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魔弾の錬金術師は復讐に生きる ~亡き最愛の妻は吸血鬼だった~  作者: 結城 からく


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第94話 錬金術師は取り返す

 私は少女を観察する。

 ワンピースを着たその姿は生気が薄い。

 顔色が悪く、頬がこけていた。

 健康状態があまり良くないようだ。


 視界がだんだんと霞む。

 さらに焦点がずれていく。

 きりきりと何かが張り詰めている。

 見える範囲が狭くなる。


(この状態でも理性の維持が危ういのか)


 そういえばこの部屋に来るまでの記憶が飛んでいる、気がする。

 辛うじて残る人間性も、既に崩れる寸前らしい。

 遺骨を求める執念が私を引き留めているのだろう。


(そうだ、遺骨だ。他に構っている暇はない)


 少女なんて興味ない。



 遺骨だ。遺骨遺骨遺骨。



 ようやく 取り戻す。取り戻せる。のだ。



 あ  び   ようやく巡ってきた機会で



   そろ ま み、なななな




 私は正気だ。怪物だが人間性を残している。



 そうだろう。私よ。しっかりしろ。




 たった数歩。




 右足 左足右足 左左左左



 腕が千切れた。拾う。繋げる。繋がった。










 ――繋がった手で、遺骨入りの小瓶を、掴んだ。






 よし。





 よしよし。取り戻したぞやったこれでいい。




「それが、あなたの目的なのですか?」



 耳障りな声。


 せっかくの瞬間を。邪魔するとは。





 部屋の奥に、白髪の少女がいた。


 いつからそこにいたのだろう。




 ベッドに座る少女は不健康そうだ。


 不自然に痩せ細っている。


 病か何かを患っているのかもしれない。




 よく見ると魔力の質が、誰かに似ている。



 果たして、誰だったか。


 知っている。そこまで親しくない人物だ。


 いつだったか。  たぶん最近だろう。





 しばらく考えた私は気付く。

 この少女は、伯爵の娘だ。


 明らかに弱っているので、この館で療養生活を送っているのだろう。



 遺骨を握る私は、少女の前に歩む。



 そして尋ねた。




『私の姿は、どう見える』


「……魔物?」


『は、はははは……はは、そうか』



 不安げな少女の答えを聞いて、私は笑ってしまった。


 声が歪んでいく。


 高くなって低くなって。


 とても人間の笑い声ではなかった。






 私は片手を伸ばす。


 闇が蠢いて三本の鉤爪を作り出した。


『怪物は、怪物らしく、振る舞うべきだな。私は怪物だから怪物なのだ』


 鉤爪を振るおうとしたその時、背後に気配が現れた。


「ちょいと待ってくれないか。人間の言葉が分かるのなら、だが」



 私は手を止めて振り返る。


 そこに立つのは、伯爵に肩を貸すテッドだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] すんでのところで、精神まで完全に人間性を捨て去らずに踏みとどまったライリー。 ……病身の少女と伯爵の抱える事情もだいぶ重苦しいものである様だ。 [一言] 続きを気にしつつ待ちます。
[良い点] 伯爵まだ生きていたのか、凄い生命力だな。
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