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魔弾の錬金術師は復讐に生きる ~亡き最愛の妻は吸血鬼だった~  作者: 結城 からく


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第31話 錬金術師は夕食を満喫する

 そのうち店員が定食と酒を運んできた。

 私の席に料理が並べられる。


「お待たせしました。ごゆっくりどうぞー」


 焼き魚に肉と野菜の炒め物、それとスープだ。

 後で冷やした果実も貰えるらしい。

 切り分けられたそれを食後に味わうのが良いそうだ。


 私はさっそく食事を始める。

 これが存外に美味かった。

 素朴な味わいで、どこか安心する料理ばかりだ。


 何か際立った特徴があるわけではないものの、ついつい食べ進めてしまう魅力がある。

 これだけ繁盛しているのも納得の味だった。


 すぐに地酒も到着した。

 瓶入りで小さなグラスも一緒に提供される。

 ここに注ぎながらゆっくりと飲むものとのことだ。


 最初から大きめのジョッキ等で飲めばいいのではないかと思うが、勧められた通りの楽しむのが一番だろう。

 私は酒に詳しくない。

 せっかく注文したのだから、素直に従うべきである。


 試しに地酒をグラスに注いでみると、すぐに豊潤な香りが昇ってきた。

 アルコールの強い香りだ。


 これは一口で酔ってしまうかもしれない。

 とても飲み干せそうにない気がした。

 最悪、誰か別の客に譲ってしまうことになるか。


 私は焼き魚の欠片を口にした後、そっと地酒を飲んでみる。

 しっかりと味わってから、静かに息を吐いた。

 そして口元を緩める。


「――美味い」


 久々に酒を飲んだが、まさかこんなにも良いものだとは。

 どちらかと言うと苦手な部類だったというのに、認識を改めた方が良さそうだ。

 料理との相性も抜群に良い。

 客達が揃って注文している理由が分かった。


 それから私は美味い定食と地酒を無言で楽しむ。

 周囲の喧騒すら心地よい音となった。

 働いている店員も元気で、こちらまで活気を貰っている気がする。

 彼女目当てで来ている客も多いのではないか。

 鼻の下を伸ばした常連客らしき者達の姿を見て、私は苦笑した。


 そうして食事も終盤に差し掛かった頃、ふと気づく。


(……酔いそうにないな)


 瓶に入った地酒はほとんど残っていなかった。

 それだけの量を飲んだのに、体調に一切の変化がない。

 その予兆も感じられなかった。


 原因は一つしか思い当たらない。

 吸血鬼となったことで体質が変化したようだった。

 ずっと冷静なままというのは物寂しい気がするものの、酒を味わえるようになったのは良いことかもしれない。

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