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魔弾の錬金術師は復讐に生きる ~亡き最愛の妻は吸血鬼だった~  作者: 結城 からく


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第53話 錬金術師は標的を待つ

 ほどなくして私は店長の家に到着した。

 街中の中央部にある立派な屋敷だ。


 私は身体能力を活かして潜入すると、建物の外から気配を探る。

 先ほどの商店と同じ要領で調べるも店長は見つけられなかった。

 使用人の愚痴を聞くに、どうやらまだ帰宅していないらしい。

 夜の街で遊んでいるそうだ。


(こうなれば待つしかないか)


 そう考えた私は建物の屋根に張り付き、身動きせずに息を殺す。

 店長の現在地を探すにしても手がかりがない。

 使用人も具体的な場所は分かっていないようだった。


 下手に捜索へ向かうと、入れ違いになる可能性もある。

 ここで待っていればいずれ顔を出すはずだろう。


 無心になって待つこと暫し。

 やがて夜明けが訪れた。


 日光が目にしみて、肌も少し痛む。

 我慢できないほどではないものの、望んで受けたいものでもなかった。

 私はローブを引っ張って地肌がでないように工夫する。


(日陰になるような場所を選べばよかったな)


 少し後悔するも、その場からは動かない。

 辺りは既に明るくなってきた。

 下手な行動をすると存在が露呈する恐れがある。


 日光も致命的ではないので、私が耐えればいいだけだ。

 吸血衝動に比べれば楽だろう。


(随分と不便になったものだな)


 一連の変貌は、まず間違いなく吸血鬼の特性だ。

 衝動に抗い続けた結果、通常個体の範疇を超えたのである。

 極限まで高まった渇きが肉体に変容をもたらした。

 衝動を耐えるたびに何らかの変化があったが、ついに新たな段階に踏み出したらしい。


 吸血鬼の衝動に抗うほどに、怪物の側面が強まっていく。

 普通はどこかで我慢できなくなって吸血してしまい、渇きを癒して理性を取り戻すそうだ。

 それによって能力も落ち着くのである。


 後天的な吸血鬼である私は半端者だった。

 なぜか衝動を耐え続けることができている。

 血を吸わずにここまで耐えられたからこそ、何らかの一線を越えてしまった。


(人間でいようとするほどに、怪物へと近付くとは……)


 静かに嘆いていると、屋敷に近付く人影に気付く。


 それは小太りの男だった。

 宝石付きの指輪をはめており、服も上等だった。

 かなり高価なのが一目で分かるほどである。


 そばには屈強な肉体の男が三人いた。

 おそらくは護衛だろう。


(ようやく帰って来たか)


 指輪の男こそが公都レドナリア商会の店長だった。

 あの店舗の責任者であり、遺骨奪還を命じた張本人だ。

 諸悪の根源であるかはまだ分からないが、これからそれを判断する。


(まずはどこかへ攫って尋問するか……)


 私は動き出そうとする。

 その時、背後に鋭い殺気を感じた。


 私は反射的に散弾銃を向けようとするも、銃口が切断された。

 ナイフを振るって接近してくるのは、黒ずくめの人間だった。

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