第100話 杖用の枝を確保なの。
スノウィは自由に飛べるようになった後、散々飛び回った。
そして落ち着いたところでレイニィの所に戻ってきた。
「すみません。一人ではしゃぎすぎました」
「気にすることはないの。スノウィが天使になったことは嬉しく思うの」
「ありがとうございます」
「お嬢様、それでどの木の枝を持って帰るんだ?」
アイスがレイニィに、十六本ある木のどの木から杖の材料となる枝を取るか問いかけた。
「うーん。先生、どの木が杖に適してるの?」
世界樹の天辺に生えていた十六本の木は、それぞれ別の種類だった。
「そう聞かれてもな、私もこの木を見るのは初めてだ」
「エルダ先生でも見たことがないの」
「多分最近進化したばかりの新種なのだろうな」
「そうなの。それだとどれにしていいかわからないの」
「なに、一本といわず全部取っていけばいいだろう。私も戻ってゆっくり研究したいしな」
「お嬢様が更地にしてしまった裏山に植えるのに、ちょうどいいんじゃないか」
「むっ。アイスは人が悪いの」
アイスに茶化されてレイニィは膨れっ面をする。
エルダはそれに構わず話を進める。
「冗談でなくそうしよう」
「先生がそういうならそれでいいの」
四人は枝を得るために近くにあった木に近付いた。
一本目の木を見てエルダが声を上げた。
「これは妖精樹に似ているな。妖精樹が進化したものかもしれんぞ」
「妖精樹?」
「妖精が生まれる木だ」
「妖精は木から生まれるの?」
「そうだ。知らなかったか?」
「私も初めて知りましたが」
「俺もだ」
スノウィとアイスも知らなかったようだ。
「エルフにとっては常識なのだがな。一般には余り知られていなかったか。ダークエルフ達が精霊を信仰していて、妖精達を保護しているのだがな」
「それならこの木はダークエルフに渡した方がいいの」
「そうだな。気は乗らないが、一旦帰って、落ち着いてからダークエルフの森に行ってみよう」
レイニィは、エルダの言葉で気になった点があったので、聞いてみることにした。
「もしかして、エルフとダークエルフは仲が悪いの?」
「いや、そんなことはないが、どうしてだ?」
「いえ、「気が乗らない」と言ったので、もしかして仲が悪いのかなと思っただけなの」
「ああ、そうか。何故気が乗らないかは行ってみればわかるぞ」
「そんなこと言われたら、行きたくなくなるの」
レイニィは、その木から三本の枝を取ると次に向かった。
次の木は葉の色が黒い木であった。
「葉っぱの色が真っ黒なの」
「むむ、この葉っぱ魔力を放出しているな」
エルダが葉っぱに手をかざす。
「魔力の放出が弱まったぞ」
エルダが手を引く。
「元に戻ったな。近付くと魔力の放出が弱まるのか?」
エルダは、葉っぱに手を近付けたり遠ざけたりを何度か繰り返す。
「どうかしたの?」
レイニィも興味深そうに覗き込む。
「これは光を魔力に変えているのかもしれないな」
「光を魔力になの」
「植物は光から栄養分を作っているんだ。光から魔力を作れても不思議ではないだろう。まあ、詳しくは帰ってから研究してみないとだな」
「光から魔力を作れるの?それって、光電管、いや、光魔木なの。それならテレビカメラが作れるかもしれないの」
「テレビカメラ?」
レイニィは喜びの余り飛び回っているが、エルダは聞いたことがない言葉にハテナマークだ。
「やっぱり、お天気キャスターといえば、テレビに出演してこそなの」
杖より、妖精より、こっちの方が一番重要だと本気で思っているレイニィであった。
レイニィはテレビカメラのことを考えるのに忙しく、残りの十四本についてはうわの空であった。
それでも、他の三人の協力で十六本の木の枝を全て確保することができたのだった。




