ミッション1 CTIF
「ふー・・・」
オレは基地に着くと整備室で黒いロボットから降りて近くのベンチに座る。
「お〜お疲れだな。楢崎。」
オレが座ると体格のいい体中すすだらけの男が話しかけてきた。
「川島のおっちゃんもお疲れです。」
オレも返事を返す。
この人は川島 権蔵さん。
基地の整備班の隊長をしていて何かとオレに話しかけてくる気のいいおじさんだ。
「いやしかしさすがと言った所か。聞いたぞ?ドルガを三機破壊とはさすがCTIFのエースだな!!」
ガハハッと豪快に笑う川島さん。ドルガとはオレが倒した敵機の名前だ。
エースか・・・
「オレはエースじゃありませんよ。機体もボロボロですし・・・」
オレはさっき自分が乗っていた機体を見上げる。
その機体はスマートな身体に細かな細工の指先、背中には加速用のブースターと近接用レーザーサーベルが付いていた。その全身は黒のオールカラーで色取られている。
JP921型
今や世界でも名立たるWA産業国となった日本で作られ、今年CTIFに導入された最新の局地用WAで周りの皆はスマートな身体と背中に刀のようなものがある事から日本の忍者に見立ててシノビと呼ばれている。
つか名前そのままだよなぁ。名付けたの誰だよ・・・
「そんな謙遜するな。お前の悪い癖だ。人に褒められた時は自信を持って自慢すればいいんだ。」
川島さんはそう言ってオレの背中をバンバン叩く。
とりあえず痛いです・・・
その時オレの後ろから大声が聞こえた。
「諒ーーー!!どこだ!!!」
やれやれまためんどくさいやつが来やがった。
「ほら呼んでんぞ。お前の自称ライバルさんがよ。」
そしてまたガハハッと笑う。
笑いすぎて顎が外れないのか心配になったがオレは自分の名前を呼ぶバカの所へ急いだ。
「おう諒、探したぜ!」
「整備室で騒ぐなバカ。」
「誰がバカだ!オレには上野 明と言う立派な名前があんだよ!!」
明は大声で騒ぎながらオレに近づいてくる。
「全く大声で人の名前呼びやがって・・・」
「ライバルの名を呼ぶのは当然だ!!」
こいつは何でオレのことをライバルと呼ぶのかねぇ・・?
「ま、いいじゃねぇか!それよりなんか食いにいこうぜ」
「そうだな。」
オレと明は食堂へ向かう。
基地の廊下には兵士と思われる様々な人とすれ違った。
[そりゃ当たり前なんだけどな・・・]
Counter Terrorism Independence Force
通称CTIF[クティフ]
世界のテロを武力で止める為に生まれたテロ対策独立チームだ。
世界各地のテロを止めるために作られたチームなのだから入るにもそれ相応の実績と実力が伴われるいうなれば兵士のエリートが集まった組織。
そこにオレと明は所属している。
「っと・・自慢話はここまでにして・・」
食堂に入るオレ達。
ベシンッ!
「あだっ!?」
突然後ろから誰かに叩かれた。まぁ犯人は分かっているが・・・
後ろを向くと予想通りの人物が立っていた。
「何しやがる七美!!」
「ヘヘッ!ボーっとしてる諒が悪いんだよ。」
後ろには髪をショートにした女性、オレと同じ第七小隊コード2の藤島 七美がいた。
「よぉ七美。任務は終わったのか?」
「うん。だってコイツ一人でさくさく行っちゃうんだもん。」
「お前なぁ・・仮にもオレはお前の上官で隊長だぞ?」
「だって年あんま変わんないし。」
ちなみに明とオレの年が二十三歳、七美は二十一歳になる。
「だからってなぁ・・」
「気にしない気にしない!そう言えば明、理奈が探してたよ?」
「ゲッ!?オレは旅に出たと伝えてくれ。」
明はコソコソと逃げる準備をする。明よ・・それは無理っぽいぞ・・
明の後ろに黒い影が立つ。
「明ーーー――ー!!!!!!」
「ッグェ!?」
明の頭に鉄拳が振り下ろされる。
「また通信無視したでしょ!通信はちゃんと聞きなさいっていつも言ってるでしょうが!!」
その後ろには髪をロングにした黒髪の女性が立っていた。
「あら楢崎さんと七美。こんにちは。」
「こんにちは理奈。」
この人の名前は土田 理奈さん。明の同僚だ。
「こんにちは。」
「テンメェ理奈!何でオレばっかり殴るんだよ!!」
「アンタが言うこと聞かないからでしょ!!」
理奈と明が言い争いを始める。
オレと七美はいつもの光景なので全く気にせず、二人のケンカを静かに見守る。
この二人も仲が良いんだか悪いんだか・・・
ちなみに理奈さんは明の幼馴染でもある。
「それより楢崎君。アナタ最近不用意に突っ込みすぎよ。敵に囲まれたらどうするの?」
理奈さんは言い争いを途中で止めると顔をしかめて聞いてきた。
また痛い所を突いてきましたね。
「まるで死にたがっているみたい・・・」
理奈が暗い顔で言う。死にたがっているか・・確かにそうかもしれないな。
クティフに入って2年。オレは様々なテロリスト達と戦ってきた。
だけど戦っていく内に自分はなぜ戦っているのか。なぜ生きているのかが分からなくなってきた。
そしていつからかまるで自分から死ににいく様に一人で突っ込むようになった。
「・・とりあえずそんな暗い話は置いといて飯を食おうぜ!」
明の言葉にみんなが頷いて食堂に入る。
ウオォォゥーーーーーン!!!!
そこで突如緊急出動のベルが鳴った。




