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ミッション3 生きる意味

チチチチチッ!


「うぅ・・ん・・・」


眩しい・・・


オレは太陽の光と鳥のさえずりで目を覚ます。

ここは・・・?


起き上がるとオレはベッドの上にいた。オレどうなったんだっけ・・・?


周りを見渡すと白い部屋にかすかだが薬品の匂いがする。

どうやらここは病院らしい。


ああ。そうだ・・・


オレは昨日の戦闘で大ケガを負って意識を失ったんだった。

手を動かすと何かやわらかいものがれる。横を見ると七美がベッドにうつむく形で寝ていた。


何でコイツがここにいるんだ?


「う・・う〜ん・・・」


七美がいかにも眠そうな目をしながら起きる。


「おはよう七美。」

「ふぁ・・おは・・・り・諒?」


オレが朝の挨拶をすると七美も挨拶を返す。

しかしオレの姿を見ると目をパチパチさせてオレの名前を呼んだ。


「諒だがどうした?」


軽口で返すオレ。すると七美は涙目になってオレの体に抱きついてきた。


「諒〜!!!」

「イテェ―――ーー!?!?」

「よかったよ〜!諒が生きてた〜!」

「縁起でもないこと言うな!つかマジで痛いから離れてくれ。」


さっきからオレのろっ骨が悲鳴を上げてんだよ!!

オレが必死に体の痛みと戦っていると突然部屋のドアが思いっきり開けられた。


「七美〜弁当買って・・き・・た・・・失礼しました。」


その正体は明だった。明はオレと七美を見るとそそくさとドアを閉める。


「おい誤解だ!?戻ってこい明―ーーー」


それから約十分間七美はオレから離れる事は無かった。そして今は、オレ・七美・明・理奈が病室にいる。


「いや〜しかし焦ったぜ。部屋に入ったら寝てたハズの諒と七美が抱き合ってたんだからなぁ・・・オレどれだけ空気読まないやつかと思ったよ。」

「へ〜七美も大胆ねぇ?」


ハハハッと笑う明とニヤニヤしている理奈。あの後、なんとか誤解は解けたもののオレと七美は今だ明と事情を聞いた理奈にからかわれ続けていた。


「う〜もう言わないでよぉ。自分でも今思うとはずかしいんだから・・・」


顔を真っ赤にする七美。


「ハハハッ!それより目覚ましてよかったよ。お前が死んだらオレのライバルはいなくなっちまう。」


思わず苦笑するオレ。全くコイツは・・・


話を聞くとどうやらオレは三日間ずっと意識が戻らなかったらしい。そりゃ心配するよな・・・


「ほんとによかったわ。楢崎さんが大ケガで運ばれてきた時は七美がずっと「諒死なないよねぇ・・?」「目覚まさなかったらどうしよう・・・」って泣き続けたんだから。ほんと慰めるの大変だったわよ。」


そうしてまたニヤニヤと七美を見て理奈は笑う。


「ちょっ・・その事は黙っててって言ったのに!!」


さらに真っ赤になって理奈を追いかける七美。それを笑いながら逃げる理奈。


「七美に感謝しろよ?何せお前が意識失ってた三日間ずっとお前のそばにいたんだからな。」


小声でオレに伝える明。そうだったのか・・七美に悪いことしたな。後で何か奢ってやるか。


「んじゃオレと理奈はまだ仕事があるから。お前らはイチャイチャしときな。ほら理奈行くぞ!」

「分かったわよ。じゃあ楢崎さんお大事にね。」


そう言って明と理奈は出て行った。部屋に残されるオレと七美。


なんかすごい気まずいんですけど・・・


オレは気まずい空気に耐えられなくなり七美に話しかける。


「そういやオレが起きるまでずっと看病してくれたんだってな!ありがとな!!」

「べ・別にそんな大した事じゃぁ・・・ただ私のせいでケガしたのに自分がそばにいないってダメじゃない!!でも・・飯田君は残念だったね・・・」

そう言って七美は悲しい顔をする。

「ああ。あいつもまだ若かったのにな・・・」

そのまま沈黙する二人。

「・・・なぁ七美。」

「何よ。」

「お前は何の為に戦っているんだ?」


オレは飯田が最後に言った言葉を七美に言ってみた。


「何の為に?」

「ああ。飯田が最後に聞いてきた事でな。だけどオレは何も答えられなかったよ・・・オレ達はテロリストを止める為にここに入ったのに今はただテロリストを殺しているだけ・・・オレ達は何の為に戦っているんだ?」


