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現代に転生した勇者は過去の記憶を取り戻し、再び聖剣を持って戦いへ赴く  作者: 八神 凪


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捜索は続くよいつまでも


 「へえ、アパートとマンション経営で生活しているんだ」

 「ああ、二年前に親父が亡くなって引き継いでからなんとかやってこれているよ。で、この島はエルフみたいな亜人が他にいるんだけど、それぞれ守護精霊がいてな、エルフ達は猫なんだ」

 「ああ、だから猫を引き取っているんだ? お、このトマト甘くて美味いな……」

 「でもワンちゃんはどうしてなんだろう?」


 お昼を頂きながら住孝さん達の事情を聞いていると、真理愛が首を傾げる。すると、どこかで話を聞いていたかのように今度は巨大な柴犬がのそりと現れた。


 <……犬はドワーフの守護精霊でな、俺がそうだ>

 「おおきい~!! あ、子供達と遊んでいるんだね」

 <勝手に乗ってくるのだ>

 「ふかふかだよ、お姉ちゃんも乗ってみる?」

 「うんうん!」

 <ふう……>


 柴犬がため息を吐くと、シュネがやってきて口を開く。


 <あら、ヤマト巡回?>

 <うむ。少しいつもと違う気配がしたので村へ入らせてもらった>

 「分かるのか?」

 <まあ、この島の結界は我等精霊が張っているからな。スミタカの友人か?>

 「今日初めて会ったからまだ友人じゃないかな」

 「わーい、修ちゃん、このまま眠れそうなくらいふかふかしているよー」

 <こら、寝るんじゃない……>


 妙に威圧感のある柴犬だけど、真理愛にかかれば形無しだ。そこで住孝さんが口を開いた。


 「ま、その猫みたいに喋る猫が居たらまた連絡するよ」

 「ですね。この世界に来ていたら本当に分からなかったし、助かりましたよ」

 <早く平和に暮らしたいよ俺は>

 <アースドラゴン猫はのんびりしているなあ。どちらにせよ、後二人まできたから意外とこの前の聖剣掲げは役に立ったのかもしれませんなあ>


 スリートが期待を込めて前足で俺の膝を叩きながらそんなことを言うが、数が減れば減るほど見つけにくくなるのは世の常であるため楽観はできない。

 

 「ふう……食った食った……お昼までごちそうになるとは申し訳ない。俺達、といっても息子の修だが、あいつは警察ともつながりがある。困ったことがあったら尋ねてみるといい」

 「ふえー、警察ですか」

 「うん、部活なんだけど部室に警察の人が常駐しててね、学校の交番って感じかな?」

 「学校の怪談みたいな言い方だな……」


 住孝さんが呆れ笑いをしながらそう言うと、親父が立ち上がって俺達に言う。


 「それじゃ目的は終わったし、他にドラゴン猫は居ないようだったら戻るか」

 「そうだな。真理愛、帰るぞ」

 「う、うーん……私ここに住むぅ……」

 「あら、真理愛ちゃんおねむですか? よっぽど動物が好きなんですね」

 「ずっと猫を抱いているものね」


 ネーラさんや真弓さんが真理愛に暖かい眼差しを向けるが、流石にここで寝られたら迎えに来るのも大変だし明日は学校だと柴犬……精霊のヤマトに伏せてもらい真理愛を降ろす。


 <ぬう、待て待て、娘は毛を掴んでいるぞ>

 「あ、悪い!? ……ちょっと抜けた」

 <ひゅーん……>

 <どうせすぐ生えるからいいわよ。また来てよね、それだけ喜んでもらえるならこっちも嬉しいし、他の亜人にも紹介したいわ>

 「ああ、そうさせてもらうよ。親父、行こうか」

 「そうだな。住孝君、世話になった。今度改めてお礼に来させてもらうよ」

 「大丈夫ですよ気を遣わないでください。それじゃ、帰りましょうか。コテツ、キサラギは真弓と一緒に待っていてくれ」

 <また来る>

 「お前ここ気に入ってるんだな……」


 というわけで俺達はまさかの異世界でアースドラゴン猫を発見し、残り二匹になった。

 母ちゃんの話では俺達の町に固まっているはずだから、放課後と休日は猫探しになりそうだ。向こう側の奴らはまだすぐには来れないはずなので出来るだけ早くことを進めるべきなのだが――



 ◆ ◇ ◆


 【魔族の反応が消えた、か。勇者は力を取り戻しつつあるな】

 【魔王様、どうされますか? 人間の国王もそれほど役に立つとは思えませんが……】

 【我々はこの世界が手に入れば特に気にすることもないし、人間と協調しても構わんと思っている】

 【は……下々の者は納得しますでしょうか?】

 【私は魔王だよ、納得してもらうに決まっている。が、問題はある】

 【女神ですな】


 魔王がゆっくりと頷き、続ける。


 【勇者がカイザードラゴンに殺された時も助けなかったようだし、なにを考えているかわからんのがな。……こちら側に勇者たちを引き込んで様子を見てみるか……?】

 【ふむ……しかし奴らがなにをしているか分かりますかね】

 【勇者の波長は分かっている。国王には知らせず、魔族だけを送るぞ。そうだな、あの二人でいいだろう】

 【ではすぐにでも……】


 即決したことにすぐ対応できる部下を見て満足気に微笑み、魔王はグラスを傾ける。


 【さて、どうでる? 聖剣の女神よ】

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