表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/237

……バカ


 ……寝ちゃったかな?


 うん、寝てるね。ほっぺたツンツンしても起きない起きない。


 全く。言っても無茶するなんて、ホントに男の子ってバカなんだな~。どうせ夜も寝ないで、一人で探しに行ってたとかそんなんでしょ?


 寝顔は可愛いのになぁ。こんな無防備な顔しちゃってさ。


 ……うん、ちゃんと寝てくれてる。良かったぁ。ボクも歌った甲斐があったよ。


 だって、オトちゃんの膝枕で寝てくれるのに、ボクの子守唄じゃ寝られないなんて悔しいもんね。


 前にマサトがオトちゃんの膝の上でグースカ寝てた時さ、ボク、羨ましかったんだよ?


 マサトはボクの前では見せてくれない、全ての気を許したような顔してて。オトちゃんもそれを優しく見守ってて。まるで二人だけの世界ができてるみたいで……すごく、羨ましかった。


 だから、今日はボクの番だよ、オトちゃん。いなくなっちゃった時を見計らうなんてズルい気もするけど、オトちゃんはボクがマサトを知る前から二人で一緒にいる。


 そのどうしようもない時間分、ボクは不利なんだ。だからこういう時でもないと、その差は埋められない。


 無理やり連れていかれたオトちゃんは、もちろん可愛そうだと思うよ。助けて、また一緒に遊んだり、マサトを取り合ったりしたいと思う。


 でも、ボクってズルい性格だからさ。少しくらい、抜け駆けさせてね。後で文句なら聞くからさ。


 そうは言ってもマサト、ずっとオトちゃんオトちゃんって、全然ボクの事なんか見てくれてないんだけどね……悔しいなぁ。


 だいたい、夜に女の子が男の子の部屋を訪ねてくるなんて、普通は自分に気があるんじゃないかって、もっと意識してくれてもいいと思うんだ。


 それこそ一緒にベッドで寝転がってるんだよ? 根がスケベな君なら、飛び上がって喜ぶものじゃないのかい?


 それなのにマサトはいつも通りで、口を開けばオトちゃんの事ばっかり……。


 ……ボクじゃまだ、足りないのかな。結構、頑張ってるつもりなんだけど。


「…………zzz」


「…………」


 そんなボクは、寝息を立てている無防備な君の唇に目が行く。あそこに触れたのは、たった一回。ボクの初めてを上げた、あの唇。


「……少し、だけ」


 その唇を、人差し指でなぞる。君は少しピクッと反応した。


 起きちゃったかな、とも思ったけどそんなことはなくて。安心したボクはまた、君の唇をなぞった。


「……少し、だけだから……」


 ふにふにと柔らかいそれに、いつの間にかボクは顔を近づけていく。まるで、吸い込まれるみたいに。


「…………バカ」


 それが誰に向けた言葉だったのかは、ボクにも解らなかった。



 一方、その頃シマオは自室のベッドの上で、


「や、やめて……親父……バフォさん…………め、目の前で始められると息子的にトラウマ……」


 悪夢にうなされていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