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まさかの事態

「……それで魔法を使ってオークを消し炭にして、エルフの奴隷を連れてきたと、そういうことね」


「……はい」


 あの後。エルフの女の子を連れて魔王城に戻った私は、ジルさんにありのままの事情を説明しました。


 ここに来るまでにかなりの言い訳も考えていましたが、ジルさんの顔を見た瞬間に今までの恐怖が蘇り、結局全てを素直に話してしまったのです。


 ジルさんの隣には、落ち着かなさそうな様子のリィさんの姿もあります。部屋の中には私と彼女たち二人、そして私の隣には助けてきた女の子がいました。


 周りが魔族ばかりのせいか、彼女は私の服の裾を掴んでわなわなと震えています。それはそうでしょう。


 助けてくれた人についていったら、まさかの敵陣の本営まで連れてこられたのですから。道中で私はあなたにひどいことはしませんと何度も言いはしましたが、怖いものは怖いでしょう。


 あと、道中に気づいたことですが、このエルフの女の子はどうやら、喋ることができないみたいです。


 私が自己紹介した際に、彼女はお返事を口に出せない様子だったのでそう聞いてみたら、頷かれました。


 ただこちらの言葉は届いているので、表情や仕草、あとは簡単な単語なら口パクで何とか意思疎通はできています。


 何とか聞けたのが、彼女の名前は「オトハ」ということでした。それ以外の事情については、私もよく解っていません。


「~~~~っ」


 これからどうなるのだろうかと心配している様子が見て取れるオトハさんに向かって、私は微笑みました。あなたは大丈夫です、と。


「……三名も殺した私はどうなってもいいです。でも、この子は解放してあげてください。奴隷解放は条約があったはず……この子は元の国に帰るべきだと思います」


 道中でオトハさんをどうしようかと考えた結果がこれです。


 罪を犯した私とは違い、オトハさんは奴隷解放の条約下で何故かまだ残っていただけに過ぎません。


 条約を無視していたかもしれないあのオーク達は既に私が殺してしまいましたが、どんな都合があったにしろ、結局はこちらが悪いのです。


 それなら、話をしないといけないと思います。しっかりと事情を話せは、向こうサイドだって解ってくれるはずです。


「…………」


 ジルさんは未だに渋い顔のまま黙っています。やはり、三名も殺したことが不味かったのでしょうか。


 それとも、奴隷がまだ解放されていないという事実は、こちらにとって都合が悪いものなのでしょうか。


「……いきなりこんなことになってすみません。殺したのは私が悪いのです。でも、この子は何も悪くないはずです。だから……っ!」


 何とか謝罪を混ぜつつ、私は懸命にジルさんに訴えました。せめて、私自身がどうなろうと、助けたオトハさんだけでも何とか良い方向に、と。


「そう…………」


 やがてジルさんは、腕組しながら少し考え事をしたのかと思うと、手を真っすぐ私の方に伸ばし、手のひらを見せてきました。


 まるで、今から魔法を撃つかのよう……。


「"偽景色フェイクビュー"」


「っ!?」


 その言葉を聞いた直後、私の目の前の景色が絵具を混ぜ合わせた時のようにぐにゃりと歪み、上も下も右も左も解らなくなりました。


 幸い、すぐに視界は戻ってきましたが、頭がクラクラします。と言うか、さっきまで目の前にいたはずのジルさんの姿が見えない……。


「がっ……!?」


 直後、首元に鈍い痛みが走り、意識が薄れていくのが解ります。


「これでしばらくは起きないでしょう。リィ、二人を見張っておきなさい。私は彼らを呼んでくるわ。不味いことになる前に記憶処理を……」


「了解しました……ほ、本当に申し訳ありません。このエルフについては……」


「……今回の件は仕方ないわ。私も油断してたし。それよりもまさか……」


 私の意識は、ここで途切れました。

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