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ラブラブ★ドッキュンッ!③


「ルールは簡単ッ! 男の子が女の子をお姫様抱っこするだけッ! 一番最後まで落とさずに持ってた組が優勝よッ!」


「ただし、時間経過によって男子には重り追加等の試練が課されるッ! 長い人生、男子には抱えるものが増えてくもんだ……それら全てを抱え続けて……女の子を幸せにしてみろ野郎共ッ!」


 遂に決勝戦です。行われるゲームは、簡単に言いますと、お姫様抱っこ耐久戦。


 途中で重り追加等の妨害行為を乗り越えて、最後までパートナーの女の子をお姫様抱っこし続けられた組の優勝です。


 ちなみの残っている他のカップルはと言うと。


「……フッ。最後の最後で力が物を言うゲームとはな、日頃から鍛え上げたこの筋肉、存分に発揮させてもらおう」


「アタシをお姫様抱っこさせるんだ。落としたらタダじゃおかないよ?」


 片方は、男女共にボディービルダーにしか見えない筋肉モリモリマッチョなカップル。こちらは射的屋"要件を聞こう"のお二人ですね。

 女性の方なんか肩の内側の筋肉が盛り上がっていて、まるでもう一セットの胸があるように見えるのですが、筋肉ってあんなに大きくなるもんなんですか。人体とはかくも不思議なものです。


 そしてもう片方はと言うと。


「か、勘違いしないでよねッ! 叔父さんに頼まれて仕方なく出てるんだからッ! ほ、本来なら、あああアンタなんかが私をお姫様抱っこするなんてあり得ないんだからねッ!」


「しし知ってるわそんくらい! ゲームのルールだから仕方なくやるんだからなッ! お前をお姫様抱っこできて嬉しいとか欠片も思ってねーからな、マジでッ!」


 何やら言い合っている様子のカップル。こちらは海の家"アバンチュール"のお二人。


 あーだこーだと口悪く罵りあっていますが、何故でしょうか。満面の笑みで口汚く言い合っているその様子を見ていると、私からしたら二人とも嬉しくて仕方ないようにしか見えないんですが。


 まあ、どちらにも負けないように頑張りましょう。ここまで来たのなら、優勝は目の前です。


 少しして司会のアイリスさんに促されたので、私はオトハさんをお姫様抱っこしました。


「よっと」


『わわっ! ……重く、ない……?』


「? いえ、全然」


『そ、そっか……』


 普段のトレーニングの成果か、はたまたオトハさんが軽過ぎるからか。私はあっさりと彼女を抱っこすることができました。


 私がそう答えると、彼女はどこか嬉しそうに微笑んでいます。


「……ムムッ? 前よりも負荷が増えている……またこっそり筋トレしてたな?」


「あら? バレちゃったかしら?」


「ふんぬぬぬぬ……」


「だ、大丈夫? やっぱり最近の間食が……」


「う、うるせーなッ! ちょっと手間取っただけだって! オメーは何も気にせず、俺に抱っこされてりゃいーんだよッ!」


「……バカ」


 私たち以外のカップルも、お姫様抱っこの準備万端。それを見たアイリスさんが、ゲーム開始の宣言を高らかに上げました。


「さあて、準備オッケーね! それでは抱えた愛は誰にも負けないゲーム……スタートッ!!!」


 さあてゲームが始まりました。しかし、今までの予選とは違って、お姫様抱っこをして立っているだけという、結構地味な感じです。


「ではここで、一組ずつ女の子の方にインタビューしてみましょう! ズバリ、彼のどこが好きか?」


 と思っていたら、オーメンさんが一組ずつインタビューを開始しました。


 なるほど。地味な絵面はこうして司会者が盛り上げる形ですか。今までとは違い、女性の方も抱っこされているだけという手持ち無沙汰なところもありますし。


「そうね。やっぱり大胸筋かしら? この分厚い胸板……思わず叩きたくなっちゃうわ」


「聞いたか男性諸君! やっぱり筋肉は正義だぜッ!」


 オーメンさんがインタビューしている射的屋のカップルはまあ、そうなのでしょう。男性の方も満更でもないみたいな表情です。


 私ももう少し筋トレを増やして、それこそ"黒炎解放"時くらいのムキムキを目指すべきでしょうか。


「わ、私は別にこいつのことなんて……」


「あらそうなの? じゃあ、私がこの子と一緒に遊んでも……」


「ッ! 駄目ッ! 絶対駄目ッ! こ、こいつは私の……」


「お、オメーのもんになった覚えはねーよッ! だが、その……あ、ありがと、な……」


「キャー! 良い恋してるわねーッ!」


 そしてアイリスさんがインタビューしている海の家の方は、こんな感じです。と言うか、あれってインタビューなんでしょうか。


 ひたすらアイリスさんが、二人をイジって楽しんでいるようにしか見えないのですが。


「さあて。最年少ながら決勝まで勝ち残ったお二人さん。オトハちゃんはズバリ、彼のどこが好きなのかな?」


『えーっとですね、』


 遂にアイリスさんが持ってるマイクが私たちに回ってきましたか。しかし、オトハさんは何て答えるのでしょうか。


 恋人のフリではありますが、彼女に自分がどう思われているのか、という点についてはもの凄く気になります。


 まあ、何度か助けたりもしているので、そこそこカッコ良いところは見せているつもりなのですが。


『いつも無茶ばかりしていて、とても目が離せなくて……この人には、わたしがついていなきゃなぁって、そう思っています』


 さっきも言われた言葉をそのまま使われて、しかも手のかかる子どもみたいな言い方をされて、私、傷心。


 頼れる男どころか、手のかかる小さな男の子という扱い。身長は圧倒的に私の方が高いのに。私がオトハさんに認められて羽ばたける日は、果たして来るのでしょうか。


 あっ、私のなけなしのプライドにヒビが入った音が。


「おおっと、これは男を駄目にする女の子なのかぁ? 男としちゃあ情けない部分もあるんだろうが……」


「それだけ愛されているのね! 愛がなきゃ、さっさと見捨てられてるかもしれないわッ!」


 すいません司会者のお二人。私の耳とか心が痛いので、この話は止めましょう。と言うか止めてください。


 死体蹴りは良くない文化です。破壊しましょう。

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