何も言わず、黙ってオレの話を聞く七美。


「それだけじゃない。」


オレは構わず言葉を続ける。


「オレは人が何故生きているのか分からなくなってきた。自分達で勝手に争って勝手に死んで・・・両方同じ人間なのに殺し合う。未来がある子供達が大人の都合で武器を持たされて・・・そして死んでいく。そこには何も意味なんて無い。オレ達は何で生きてるんだろうな?」


そこまで一息でしゃべるとオレは誰が置いたのか分からない机に置いてあるお茶の缶を開けて飲む。


何もしゃべらない七美が気になって横を向くと七美は表情を変えず、ただオレを見つめていた。


「七美?」

「・・・・・ぅの」

「ハッ?」


何を言っているのか全く聞こえない。


「何でそんなこと言うのかって聞いてんの!!」


突然怒鳴り声を上げる七美。


「な・何だよ?いきなり大声出して・・・」

「諒が変な事言うからじゃない!戦う意味?何でオレは生きているのか?そんなの頭の悪い諒に分かるハズないでしょ!!」


その言葉にオレは少しカチンくる。


「じゃあお前には分かるっていうのか!?」

「分かるわけないじゃない!!」

「なんだよそれ!」


オレはワケの分からないことを言う七美についつい大声を上げる。だが七美はかまわず続けた。


「少なくとも私は諒に生きていて欲しいって思うよ!?なのに諒の言い方ったらまるで自分がいつ死んでもいいみたいに聞こえるじゃない!!そんな事・・言わないでよぉ・・・」

最後は半分嗚咽まじりだった。そのままうつむいて泣き始める七美。

また泣かせっちまったなぁ・・・

オレは七美を抱きしめる。そこには確かな温もりがあった。

「ごめんな?オレは死んだりしないから・・・だから泣き止め。」

「うぅ・・ぐすっ・・諒のバカァ・・・」


飯田・・・オレはお前の質問の答えをまだ出せそうにない・・・けどいつか答えを出すから・・そして自分の生きる意味も・・・だから見ていてくれ・・・


とりあえずオレは腕のなかにあるこの温もりを忘れないでおこうと心にそう誓った・・・・


「おい、そろそろ泣き止めよ。」

「ヒクッ・・・ッ・・グスッ・・・」


オレは七美を慰めようとするが七美はオレの胸に張り付いたまま一向に泣き止む気配はない。


参ったな・・・


正直、オレは人を慰めるのはあまり得意ではない。

明がいればまた違ったろうがあいにくオレはアイツの様に空気を読まず、喋れる度胸も持ち合わせてはいなかった。いまだ泣いている七美。


オレにどうしろっていうんだよ・・・


オレはしばらく考えたあと頭の中にある名案が浮かぶ。


「泣き止んだらなんか願い事一つ聞いてやるから。」

「グスッ・・・ほんと?」


おっ?反応した。つかなんかすげぇ可愛いんですけど!?


上目遣いをしながら涙目で見てくる七美をみてなぜかオレの心臓がバクバク言い出した。


「お・おおっ!本当だ!!」

「絶対だからね!嘘ついたら理奈に「諒に泣かされた!」って言うから!」

「ちょっ・・それは反則だろ!?」


実は理奈さんは七美のことをすごく可愛がっている。だからもしそんなことが里奈さんの耳に入ろうものなら普段明が受けている鉄拳が今度はオレに向く。

それだけは避けなければならない。


「ダーメッ!それとも約束破るつもりなの?」

「うっ・・・」

オレは言葉に詰まる。それよりお前今さっきまで泣いていたよな?まさか嘘泣きか!?

「じゃ決まりね!」


そう言って七美はオレから離れた。


「・・・はぁっ・・しょうがないな。で、願い事はなんだよ?」

「う〜ん・・・今はないから保留!」


七美はしばらく手を顎にそえて考えた後そう言った。


「はぁっ?何だよそれ。」

「いいじゃん。それよりお腹空いたからなんか食べにいこうよ!」


そのまま病室出る七美。・・まぁたまにはこんな時間も悪くない。


「諒、早く行かないと店閉まっちゃうよ!」


とりあえず今はこのつかの間の平和を楽しもう。


「あんまり食うと太るぞ?」

「うるさい!」

「イテェ!?分かったから!?奢ってやるから殴るな。」


そしてオレと七美は近くのカフェに向かった。その日は七美との食事で一日が終わった。


余談だがカフェに着いた後、七美がカフェのデザートメニューを食べ尽くししたせいでオレの財布が寂しくなった事は内緒だ。


・・・みんな女性に飯を奢る時は自分の財布と相談しような?














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