第72話 雷神鳥なの。
熱気球で絶壁の上まで移動したレイニィ達三人は、ライチョウの巣を探して移動を開始する。
気球に一緒に乗ってきた護衛の四人は、また身を隠して、三人を見守ることにしたようだ。
「見てください。あれがライチョウです」
ウォーミィがライチョウを見つけて指を指す。
「あれがライチョウなの。本物は初めてみたの」
「あそこの側に巣があるかしら?」
「サニィお姉様は随分と巣にこだわるの?」
「・・・。実は、ライチョウの卵が欲しかったの___」
「卵なの?」
「この時期、ライチョウの産卵にはまだ早いですよ?」
「わかっているわ___。その・・・。その年、一番最初に生まれた卵には、病気を治す効果があると聞いたのよ」
「お母さんのためなの?」
「まあ・・・、そうね」
サニィは少し照れた様に答える。
「サニィお姉様のお母さんは、お身体が余り丈夫でないの」
「そうなのですか・・・。でしたら、なんとしてでもライチョウの卵を見つけないとですね!」
「そうなの。それなら、あたしも少し本気をだすの!」
「二人ともありがとう___」
「それじゃあ、魔法で卵の在り処を探すの」
「魔法ってそんなこともできるのですか?」
「レイニィ、よろしくね!」
「いくの!」
レイニィは能動探索を使った。
「あっちに大きな卵があるの!」
「大きな卵?」
「行ってみましょう!」
レイニィ達が行ってみると、そこには、直径五十センチメートルはありそうな卵があった。
「これ、ライチョウの卵なの?」
「さー?なの」
「レイニィ。あなたが、卵があるって言ったのでしょ!」
「ライチョウの卵とは言ってないの」
「これ、多分、雷神鳥の卵です!」
「雷神鳥?」
「ライチョウの化け物です」
「なら、この卵でもいいはずなの。むしろ、効果倍増なの!」
「そうかしら?まあ、でも折角だから持って帰りましょう」
「ちょっと待って!何か大きなものが近付いて来るの」
「大きなものですか?」
「それって、この卵の親ってことはないわよね。卵のサイズがこれだと、親の大きさはとてつもなく大きいわよ」
その時、三人を陰が覆い尽くす。
「空から来るの!危ないの。避けるの」
レイニィの叫びで、三人とも影の下から逃げ出す。
そこに、巨大な鳥が舞い降りた。
大きさは十メートル近くあるだろうか。
「雷神鳥です!」
「お嬢様、お下がりください!」
アイス達護衛がレイニィ達を守るため飛び出して来た。
「グオー!!」
雷神鳥は鳴き声を上げると雷撃を放った。
「ぐ」
護衛達は、なんとか防ぐが、痺れてしまい身動きが取れなくなってしまった。
「ちょっと、雷で攻撃してきたわよ!」
「雷神鳥は、名が示す通り、雷魔法が使えます」
「どうするのよ!」
「神鳥だけど、攻撃しても構わないの?」
「それは構いません。むしろ、倒せば褒められます」
「それなら、手加減なしで___」「グオー!!」
レイニィが攻撃態勢に入る前に、雷神鳥は再び雷撃を放った。
護衛が痺れたままで身動きが取れないため、雷撃は直接レイニィ達を襲う。
「キャー!」
「ハッツ!!」
サニィは叫び声を上げて頭を抱え、しゃがみ込むが、ウォーミィは気合を込めて掌打を放った。
ウォーミィの打ち込んだ気によって雷撃が弾かれる。
その様子に一瞬呆気に取られたレイニィであったが、すぐに気を取り直して、雷神鳥に反撃する。
「お返しなの!!」
バリバッチバリ。
レイニィの魔力による直接攻撃、つまり、雷撃が雷神鳥に命中する。
桁違いの雷撃により、雷神鳥は黒焦げとなりそのまま絶命した。
「サニィお姉様大丈夫なの?」
「え、ええ。なんとか___」
「凄いです!」
「凄いのは、ウォーミィさんなの。雷撃を弾いたあれは何なの?」
ウォーミィは興奮気味にレイニィを讃えたが、レイニィは冷静にウォーミィの放った掌打について問いかけた。
「あれは・・・」
言い淀むウォーミィであった。