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現代に転生した勇者は過去の記憶を取り戻し、再び聖剣を持って戦いへ赴く  作者: 八神 凪


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置いてけ掘


 さっきのは間違いなく結愛の悲鳴だった、生意気な妹だが大事な家族。間に合ってくれ……!

 俺はちゃんと真理愛が付いてくるのを確認し、少し速度を上げて現場に向かうと、鞄を放り出してへたりこんでいる結愛の姿を見つけた。


 「にゃぁぁぁぁ!!」

 「結愛!」

 「あ、に、兄ちゃん!?」

 「あれが幽霊……!?」


 勇敢にもスリートが結愛の前で威嚇しており、その前には薄汚れた人影が引きずるように結愛のに迫っていた。


 「お前、結愛に近寄るんじゃねえ!」

 「……!?」

 「あ! 待て!」


 怒声を上げた俺に気づいた幽霊が一瞬ビクッと立ち止まったかと思うと、ぼさぼさの髪を振り回しながら結愛が買い食いしていたであろうポテチの袋と、落とした買い物袋を拾い、その場から去って行った。


 「速い……!? マジで幽霊なのか……?」

 「ああああ! プレミアムピザポテトと限定の濃縮いちじくジュースがぁぁぁ! 返して!!」

 「諦めろ、あれは追いつけない。あと、多分飲まなくて良かった気がするぞ」

 「うぐぐ……」

 

 腰を抜かしていて立ち上がれない結愛の頭に手を置いて諫めていると、スリートが結愛の膝に乗って顔を擦り寄せる。


 「ありがとうスリート。助かったわー」

 「にゃふふふ……にゃぶ!?」

 「なんで叩くのにいちゃん!?」

 「邪悪な感じがした。怪我は無いか?」

 「あ、うん。びっくりしただけだから平気だよ。あれが、噂の幽霊なのかな」

 「多分な。にしても噂を知ってんならこの時間にここを通るなって」


 結愛を立ち上がらせていると、口を尖らせて俺に言う。


 「ちょっと友達と喋ってたら遅くなっちゃったの。急いで帰るならここを通った方が早いし、足には自信があるからさ」

 「それで今みたいに危ない目に合ってたら意味ないだろ? 遅くなるなら電話くれればいいんだよ」

 「ん。ごめん……」


 どうやら口調とは裏腹に怖かったのは間違いないようで、俺の袖を掴む手は若干震えていた。そこで真理愛が追いつき結愛に抱き着いた。


 「結愛ちゃぁぁん!!」

 「わ!? 真理愛ちゃん! だ、大丈夫だよ」

 「にゃーん!?」


 抱いていたスリートが挟まれる形になり悲鳴を上げるが、とりあえず無事なことに安堵し真理愛に声をかける。


 「電話は?」

 「あ、すぐ来るって!」


 と、真理愛が笑顔で返事をし、程なくして若杉さんが来ると幽霊について尋ねられ、公園に数人応援を呼んで調査をすると言って俺達は返された。

 

 そんでもって自宅――


 「あら、幽霊に会ったの? レアなケースに立ち会ったわねえ。明日山田さんの奥さんに言わなくっちゃ」

 「でね、私のお菓子とジュースを持って逃げたのよ! もー、ホントむかつくんだけど!」

 「軽いね母ちゃん、結愛もそんなことで怒るなよ」

 「まあ、ケガが無くて良かったよ。で、修はなんか面白いことになっているじゃないか」

 「ああ、八塚がノリノリで変な部活を作ったからなあ。多分明日、公園の調査になると思うよ」

 「いいなあ、来年兄ちゃんの高校受けるつもりだから、入ろうっと」

 「お前もさっき怖い目に合ったばかりなのに軽いな……」


 妹の将来を心配していると、母ちゃんが俺に声をかけてきた。


 「あの公園の幽霊、どうもひとりを狙っているって話だったけど、それに加えて女性が狙われているらしいわよ」

 「ってことは、一人で歩いている女性を狙っているってことか?」

 「みたいよ? 結愛は可愛いし、格好の餌食だったのかもしれなわねー」

 「えへへ」

 「そういうのはいいから。他になんか知らない? 調査に使えそうな話」

 「うーん、そっちは無いわねキャバ嬢殺人事件なら光吉商事のサラリーマンが怪しいって話があるけど……」

 「そうか」


 得体の知れない母ちゃんはさておき、俺は飯を食った後、風呂に入ってから自室へ戻る。ベッドに寝転がっているとスリートが尻尾をおっ立てながら入って来た。


 「お、どうした?」

 <いえ、危ないところだったなあと思いやしてね。しかし、ゴーストにしてはハッキリした声をしていましたよ>

 「聞いたのか?」

 <ええ、ゆっくり歩きながら『置いて行って……』とか細い声でしたけども>

 「一応噂通りなのか……今日の調査で警察がなにか掴んでいるといいけど……」


 そして翌日、もちろん事件調査部が湧きたつことになるのだが――

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