第四話 はじめて〜の〜
「彼奴ら羊だけじゃなく、人族の女まで拐って来やがったのか」
間違いなくあの横柄ゴブリンズの仕業だろうな。彼奴ら人族の報復が怖くねぇのかよ。
ゴブリンは一般的な人間よりも身体能力が高い故に戦闘力も高い。しかしそれはあくまでも一般的な人間と比べての話。
人族の中には冒険者と呼ばれる魔物を狩る事を生業とした者達がいるのだ。
冒険者。
魔物との身体能力の差を埋める為に武器や防具を身に纏って武装し、様々な特性と人族にとっての最大の武器である知恵を駆使して戦う戦闘集団。その職種は多岐に渡り、武器の能力を最大限に引き出す戦士、自らの心体を磨き上げ強化する格闘家、魔術を駆使して破壊を生み出す魔法師等々。パーティーと呼ばれる集団で行動し、その様々な職業の組み合わせにより幅広い戦闘環境に対応することを可能にしている集団。それが冒険者達だ。
更に言えば、魔属性の化身である魔物の最大の弱点である聖属性。人族とはその聖属性を使いこなすことの出来る、魔物の天敵と言って差し支えない存在なのである。多分。
ゲームやアニメなんかじゃそんな感じなんで、それらによく似たこの世界でもそんなとこじゃねーかなと予想してるわけです。
それにしても。
「グヒャヒャヒャッ、オナゴダ、オナゴダァー!」
「ヒサシブリノゴホウビダベヤ、ゲキャキャーッ!」
コイツらも大概だよなぁ。
猫まっしぐら! 一切の躊躇も見せず、仲間のゴブリン2体は嬉々として少女へと突撃してやがるよ、ゴブリンって奴等は、まったく…。
一方、性の捌け口とされている少女の方はと言えば…。
「あ・・・、う、・・・あぅ・・・」
時折喘ぎとも呻きともつかぬ声はあげるものの、これといった反応も見せずにされるがままとなっていた。
焦点の合わない目線は虚空を彷徨い、半開きの唇からは唾液をだらしなく垂れ流し、四肢の全て、いや、首も含めた全ての部位は脱力し、生気というものが感じられない。最低限の生命活動だけを残して心は既に破壊されてしまっている様だった。
性欲猿ことボスのホブゴブリンや鬼畜横柄ゴブリン達に散々になぶられ犯し尽くされたのだろう、衣服は無残にも破かれ裂かれ、その用途がなんであったのかすらわからない布切れと化していた。
乱暴に扱われたであろう身体には無数の痣が青く浮かび、その全身は隈なく白濁した薄汚い粘性の体液で覆い尽くされている。
痛ましく見るに耐えない姿ではあるが。
「めっちゃ可愛いな、この娘」
・・・・・・。
「オメエガサキニヤッテエエダヨ」
「ンダナ、オラダチガホウビサモラエダンモ、オメエのオカゲダデ」
一瞬の静寂の後、少女の身体に貪りついていた仲間ゴブリン達が俺の方に向き直ってこんな事を言い出した。
どうやら俺がこの娘を気に入ったと見て、俺に一番乗りを譲ってくれるらしい。
いや、まあね、思わず可愛いとか言っちゃったけどさ。
あらためて少女を見る。やっぱ可愛い、激マブフェス2021。
なんだけど、欲情するかって聞かれたらそれはまた別なんよ。あんまりにあんまりなそのお姿を拝見しちゃうとねぇ、可哀想が先に立っちゃって正直萎えるっしょ。
「ホレ、ハヤグセレ」
いやぁ、元人間としての良心の呵責ってやつがさ…。
「ンダンダ、アドガツカエテンダデ」
それに、心の準備ってもんがさ…。
「オメエノモンモモウ、イキッテンデネェガ」
・・・・・・。
静かに目線を下げる。
悲しいかな俺の波動砲はエネルギー充填120%状態。対ショック対閃光防御済みでターゲットスコープもオープンしている。発射準備は完全に整っていた。
全ての男子高校生に聞こう「美しいものを嫌いな人がいて?」と。
「しゃ、しゃーねーだろ! 前世の俺は童貞だったんだ。健全な男子高校生だぞ。やりてーに決まってんだろが!」
「ナニイッテッガワカンネガ、ハヤグセレ」
「おう、や、やってやらぁ。据え膳食わぬはなんでんかんでんの社っ長さんだぜ」
ゴブリン達を押し退けて少女の元へと向かう。近づくにつれて辺りに漂っていたイカ臭さがむせ返る程に濃度を増していく。
スットラーイク! バッターアウッ!
