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魔弾の錬金術師は復讐に生きる ~亡き最愛の妻は吸血鬼だった~  作者: 結城 からく


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第39話 錬金術師は公都へと発つ

 窓から朝日が差し込み、私は目を細める。

 夜明けだ。

 一つ瞬きをして作業の手を止める


 机の上には魔弾が並べられていた。

 精霊銃の専用弾である。

 種類は燃やす弾と、貫通力に優れた弾に絞った。

 戦闘面はこれで事足りるだろう。


 あとは私の技量次第だ。

 吸血鬼の特性が強まったことで、弾丸を見切れるようになったものの、常にあの状態になるか分からない。

 頼り切りになるのは不安だった。

 万が一という場面で攻め切れない可能性もある。

 こまめに練習して腕を上げておきたい。


 これからレドナリア商会を訪問する予定だった。

 そこで戦闘が発生するとなると、数的な不利に陥る。

 さすがに爪だけで皆殺しにするのは困難なので、どのみち銃の扱いは上手くなっておくべきだった。


 私は背嚢に荷物を詰め込んでいく。

 血で汚れた外套を身に纏った。

 部屋を出る間際、手鏡で自分の顔を確かめる。


 目は薄い赤色で元の茶色がたまに覗く。

 いや、光の加減でそう見えるだけかもしれない。

 誰に尋ねても赤色という答えが返ってくるだろう。


 肌は不健康な青白さだ。

 死体ほどではないが、心配されてもおかしくないくらいである。


 口を開けて牙の有無も確認する。

 あまり伸びていない。

 仮に見られたとしても、ここから吸血鬼は連想されないはずだ。

 尖った歯ということで誤魔化せそうだった。


 爪も人間の頃とほぼ同じ長さであった。

 ふとした瞬間にまた伸びるかもしれないため、指先の違和感には気を付けておこうと思う。


(だんだんと完全な吸血鬼に近付いている、のか?)


 私はその事実を冷静に受け止める。

 吸血鬼衝動を耐えることで、種族的な特性が強まることは知っていた。

 だから大した驚きではない。

 むしろまだ踏み切っていない状態に、我ながら感心しているくらいである。


 心の奥底で歯止めがかかっているのか。

 そもそも、吸血鬼への変異にはある程度の時間経過を要するのか。


 さすがにそこまでは分からない。

 ただ確かなのは、私が着実に吸血鬼へと変貌しつつあることである。


 それに対する恐怖はなかった。

 当初は様々な感情を抱いたが、現在は淡々と認識できている。


 意識は目的だけを見据えており、大きく揺らぐことはない。

 この精神的な変容も、吸血鬼の特性なのだろうか。

 或いは確固たる復讐心がそうさせているのかもしれない。


 部屋を出た私は、宿での手続きを済ませる。

 元より今日には出発するつもりだったので、追加の支払いもなかった。

 預けていた馬を連れて宿を後にする。

 そのまま街の門に向かおうとしたところ、前方で声がした。


「おっ、あんたは……」


 意外そうに呟いたのは武器屋の店主だった。

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