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魔弾の錬金術師は復讐に生きる ~亡き最愛の妻は吸血鬼だった~  作者: 結城 からく


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第95話 錬金術師は真実を告げられる

(テッド。そう、テッドだ。思い出した)


 私は自分で考えながら気付く。

 綻びかけた記憶から名前が浮かび上がってきたのだ。

 若干ながら理性が強まってきているらしい。


 テッドは暗殺者だ。

 この身の一部を譲渡することを条件に商会を裏切り、私の復讐に加担した。

 細かいことは憶えていないが、戦いのどこかでいなくなったはずだ。

 私の移動の巻き添えになったのではないかと思ったが、まだ生きていた。


(そういえば、彼に渡す肉体が残っていないな)


 私は己を見下ろす。

 辛うじて人型であるものの、漆黒で塗り潰されていた。

 立体感がなく、物質として成立していない。


 一応、内部には微量ながら骨格や血肉が残っているが、テッドが満足するだけの量なのか疑問である。

 再生能力まで変質してしまったのか、肉体が復元する兆しはない。

 私は闇で構成された身体のままだった。

 これが通常形態として固定されているのだろう。


「ふうむ……」


 テッドは動きを止めた私を観察する。

 仮面の奥に覗く双眸は相変わらず冷静で、重傷を負いながらもそれを感じさせない雰囲気だった。

 いつでも私の攻撃から逃れられる間合いにいる。


 テッドは伯爵を近くの椅子に座らせると、気楽な態度で肩をすくめてみせた。


「まったく、ようやく正気を取り戻したか。奇跡に近いな」


『なぜ、伯爵を、連れてきた』


「あんたに話したいことがあるそうだ。別に手助けする義理はないが、このまま終わると目覚めが悪いんでね」


 そう言ってテッドが伯爵の肩を揺らした。


「おい、話せるか?」


「な、ぐ……っ」


「まだ難しいか。仕方ねぇな。生きているのが不思議なくらいだ」


 伯爵は満身創痍だった。

 全身が血みどろで、片腕に至っては千切れかけている。

 座っている姿勢から絶え間なく出血していた。


 記憶が曖昧だが、私との戦いでそうなったのだろう。

 うっすらと目を開けているも、浅い呼吸はいつ止まってもおかしくなさそうだ。


 伯爵の視線は、私ではなく少女を見つめていた。

 こちらにはまるで関心がないようだった。


(執念の正体は、彼女だったのか)


 私はなんとなく事情を察する。

 それと同時に、テッドが少女を指差しながら発言した。


「そこのお嬢さんは、伯爵の娘だ。難病のせいで余命半年を切っている」


『…………』


 私は沈黙して意識を集中させる。


 少女の気配に濃い陰りが差している。

 生命の力が弱く、今にも途切れそうだった。

 それを紙一重で凌いでいる状態である。

 皮肉なことに、この場の誰よりも死に近かった。


 それが少女――伯爵の娘の実情だった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ライリー以外で、どうにかまだ致命傷ではなさそうなのはテッドだけ。 (伯爵に肩を貸せるぐらいなので) 伯爵は死にかけ、伯爵の娘は余命僅か。 娘の方だけでも助ける事はできるのか? [一言…
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