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魔弾の錬金術師は復讐に生きる ~亡き最愛の妻は吸血鬼だった~  作者: 結城 からく


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第69話 錬金術師は行き先を求める

 私は背中の羽を使って飛行する。

 街の上空を滑るように移動していた。


 既に羽の動かし方は習得済みだ。

 羽に込められた魔力が推進力を生み出しているようで、放っておいても加速する。

 たとえ向かい風が来ようと関係なかった。

 おかげで大した労力をかけずに飛ぶことができている。


 右手はレドナリア商会の店長を掴んでいた。

 先ほどまで暴れていたが、今は大人しい。

 どうやら気を失っているようだ。


 少し重たいものの、飛行の負担が増えるようなことはなかった。

 魔力消費を気にしなければ、さらに多人数を運ぶこともできそうだった。


 私は眼下の街並みに視線を落とす。

 暗殺者の男は、屋根から屋根へと跳び移りながら追走していた。

 私が速度を上げても平気で付いてくる。

 地形的に無理があろうと、驚異的な身体能力で突破していた。


 それでもまだ余裕が見え隠れしている。

 むしろ私のために速さを調節する雰囲気まであった。

 彼の心配をする必要はないだろう。


 そのうち公都のスラム街に到達した。

 高度を落とした私は、目に付いた廃屋に着地して埃まみれの部屋に入る。

 そこで店長を放り投げた。


「う、ごっ!?」


 床に頭を打った店長は呻きながら目を覚ます。

 一方、男は部屋の外を眺めながら頷いていた。


「ここなら大丈夫そうだな。追っ手も来ないだろう」


 暫し呆然としていた店長が我に返る。

 すると顔を真っ赤にして男に掴みかかった。


「テッド・ラヴァーナ……ッ! 貴様、何をしているのか分かっているのか!」


「そんなに怒るなって。強がっても意味はないぜ。あんたの命は俺達が握っている」


 暗殺者の男――テッドは面倒臭そうに応じる。

 襟首を掴まれても涼しい顔だった。

 テッドを揺らす店長は、必死の形相で詰め寄っている。


「誰に雇われた。ここで馬鹿な真似を止めるならその倍額……いや三倍を払うぞ!」


「おいおい、冗談言うなって。どうせ逃がす気なんてないんだろう? それに、あんたの金払いの悪さにはうんざりしている」


「それは貴様の態度がなっていないからで――」


 反論する店長の言葉が途中で止まった。

 襟首を掴む手から数本の指が落下する。

 綺麗な断面から血が噴き出した。


 店長は驚いた顔で後ずさる。

 その腹に強烈な膝蹴りが炸裂し、くぐもった破裂音が室内に響き渡った。


「う、ごああ、あぁっ……」


「つまらんことを言うなよ。手が勝手に動いちまった。まあ死なないから問題ねぇな」


 軽薄に述べるテッドは、血の付いたナイフを振りながら呟く。

 仮面の奥の双眸は、恐ろしいほどに冷たかった。

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