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現代に転生した勇者は過去の記憶を取り戻し、再び聖剣を持って戦いへ赴く  作者: 八神 凪


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ちょっとそこの妹さん


 「えー、それじゃその幼馴染と新しい学校の人と板挟みってことー?」

 「また兄ちゃんがハッキリしない……っていうか鈍感だから、困っているってことは無さそう」

 「天然のジゴロってやつね」


 神緒家に空き巣が侵入していたころ、結愛は商店街から少し先にある複合施設のフードコートで友人と遅い昼食を摂っていた。

 話の内容は兄である修の恋愛事情で、家族や真理愛と一緒の時は興味なさげな感じだったが実のところやきもきしていたりするのだ。


 「まー、結愛ってお兄さん大好きだもんね」

 「ちょ、ゆっち止めてよ!? そんな訳ないわ。兄妹だし……」

 

 結愛はゆっちこと橘 由香に口を尖らせながらストローに口をつけると、今度はもう一人の友人である轟 智恵が不敵な笑みを向けながら眼鏡をクイッと上げて言う。

 

 「ふへへ、お兄ちゃん大好きでじつはこっそり部屋に侵入して枕を抱きしめているくせに……!!」

 「何故それを……!? い、いいじゃない兄妹だし! というか――」

 「「というか?」」

 「なーんか最近家の中が緊迫しているっていうか、変なのよね。私には言わないんだけど、兄ちゃんも両親も普通通りにしていながらなにかを隠している……そんな感じ」

 「ふーん、誕生日はまだ先だしサプライズってことは無さそうねえ」

 「別のサプライズとか? 幼馴染とお兄さんが結婚、とか」

 「真理愛ちゃんならいいけど……」

 「いいんだ」


 由香が苦笑する横で、結愛は『真理愛なら』という意味を考えていた。

 怜はお嬢様でとてもいい子で、自分とも母親とも仲がいいので修の恋人になっても上手くやって行けるだろう。

 だが、そうなるとずっと一緒に過ごしてきた真理愛が不憫だし――


 「(怜さん、なんだか兄ちゃんをどこかへ連れて行ってしまいそうなんだよね……ここじゃないどこかへ……)」

 「ということはまだまだお兄さんは様子見かあ。さて、ご馳走様! 次はどこ行く?」

 「ボルダリングやりたい!」

 「一人で行きなさいよ!? スカートじゃできないでしょ、とりあえず当初の予定通りカラオケかゲーセンかな」


 結愛の一声で三人は移動し、カラオケを満喫する。


 「兄ちゃんのアホー!!」

 「おお、溜まっているねえ、ほらどんどん歌おう。ストレスを発散しよう!」

 「あ、ポテトの山もりとウーロン茶、オレンジジュースとコーラをお願いしますー」


 各々、好きな歌を歌いながらたまに結愛が暴走するということを繰り返し、16時くらいにカラオケボックスから出た結愛は背伸びをしながら満足気に笑う。


 「んー! スッキリした! また明日から学校かあ」

 「そうね、気が重いわ……。で、結愛、気になるならお兄さんに直接聞いてみたら? どっちが好きなのか」

 「げほっげほっ!?」

 

 智恵にそう言われて飲んでいたジュースがむせる結愛。


 「もう、考えないようにしていたのにー」

 「拗れると面倒くさくなるからね結愛は。それじゃ、また明日!」

 「ばいばーい!」

 「まったく……」


 結愛は腰に手を当てて呆れながらも二人を笑顔で見送り、自分も帰るかと踵を返して歩き出す。その途中、幽霊に襲われた公園に差し掛かり足を止める。


 「そういえば兄ちゃん達、ここの幽霊も調べてたっけ? もう居ないみたいだけど……」


 結愛は近道だからと公園へ入っていき、周囲を見ながらゆっくりと歩いていく。


 「静かね? というか日曜なのに人が居ない……?」


 静かすぎると結愛は背筋が震える。

 木々の多い公園は暮れていく陽の中では薄暗く、段々と寂しさを包み込んでいく……そこでベンチに人が居ることに気づく。


 「なんだ、今日はたまたま人が少ないだけか。カップルさんの邪魔をしないようにさっさと通り過ぎようっと……え?」


 お互いもたれかかっているのでキスでもしているのかとチラ見をしたところ、生気のない顔でぐったりしているのを目撃し、一瞬、結愛が固まってしまう。


 「し、んでるの……?」

 『くく……まだ死んではイナイ……ソコまでのチカラがワタシにないからな……君のイノチも分けてもらおう……』

 「なに……? 蝙蝠!?」

 『若い女! フハハ……コレは幸運だ! 勇者どもめ、コンドコソ……!』

 「なに、なんなの!?」


 結愛の背後の空中に不意に現れた巨大な蝙蝠に戸惑い、尻もちをつく。

 大蝙蝠はそんな結愛を幸運な獲物だと急降下し牙を剝いた。しかし、その牙は届かず――


 <させないわよ!!>

 『なんだ……!?』

 「今度は……ね、猫?」


 あと一歩のところで大蝙蝠の牙を爪で払ったのは、瞳の青いロシアンブルーの猫だった。

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