表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/16

掌編 お許しは口付けまで

 頤から手を離し、小さくやわらかな唇をようやっと解放する。

 呼吸ごと意識も時間も止めていた少女がふるりと震え、閉じていた瞼を静かに開く。淡い菫色の瞳は潤んでまあるい膜を張り、宝石箱のとっておきのアメジストのように星を散らしてきらきらしている。そこには銀色よりも白に近いぼやけた色合いの眉を情けなく下げた男の姿だけが閉じ込められている。

「うん?」

 少女が何事か囁いたようだが、聞き逃した。花びらの如きやわらかな唇と淡い菫色の瞳に視線も意識も何もかも縫い止められていたのだ。ヘンリーのくたびれた黒いローブの布地がきゅう、と引かれた。

 ぼうとこちらを見上げたイザベルは、やわく瑞々しい唇を、そうっと開いた。


「……おしまい、ですか?」


 ヘンリー・ロー・サージェントは理性を総動員し、脳裏に古代から一昨年の物質転移魔術陣新説までの魔術史年表を光の速さで積み上げた。その後、八拍数えてなんとか表情筋に力を入れる。華奢な少女の背に手を回し、意識して慎重に息を吐く。そのまま小さな肩口に燃え上がる顔を埋めて、やっとのことで呟いた。

 やっぱり君を家に帰したくない、と。


バレンタインデーに書き下ろした王子様vs.お嬢様。掌編集に格納するか迷ったのですけれど本編第1話話直後なのでこちらに。イザベルとヘンリーの二人の穏やかでささやかな恋を見守っていただきありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