第2話 女神に会いました。
亀裂に吸い込まれた元少女は、いつの間にか気絶していたのだろう。気が付けば雲の上のような場所にいた。
「ここはどこだろう?雲の上みたいだけれども?でも、これ、水蒸気が凝結した感じじゃないわね___」
雲のような物は、水滴でできている物ではないようだ。
そんなことよりも、雲のような物の上に立っていることに驚くべきだろう。
元少女の感覚は、一般人と少しずれていた。
「あらまあー、今回は人間が落ちて来ちゃったのねー」
元少女は、後ろから声をかけられ振り返った。
そこには、少し困り顔の女神が立っていた。
後光に包まれた完璧な容姿は、神威に溢れていた。
誰がどう見ても女神にしか見えない。
長いハナがあるからと、象を見て、長いツノのカブトムシと間違える奴はいない。
それ程女神という存在は、異質なものであった。
「え!女神様?!と、いうことは・・・。ここは天国!私、死んだの?」
「安心してください。貴方は死んではいません」
「ほっ。ではここはどこですか?」
「ここは第八界の天界になります」
「天界?ということはやはり天国なのですか?」
「天国と言えば天国なのですが、貴方のいた第七界の天国ではありません。第八界の天国です」
元少女は首を傾げる。
「第七界とか、第八界って何ですか??」
「貴方が住んでいたのは第七界の中の世界です。
第七界は天界と世界からなっています。
そして、今、私たちがいるのが第八界で、第八界も天界と世界に分かれていています。
そして、ここは天界です」
「地獄は無いのですか?」
「地獄は天界の一部ですね。天界の中に天国と地獄があります。世界に国があるのと同じような感じですね」
「私が住んでいた所が、第七界の世界の日本国で、ここは、第八界の天界の天国ということですね」
「そうですね。そして、第七界の方が第八界よりも上位にあり、時々境界に穴が開いて、第七界の物がこちらに落ちてきます」
「穴。・・・。あの亀裂のことか!あの、私は元の世界に戻れるのでしょうか?」
「残念ながらそれは無理です。
境界に穴が開いても、可能なのは、上から下に落ちて来るだけで、下から上には上がれません。
第七界から第八界への一方通行です。
貴方が生き続けたいのであれば、第八界の世界で暮らしていくしかありません」
「女神様のお力を持ってしても無理なのでしょうか?」
「私は第八界の管理神です。第七界に戻すことはできません」
「そうですか」
女神様がそう言うからにはそうなのだろう、と、元少女は納得するしかなかった。
「第八界の世界って、どんな所ですか?」
「そうですね。貴方の世界の歴史でいうと中世あたりの生活でしょうか?科学は発展していませんが、魔法があります」
「魔法ですか!ファンタジーの世界なのですか?」
「龍や妖精などもいますから、そんな感じですね」
「私も魔法が使えるようになりますかね?」
「貴方は成人してますからね。それは無理です」
「それは残念。こういう場合何かチート能力を得られるものかと思っていました」
「貴方はただ落ちて来ただけで、召喚された勇者というわけではありませんからね」
「ああ、勇者召喚とかあるんですね」
「滅多にありませんが、百年に一度ぐらいはあります。それより、貴方の様に落ちてくる人の方が遥かに多いですね」
「結構落ちてくるんですか?」
「数年に一度でしょうか」
その数字が多いのか少ないのか元少女には判断が付かなかった。
「ただ、チート能力ではないですが、第八界では成人すると誰でも職を与えられます。
ですから、貴方にも職は与えられます。
何がいいですか、特別に、可能な限り希望のものを差し上げますよ」
「でしたら、『お天気キャスター』がいいです!!」
「『お天気キャスター』?何ですかそれ?」
「『お天気キャスター』は、天気のことをみんなにお知らせする仕事です!」
「占い師ですか?」
「違います!
占いのように運頼みではなく、風や雲の動き、日照時間、降水量、温度、湿度、気圧。
時には海流や動植物の様子などを元に天気を決めるのです。
それと、天気だけでなく、火山や地震も扱います。
そしてそれらを広く住民に知らせて、住民の生命と財産を守る大切な仕事です!!」
元少女は熱弁を振るう。
『お天気キャスター』について、熱く、熱く、語ったのだった。
女神様は、若干引き気味であった。
本日、もう1話公開!