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魔弾の錬金術師は復讐に生きる ~亡き最愛の妻は吸血鬼だった~  作者: 結城 からく


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第22話 錬金術師は夜闇を疾る

 小休憩を経て、戦闘による負傷はほとんど治った。

 欠損部分は押し当てることで繋げた。

 細かい傷も再生して消えている。

 衣服は血だらけだが、着心地の悪さを除けば特に問題はない。


 私は盗賊達の遺品を奪い取る。

 それらを背嚢に詰め込み、馬での移動を開始した。

 地図を頼りに国境を目指す。


 この馬は盗賊の一人が乗っていたものだ。

 幸運にも無傷で生き残り、少し離れた所を歩いていたのである。

 餌をやってみたところ懐いたので、こうして移動手段に活用させてもらっている。


 馬は私を乗せても落ち着いていた。

 先ほどからずっと従順に駆けており、きっと賢い馬なのだろう。


 高速で流れゆく景色。

 月明かりのみに照らされる街道は薄暗い。

 馬はしっかりと踏み締めて疾走する。


 その背で揺られる私は戦利品を確かめる。

 散弾銃や拳銃をいくつか入手できた。

 予備弾もそれなりの量を確保している。


 魔弾は一つもなかった。

 さすがにそこまで高価なものは使っていなかったようだ。


 これに関しては別に構わない。

 現金も手に入ったので、どこかの街で材料を確保できれば、新たな魔弾を製造できる。

 調合用の機材も持参している。


 今回の戦いで燃える魔弾は使い切ってしまった。

 魔弾は吸血鬼の能力を除くと、私のほぼ唯一の強みである。

 どこかで補充したいものだ。


 私は現在地と地図を照らし合わせながら進む。

 しばらくすると右方に小さな村が見えてきた。

 明かりはほとんど消えており、ひっそりとした外観だけが確認できる。


 夜も更けた時刻だ。

 まだ朝は遠く、村人達も寝静まっている頃だろう。

 起きている者といえば、酒を楽しむ者くらいではないか。


 私は村に立ち寄るか考える。

 少しの逡巡の末、すぐそばを素通りした。


 この深夜に訪問するのは不審がられる可能性が高い。

 私は全身が血みどろで大量の銃を所持している。

 姿を見せれば余計な問題になりかねなかった。

 馬の体力にもまだ余裕があるので、このまま移動した方がいい。


(吸血鬼だと分かれば、大騒ぎだろうな……)


 一般的に忌避される種族だ。

 実際、邪悪な本性を宿している。


 彼らは人間を見下して、餌としか考えていない。

 だから正体が明るみになった吸血鬼はしばしば討伐対象となる。

 懸賞金まで設定されることも珍しくなかった。


 今の私は紛れもなく吸血鬼である。

 どれだけ傷を負っても死なず、魔物に匹敵するほどの怪力を有する。

 思考も不気味なほどに揺れ動かない。

 恐ろしい衝動にも襲われていた。


 いつ"そちら側"へ転がり落ちるか分かったものではなかった。


(サラもこの感覚に抗っていたのだろうか)


 私は亡き妻を改めて尊敬する。

 人間だった頃の私では到底理解できなかったが、こうして同じ吸血鬼となったことで初めて知った。

 このような状況で共感できるとは皮肉な話だろう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! [気になる点] >今の私は紛れもなく吸血鬼である。 (中略) >恐ろしい衝動にも襲われていた。 >いつ"そちら側"へ転がり落ちるか分かったものではなかった。 …
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