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戦いの果てに


「……何故オドを抜き取られたマサト君が生きているのか。何故まだ黒炎を使えるのか。何故彼がノルシュタインさんの力を持っているのか……確かに、疑問は山ほどありますが……」


 ベルゲンさんは自身の手に宿した刃をバフォメットに向けながら、そうおっしゃっています。


「……だが。そんなことは些事です。魔皇四帝バフォメットを、ここで討ち取れるのならね……くたばれ、薄汚い魔族が……」


「クッ!? "蒼炎剣サファイアソード"ッ!」


 そうしてベルゲンさんとバフォメットの白兵戦が始まりました。斬る魔法を宿した両手を振るうベルゲンさんに、バフォメットは青い炎の剣で対抗しましたが、


「無駄ですよ。"分割領域スプリット"」


 ベルゲンさんの"分割領域スプリット"という魔法に触れた瞬間。青い炎の剣は宙に霧散してしまいました。


「見たところ。マサト君から抜き取ったその黒炎は、まだ完全に扱えていない様子……いやぁ、残念ですなぁ。キチンと扱えるようになる前に、命を落とすことになるとは」


「チィッ!」


 舌を打っているバフォメットを、更に押していくベルゲンさん。その時ふと、ベルゲンさんが後ろ手で、何か合図のようなものを見せてきました。


 あれは、まさか……?


「ほらほらどうしましたか? マサト君にやられたお腹、痛そうですねぇ。お辛いでしょう。私で良ければ介錯して差し上げますが?」


「こんの……人間風情がァァァッ!」


 挑発に挑発を重ね、バフォメットを追い込んでいくベルゲンさん。凄い、あのバフォメットをこうも押し込んでいくなんて……そして、まだです。彼からの合図は、まだ……。


「消し炭にしてあげるわッ! "黒炎環(B.F.サークル)"ッ!」


「ッ!」


 そして、その時が来ました。黒炎を立ち上らせたバフォメットとの距離を取ったベルゲンさんから、すかさず合図が飛んできます。私は痛む腕を必死に動かして、宙に魔法陣を描きました。


「……戦いの最中に頭に血が上ったら、そこでおしまいですよ」


「な……ッ!?」


「……"黒炎弾(B.F.カノン)"ッ!」


 立ち上る黒炎で、一瞬バフォメットの視界が途切れる、この時が。その瞬間に、私は魔法陣を展開して、黒い炎の塊を放ちました。


 それは真っ直ぐとバフォメットに向かって飛んでいき、


「ぎゃぁぁぁああああああああああああああああああああああッ!!!」


 彼の顔に直撃しました。や、やったッ!


「……見事です、マサト君」


「は、はい……ッ!」


「…………」


 片手で顔を押さえて悶えているバフォメットは、絶叫した後は不気味なくらい黙っています。そんな彼に向かってトドメを刺そうと、ベルゲンさんが突進しましたが。


「……アタシを見くびるな……」


 静かにそう言ったバフォメットは、顔を押さえている指の間からギロリ、とベルゲンさんを睨みつけて、そして叫びました。


「アタシはバフォメットッ! 魔皇四帝が一人……いいえ。この黒炎で持って、次期魔王となる魔族よォッ! この程度でやれるなんて……思ってんじゃねェェェッ!!!」


「ッ!?」


 その剣幕に、たまらずベルゲンさんが足を止めます。次の瞬間。バフォメットが持つ黒炎のオド入りの魔水晶が、一際輝き出しました。


「矮小な人間風情めッ! 地獄の業火に抱かれて死になさいッ! "黒炎暴君(B.F.タイラント)"、"三連星トリオス"ゥゥゥッ!!!」


 直後。魔水晶から放たれたのは、まるで全てを焼き尽くさんとする勢い。先ほどの暴走とは比べ物にならないくらいの、黒炎の濁流でした。


「チィ……ッ! キイロ君、全軍に防御の陣形をッ! "分割領域スプリット"ッ!」


「そ、総員防御を張れッ! "守護壁ディフェンスウォール"ッ!」


「「「"守護壁ディフェンスウォール"ッ!」」」


「こ、こんなの、わたくしでは……」


「マギーさん、私の近くにッ!」


 迫りくる黒炎を前に怯えを見せた彼女を抱き抱え、私は死力を振り絞って空いた方の手で魔法陣を描きました。空気中のマナを入れて体内の黒炎の炎を宿し、必要な分まで燃え上がらせる。


 まだ、やれる。限界を超えてようが、ここでやらない訳には、いきませんッ!


「"黒炎壁(B.F.ウォール)"ッ!!!」


「きゃぁぁぁッ!!!」


 叫ぶ彼女を片手で抱きしめたまま

私は魔法陣を展開させました。迫り来る黒炎の濁流を、同じ黒炎の壁を作って堰き止めます。


「くっ……ォォォ……ッ!」


 濁流が壁に激突した瞬間。その勢いに飲み込まれそうになりましたが、私叫びました。全てを出し切っても、押し留めてみせるッ!


「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」


 そうして何もかもを振り絞った後。ふと、黒炎の濁流が姿を消しました。終わった、のですか……?


「は、ハァ、ハァ……お、覚えてなさいよベルゲン=モリブデン……そして、マサトッ!」


 終わった瞬間に一気に身体に反動がきて、意識が薄れていきます。


「アタシに傷を負わせ、あまつさえ顔まで台無しにしてくれた報いッ! その命でもって償わせてやるわッ! 絶対、絶対よッ! この屈辱は忘れてやるもんですかッ!!!」


「く、そ……あと、一歩で、バフォメットを……」


「だ、駄目ですよベルゲンさんッ! そ、そんな身体じゃ……」


「いつまで寝てるのよレイメイッ! さっさと悪魔の胃袋デビルモウを……」


「「は、はい……バフォメット、さ、ま……」」


「マサト、マサトッ!? しっかり、しっかりしてくださいましッ!!!」


『マサトッ!』


「マサト~ッ!」


「兄弟ッ!」


「兄さんッ!」


「マサト様ッ!」


 段々と意識が薄れていく中。皆さんの声がまるで反響しているかのように聞こえてきます。起きた直後にまた倒れるのは、申し訳ない感じが凄いですが……それでも、マギーさんを守れて、良かっ……た……。


 私の意識はそこで途切れました。

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