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現代に転生した勇者は過去の記憶を取り戻し、再び聖剣を持って戦いへ赴く  作者: 八神 凪


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納得させるために


 「な、なんだって?」

 「だから、俺は勇者の生まれ変わりで、誘拐犯はその世界の魔王と魔族なんだよ。これは嘘じゃない。その二人もそっちの世界から来た来訪者でね。向こうに帰れなくなった」

 「しゅ、修ちゃん……?」

 「修、お前……」


 さて、キョトンとした顔で俺を見る若杉刑事は明らかに信じていない様子。まあこんな話をいきなりされて信じろと言う方が無理な話だろう。

 しかし、逆に警察を味方につけておけば今後、何かあった時に力になってくれるような気もするので、バレた以上は信用してもらう方向で話を進める。


 「そういうわけで、配下の魔族を倒して誘拐事件は落ち着いたってわけなんだ。しばらく向こうからそういう輩が来ることはないかな? この二人が帰れないわけだし」

 「……漫画の読みすぎだよ、神緒君。勇者だの魔王だの……本当の犯人のことを話してくれないか?」

 

 苦笑いで若杉刑事が言うと、フィオとエリクが俺の横に立ち、口をへの字にしてからエリクが口を開いた。


 「兄貴は嘘なんて言ってないぞ? 俺達は間違いなく向こう側の人間だ。そっちの姉ちゃん達を守ったのは兄貴だぜ」

 「そうです! どなたか分かりませんが、失礼ですよ?」

 「まあ落ち着けエリク、フィオ。信じてもらうのに一番早い方法がある。ごにょごにょ……」

 「あ、修ちゃんエッチだよ!」

 「耳打ちくらいいいだろ!? というわけで若杉刑事、これならどうです? <火の息吹(ファイア)

 「……!?」


 俺は一番わかりやすい方法として魔法を使うことにした。見れば後ろで真理愛や八塚、霧夜も目を丸くしていた。

 

 「へ、へえ、手品得意なん――」

 「<禍つ水竜(オミュニス)>」

 「火の息吹(ファイア)!」


 手品だと思われるかもしれいとは思っていたので、魔法使いのエリクに大技を使ってもらい、フィオにも魔法を使ってもらう。

 禍つ水竜で窓ガラスを破壊したのはやりすぎかもしれないけど、廃ビルだし信じてもらうにはこれがいい。

 

 「……というわけで、嘘じゃない。というかこんなことをして嘘をつくメリットはないと思わないか? 俺達が誘拐犯ってことなら嘘をつく必要はあるけど、若杉刑事は俺達が犯人だって思うかい?」

 「いや……」


 俺達と窓を見て目を泳がせる。

 

 「信じるも信じないも若杉さんの勝手だけど、俺を追って来て真相を聞きたいと言ったのはそっちだ。もし信じれないならこのまま帰って貰いたいかな」

 

 俺が目を真っすぐ見て告げると、若杉さんはため息を吐いた後、深呼吸をして首を振る。ダメか? それならと思ったところで――


 「ふう……分かったよ。非科学的だけど信じるしかなさそうだ。火をちょっと出すくらいなら手品で片づけられるが、さっきの水流? は、流石に手品で片づけるには難しい。先に仕掛けをした、とも考えたけど、僕がここに来たことを知らない様子だったし、仕込む必要性も感じられないからね」

 「話が早くて助かるよ。というわけで本気で別世界ってやつは存在する。俺も最近記憶が戻ったばかりだから最初は信じられなかったけどな」

 「しかし……異世界、か……」


 冷や汗をかいているあたり、どうやら若杉さんは信じてくれたようだ。


 「魔族を見て貰ったら早いと思うんだけど、倒しちゃったからなあ」

 「しゅ、修ちゃん……ほ、本当に勇者の生まれ変わり、なの?」


 俺の袖を引っ張って真理愛が恐る恐る聞いてきたので、手をポンと打ってから真理愛の肩に両手を置いて言っておくことにする。


 「父ちゃんと母ちゃんには言わないでくれ。八塚と霧夜も頼む」

 「え、ええ、構わないけど……」

 「だ、大丈夫なのか……?」


 うーん、困惑しているなあ。八塚……カリンは記憶が戻っているわけじゃなさそうだし、いきなり異世界からのって言われてもそうなるのは仕方ないか。

 まあ告げ口されても痛手にはならないから軽くでいいだろう。学校に言いふらされると精神的にきついけども。そんなことを考えていると、若杉さんが顎に手を当てて口を開いた。


 「しかしどうしたものかな……上に説明するのが大変だぞ……」

 「そこはこの二人を使ってなんとかならないか? 外国人が主犯で逃亡した、みたいなシナリオで」

 「ちょっと考えさせてくれ。少なくとも、今は誘拐の危険性は無いんだな?」

 「それは間違いない」

 

 俺が確信を持って言うと、若杉さんは少し苦い顔をした後、


 「……とりあえず今日のところはこれで失礼させてもらおう。その二人の処遇については保留。ただ、廃ビルに置いておくわけにはいかないから……明日、放課後またここに来てくれるか」

 「うん。できればいい返事を待っているよ」

 「分かった。八塚さん、また親御さんにお話を聞くこともあると思うので、その時はよろしく頼むよ」

 「は、はい!」


 ――若杉さんは片手を上げて廃ビルを去っていく。とりあえず今日のところは廃ビルに住む二人を見逃してくれると言ってくれたのは助かった。

 強制退去してもこの時間だと行くところが無いというのもありそうだけど、若杉さんの好意だと思うようにしておこう。

 

 「それじゃ俺達も一旦帰るか。すまない八塚、手間を取らせた」

 「う、ううん。大丈夫よ。それより、この二人も私の救出に尽力してくれたんでしょ? ありがとう」

 「シュウ兄ちゃんの知り合いなら当然ですよ。私はフィオ」

 「一応言ったけど、俺はエリクだ。ちゃんとした家に住めればいいけど……」


 エリクの言葉に俺達は笑い、程なくして帰宅する。

 明日か……嫌な予感はしないけど、どうなるかな……?

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