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あれしかないんじゃない?


「……どうするのさバカマサト?」


「わ、私に言われましても……」


『マギーさん、なんか意気込んでるんだけど……』


 現在私は、オトハさん、ウルさん、アイリスさん、オーメンさん、の五人で集まっています。


 その理由は、会議をするために。もちろん、議題は先ほどの件です、はい。


「……まあ、正直事故みたいな形になっちゃったのは認めるわ。でも……」


「なーんかマギーちゃん、本気っぽいんだよなぁ……」


 アイリスさんがため息をつき、オーメンさんが頭を掻いています。


 話によると、あの後オーメンさんによって意識を刈り取られた筈のマギーさんは、そのまま彼によって連行され、オトハさん達の元へ届けられました。


 丁度、症状もおさまった私が合流した時に起き上がった彼女は、いつも以上の声で、


「急ですが本日の夕刻に予定ができましたわ! イルマ、お夕飯はいりませんので、そのつもりで。そして申し訳ありませんが、わたくしは午後に別行動させていただきますわ! 少々、服を見繕いに行かなければなりませんので……」


 そう言って、みんなが呆然とする中、一人さっさとお昼ご飯を終えて、一人で行ってしまったのです。


 まあ午後は自由時間にしようかとなって全員で散開したのですが、ただならぬマギーさんの様子を感じたため、私たちは集まることにしました。


 現在私たちは、お土産屋さん等のテナントが入っている商店街の一角にあったカフェで、机を囲んでいます。


「……そもそも、マギーさんに全部話すのか、という点からご相談していたのですが……」


「……正直、あんまり話したくないんだよなぁ……」


 私の言葉に、オーメンさんが苦い顔で答えます。


「マサト君の境遇は、軽々しく明るみに出せるような内容じゃない。知っている人が多ければ多い程、露呈の危険性が高まる。ノルシュタインさんが方針を決めかねてる今は、なおさらだ」


「……でも、彼女は何か勘付いてるんでしょ?」


 オーメンさんの言葉に対して、アイリスさんが反論した。


「女の勘を甘く見ちゃ駄目よ。そうだと思ったら、心の中じゃもう決定事項になるんだから。下手な誤魔化しは、不義理になっちゃうわ」


『……マギーさんの勘は……』


「……洒落にならないんだよね~……」


 彼女の言葉に、オトハさんとウルさんが言葉を濁します。ええ、その気持ちはよく解ります。


 ここぞと言う時での過程をすっ飛ばして本質に迫るマギーさんの勘は、本物です。


 下手に誤魔化した所で、すぐに見抜かれてしまうでしょう。


「……もう少しだけ、待てないか?」


「……そうね。すぐには、答えが出せないわ」


 やがてオーメンさんとアイリスさんが、そう話されました。それを聞いた私達も、同意の意味を込めてうなづきます。


「……わかりました」


『……そう、だね。もう少し……』


「……まだ、大丈夫だって〜……」


 頭を抱えた私達が出した答えは、保留でした。先送り、とも言えます。


 幸いマギーさんは、今のところ急かしたりはしてきていません。ならば、まだ、猶予がある筈。


 その内に状況が変わって話せるようになったり、あるいはもっと良い考えが閃くかもしれませんから。


「……しかし、今日の夜、仮に行かないことにしたら、どうなるのでしょうか……?」


 私が恐る恐る声を上げます。黙ったままにするのは良いのですが、そうなると今晩の話に問題が発生します。


 現状、こちらの返事も聞かないままにやり取りが強制終了してしまっているため、マギーさんが一人で一方的に集合を言い残していった形となっております。


 約束をした訳でもないため、私がわざわざあの姿になって出向く必要はないような気がするのですが……。


『……そうするとマギーさん、ずっと待ってるかもしれないよ』


「……そうだね。マギーちゃんのあの様子じゃ」


 オトハさんとウルさんに、一番困る可能性を指摘されました。行く義理は確かにないかもしれませんが、かと言ってマギーさんを放置するのも、なかなかに気が引けます。


「……だからって、マサト君にあの姿のままうろつかれる訳にもいかないのよねぇ。停戦中とはいえ、国交はまだ完全に回復した訳じゃないんだし……」


 指でこめかみの辺りをかきながらそうおっしゃるアイリスさんに、オーメンさんが続けます。


「魔族がいるとなったら、最悪、俺らの軍に通報が行くからな……」


「……あれ。これ、どうしたらいいんですか?」


 話を聞く限りでは、もうこれどうしたら良いのか解らないんですが。マギーさんを放置プレイする訳にもいかず、かと言って私があの姿でノコノコ歩く訳にもいかない。


 どうしようもないのでは?


「……まあそ~すると、手はあれしかないんじゃない?」

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