真ん中高めの豪速球は160キロだ。
遠めに見ても可愛いと思ったが、近づいて覗き込んだその顔はモロに俺好みのぴったんこカンカン恒例一枚の写真だった。
可愛い系なのにどことなく綺麗系にも見え、それでいてあどけなさも残る絶妙な顔。金髪ロングに碧眼というゴールデンコンビ。透き通る様な白い肌は北欧神話の女神様を連想させる。痩せ型ともぽっちゃりとも付かぬこれまた絶妙な体型は、見事なくびれと巨乳とまでは言えないが大きく整ったおわん型の胸を合わせ持った群抜のプロポーションだ。
ただし、惜しいかなその全てはこれでもかと言う程に汚されてしまっていた。
「ホレホレドシタ、ハヤグセレッデ」
「わかってっよ、急かすんじゃねえ!」
こういった行為には情緒ってもんが必要なんだよ。テメェらみてえな猿野郎と違って俺の様なジェントルメンにはな。
「このまんまじゃあんまりにもだよな」
剥ぎ取られた衣服、多分ローブだったと思われる布の切れっ端を掴んで少女の顔を覆う粘液を拭う。このまんまで行為に突入するなんて、俺の美意識的に絶対ありえねえ。
「ただの駆け出し冒険者じゃないのか?」
雑魚魔物であるゴブリン如きに拉致られる人族など、警戒の薄い村の娘か深追いした新米冒険者くらいのもんなんだが、手にした布地の感触からは、そのどちらもが身につけられる類の品とは思えぬ上等な物だったんじゃないかと推察された。
ローブだったのだとすれば、おそらくこの少女は魔法師だろう。だが、森中で幾度か見かけた冒険者の魔法師は余り上等とは思えない簡素なローブを着た者ばかりだった。
注意深く周囲に散らばった衣服の残骸を確認すると、宝石を散りばめた見事な装飾、刺繍等も施された物だったとわかる。
髪の毛も拭いてやると、普段からよく手入れをされた綺麗な髪だった。肌も透き通る様に白くきめ細やかで、庶民のものとはとても思えない。
あらためて少女の顔に直接手で触れてみる。肌荒れとは無縁の滑る様な手触りだ。
親指が少女のぷっくりとした薄い唇に触れた。心臓の鼓動が高鳴りやかましい。
「アトガツッカエテンデ、ハヤグシデケレヤ」
「うるせぇ! 黙ってろ!」
ゴブリンのダミ声がやかましい。
少女の全身も隈なくきれいに拭いていく。鼓動はどんどんと加速していき体が緊張に強張っていくのがわかる。悲しいかな童貞の性だな。
言っとくが俺はモテなかったわけじゃないぞ。毎年バレンタインデーには4個ものチョッコレートをいただいていた(内訳は母・妹・家族ぐるみで付き合いのある隣の家の幼馴染の同級生とその母親で全部義理)のだ。
中学の卒業式には、第二ボタンどころか全てのボタンがなくなった(欲しいと言ってくれた一人の女の子に全部あげたので実質一個と変わらない)りもした。
(余談だがその女の子とは卒業後に一度だけデートしたのだが、それっきりとなってしまった。後日その女の子が友達に「話しは合わないしマジモンのゲーオタで無理。それこそ無理ゲー」と言っていたという風の噂を耳にした)
そう、俺がエッチした事が無いのは偶々、偶々そういうタイミングがなかっただけなのだ。
そして今回、合意とは言いがたいがそのタイミングを得た。幸いにして彼女も嫌がってはいない(無反応)。ならばやるという選択肢しか俺には存在しないのである。
「・・・んっ、・・・」
全身を拭き終え、彼女の片脚を肩の上に担ぎ上げる。
「・・・、・・・あっ」
彼女の腰が逃げない様に両手でしっかりと掴んで引き寄せ、お互いの下半身を密着させる。
ひとつ深呼吸をして覚悟を決めた。罪悪感も正直あるが、今はこの出会いに感謝しよう。
彼女の鞘へと収める様に、その鯉口に俺の聖剣の切先を充てがい、一気に。
「さらば童貞!」
ドッゴオオォォーーン!