は最初に階段を登り、疲れて登れなくなってからゴンドラを使った。
ゴンドラは百層ごとに分けられていて、途中で乗り継ぎながら上を目指した。
結構乗り継ぎに時間がかかり、ゴンドラだからといって、一気に上まで行けるものでもなかった。
二日目で三千層まで到着した。
「この調子だと、一万層までいければいいところかな」
アイスが今日の状況から計算して、日数的に到達できるのは一万層までだという。
「十万層。とてつもない数字なの。実際、そんな上に人が住んでるの?」
「どうだろうな。でも、一日五百層登れば、二百日で到着する計算だし。そこで食料と水が確保できれば、住んでいる人がいても不思議ではないよな」
「確か、観光客を相手にした商売を営んでいる者が住んでいるはずだぞ」
「そうなの。観光客がいること自体ビックリなの」
ちなみに水は、世界樹から滲み出てくる場所があるので、飲み水に困ることはない。
次ぐ日からも階段と昇降機を使い分け、お金を節約しながら登っていった。
結局、十日後に一万層に到着した。




